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臓器密売組織をぶっ潰せ!①

 イドラさん達が六課に合流してから数日が過ぎた。

 

 臓器密売組織のアジトを探している間、イドラさんと師匠には、六課の仮眠室で過ごしてもらっている。

 

 害がない事がわかっていても、流石にこの二人を外に出す訳にはいかないというのが、六課の長である美也子さんの考えだ。


 仮眠室と言っても四畳くらいの個室でフカフカベッドが付いており、また、この事務室にはなぜか広々とした浴槽付きのお風呂があるため、少し退屈ではあると思うが生活するのに大して不便ではないはずだ。


 食事については、鈴さんがまだ不在のため出前を取ったり外に買い出しに行ったりしていたのだが、事務室にあるキッチンを知ったイドラさんが食材さえ揃えてくれれば料理をすると言っていたので試しに頼まれた食材を渡したら、鈴さん顔負けの旨いご飯を作ってくれた。それ以降、炊事、掃除などイドラさんが鈴さんの代わりをしてくれている。


 だが、ここでやる事が見つかったイドラさんに比べて、何もする事がない師匠はフラストレーションが溜まっているのが分るくらいイライラしていたので、見るに見兼ねた俺が久々に稽古をつけてくれと訓練場に連れて行ったら滅茶滅茶喜んでくれたのはいいのだが、それ以降、俺の顔を見るたびに訓練場に行くぞと首根っこをつかまえられる始末だ。


 最初は稽古をつけて何て言わなければ良かったと後悔していたのだが、何度か訓練を重ねる内に純粋な闘いに於いて、まだ俺は師匠には届いていないと改めて実感した。


 俺の戦い方は、技術もクソもないただ異世界人特典の超人的な身体能力をフルに活用した戦い方で、師匠は身体能力+技術+経験という俺に足りないものを沢山持っていて非常に勉強になった。


 向こうの世界で師匠に稽古つけてもらっていた時は、まだ身体が追いついておらず、ボコボコにされるだけで全然師匠の動きについていけてなかったのだが、今となっては師匠の技術を吸収してやるという気概を持てるようになれるほど師匠の動きがよく見える。

 

 師匠に稽古をつけてもらって良かったと思う。

 そんなこんなんで二人は上手くやっている。


 良かった良かったと一人で染々していると――。 


「さっく~~~~~」

 

 俺の背中に柔らかい衝撃が走り、直ぐに俺の首に細い二本の腕が絡む。

 顔を見なくても分かる、俺にこんな事をするのは紗奈しかいない。


 あの日、俺の背におぶされてから紗奈はよくこうして俺の背中に抱き付いてくる様になった。訳を聞くと「だって、サクの背中、広くて、温かくて、スゴく気持ちいいんだもん……だめ?」と返され、俺がだめと言うはずもなく、紗奈の好きな様にさせている。まぁ、俺としても好きな子にくっつかれて満更でもないけどね! 


「ちぃっ!」


 前方から美也子さんが鬼の形相で盛大に舌打ちをしているのだが……気にしない事にしよう。


「サク~デートに行きたいです~。折角の夏休みなのに、予備校ばかりの毎日なんて辛すぎます」と紗奈は背後から俺の顔を覗き込みながら俺に甘える。その距離僅か数センチ……俺の心臓が爆発するにはほど良い距離だ。


 確かにこっちに戻ってきてから紗奈とは事務室で毎日の様に会っているが、出掛けたのは俺んち恒例のBBQ大会に行っただけである。


「ほ、ほら、今は臓器密売組織をなんとかするのが先だから、それが終わったら紗奈の行きたいところならどこでもいくから」

「ぶぅ~、絶対ですよ? アタシ、毎日毎日、亜希子さんのノロケ話の相手でまいっているんですからね!」


 田宮達は、昼夜関係無しに毎日デート三昧らしい。それでも、まだ付き合ってもいないだとか……まぁ、田宮の貴重な夏休みを奪った俺は何も言えないのだが、紗奈は毎日の様に田宮とどこに行って、何を見て、何を食べて――ってな甘々な会話に付き合わされているのだが、自分に何も返せる話がないため不貞腐れているのだ。


 本当に申し訳なく思うが、今は、臓器密売組織を対処する事が最優先だ。こうしている間にも奴らのせいで命を落としている犠牲者がいるかもしれないのだがら。もう何回同じ事を言ったか数えきれないが、俺はそう言って紗奈を宥める。


「みいいいいつけたああああああああッ!」

「うぉッ!?」


 急な大声に驚いてしまい、情けない声を出してしまった。

 大声の主は東城さんだ。全員の視線が一斉に東条さんに向く。


「くっくっく、お前らは私から逃れられないんだよおおおお」


 東城さん……睡眠時間が足りていないのか変なテンションになっていらっしゃる……。

 それよりも……。


「見つかったんですか? 東城さん」

「おうよ!」


 おうよ!って……どちら様?


「流石【ゴースト】様だな、恵美!」

「「あッ……」」

「しま、った」


 性懲りもなく口からまた禁句が洩れ、みんなから憐みの視線を向けられる真紀。

 クマが出来ている東城さんの表情に妙な迫力が灯る。


「マキグソ……死ねばいいのに」

「おま、マキグソってひどすぎだろ!」

「うっさい、臭いからだまれ」

「ひどい……」

 

 ふとまきからかなりの降格だな……。俺は、落ち込んでいる真紀にドンマイと心の中でつぶやき、イドラさんと一緒に東城さんのモニターへと向かう。


「これ、これ」と東城さんが示した場所には、複数の静止画があり、その全てに映り込んでいたのだ、背中にナイフとフォークを手にしたピエロのプリントがされている黒いパーカーを着ている者達が。


「イドラさん、どうで――」


 イドラさんに、確認してもらおうしたのだが言葉を飲み込む。一目瞭然だった。

 モニターに映っている者達を見て、身体を震わせながらその翡翠色の両眼には涙が滲んでいた。


「うぅ……ッ、間違い、あ、ありません」


 そう言って、イドラさんはその場で崩れ、静かに涙を流す。


「分かりました、東城さんこいつらのアジト、分かるんですよね?」

「うん、任せて」

「では、位置情報をお願いします」

「おっけー!」

「課長!」

「あぁ、分かってる。海、車を頼む」

「分かった。メンバーは?」

「咲太とイドラさん、後は……紗奈たんで行ってもらう」

「分かった、車の準備しておくから駐車場で」と言って海さんは事務室を足早に出て行く。

「いいんですか? アタシも行って」


 珍しい、美也子さんが紗奈を俺と一緒に行動させるとは……いや、一課の連中の時も俺と紗奈二人に行かせてたな……。


「正直、咲太一人でも十分だとは思うが、前回の紗奈たんの件もある。咲太と紗奈たんなら問題ないと考えた」

「分かりました、サクと一緒に行ってきます!」

「イドラさんもだ!」

「てへ、そうでした!」

「ったく……。いいか、咲太。遊びに行くんじゃないんだからな? 気を引き締めていけよ!」

「はい! 分かりました!」


 課長に労いに言葉をもらい、俺と紗奈とイドラさんは海さんの待っている駐車場へと向かった。


 その際に、留守番を言い渡され、自分も付いていくと駄々をこねていた師匠を宥めるのに結構な時間を浪費したのは言うまでもない。

いつも読んでいただき、ありがとうございます。

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