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【本編完結済】帰ってきた元奴隷の男  作者: いろじすた
第2章 人助けする男
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店長を守れ!⑥

 ――草木も眠る丑三つ時。


 人の気配の無い公園の水飲み場でよっぽど喉が渇いていたのか、男は貪る様に水を喉に流し込む。


「はぁ、はぁ、はぁ……。ちくしょッ!」


 全男は未だに肩で息をしながら悪態をついていた。


「くそっ! 今日こそ明美ちゃんを俺のモノに出来たのにッ!!」


 男の名前は前野正太。市内の体育大学に通っている。


 そう。この男こそが咲太のバイト先の店長である中西明美に交際を申し込みむが断られ、抑えきれない感情をどうする事も出来ずストーカーと化してしまった哀れな男だ。


 前野は今日こそは明美と結ばれると確信していた。


 全く根拠のない思い込みだが本人は本気で信じていたのだ。


「何だよあの男はッ!!」


 前野の脳裏には逃げる際に見た、明美が知らない男にもたれている様子が脳裏に焼き付けられていた。

 

「ちくしょおおおッ、俺を裏切りやがって!」


 前野の頭の中では明美が男といちゃついている様に脳内変換されているらしい。

 また、前述の通り本人は明美と付き合えると思い込んでいるため、他の男の影が許せないのだ。

 勘違いも甚だしいとはこう言う事だろう。


「絶対許さねぇええ!」


 前野の心の底からは明美と咲太に対する憎悪が止め処なく溢れ出していた。


 ――翌日


 マンションを後にして仕事場に向かう咲太達を忌々しそうな顔で見ている男がいた。

 少し離れた曲がり角に身を潜めながら。


「何で二人で出てくるんだよ……。それに何なんだあの荷物? あいつら旅行にでも行くのか? 二人で? そんなの絶対ダメだ! ダメだ! ダメだ! ダメだ! ダメだ! ダメだああッ!」


 男の自分勝手な想像により、二人に対する憎悪が更に増す。


「絶対に阻止してやる」


 そう言って前野正太はひっそりとニ人の後をつけるのだった。


★☆★☆★


「ここは……?」


 前野は咲太達が入って行ったビルを見る。


 そこは嘗て自分がアルバイトとしていた居酒屋が入っているビルであり、その居酒屋の店長である明美に玉砕された場所でもある。


 二人がその場所に入って行った事で明美と一緒にいた男が自分の知らない居酒屋の関係者だと勝手に推測を立てる。


 旅行にでも行くのかと思っていた前野は安堵するが、明美と一緒にいるのが自分ではなく他の男という事実が許せないのは変わらない。


 前野の心の中の一時の安堵はすぐさま憎悪に変わっていった。


 前野は明美の仕事場である居酒屋が入っている、雑居ビルの入口が良く見える場所で明美が出てくるのを待っていた。


 そして、いよいよ待ち人が現れるのだか……。


「出てきたな……ちっ! またあの男と一緒かよ!」


 前野は忌々しそうに「タンッ!」と壁を殴る。


「うん? 方向が……アイツらどこに行く気だ?」


 明美のマンションの正反対に歩き出す二人を見て前野は焦りを感じる。

 そして、周辺を十分注意し適度な距離を取りながら二人の後をついていく。

 周辺を十分注意している所が、咲太とは違って彼が尾行になれている故だろう。


 そして、二人が辿り着いた場所を見てがく然とする。


「家……だと……? 何で……? お前の家はそこじゃないだ、ろ……」


 男女が夜中に二人で……前野の頭の中は勝手な想像で埋め尽くされ頭が破裂しそうになると同時に、胃の中の物をその場で吐き出した。


 キーッ!

 自転車のブレーキ音が聞こえると同時に前野に近づく人の影があるが、前野は吐いているため逃げる事ができなかった。 


 そして、人影は前野に近づき話し掛ける。


「大丈夫ですか~? 飲み過ぎかな~?」

「だ、大丈夫です」


 前野は返事をしながら声のする方への視線を向ける。

 そこには、駅前交番のほんわか女警さんが眠たそうな顔で立っていた。


 マズイ! と思った前野は、すぐに目を逸らし吐き気を我慢してその場から立ち去ろうとする。


「うん? 急いじゃってどうしたのかな~?」

「今日は持病の薬を忘れて来ちゃって……体調が悪いんです。早く家に帰って薬を飲まないと……」

 

 我ながら急に出た言い訳にしては見事だと思っている前野がいる。


「あら~。それは大変ですね~。気を付けてお帰り下さい~」

「は、はい。ありがとうございます」


 そして、前野は慌ててその場から離れていった。

いつも読んで頂き、ありがとうございます!


終わりに辿りつかない…


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