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アジトを探せ!

『駒沢公園周辺で廃ビルは一ヶ所だけだ。公園の第一駐車場を背に道路を挟んで向かい側に【MSビル】っていうビルがある。そこ、老朽化で取り壊しの計画が入ってて、今は無人のはずだ』


 田宮の魔力探知を頼りに俺達は、駒沢公園に向かいながら、東城さんに【イドラ】のアジトの可能性がある廃ビルを探してもらっていた。


 流石は【ゴースト】の異名を持つ我らがIT担当、東城さんはあっという間に駒沢公園周辺にある廃ビルを探し当ててくれた。


「運転手さん、駒沢公園の第一駐車場の方に行ってくれ! それにしても、さっすが【ゴースト】!! 仕事が早いぜ【ゴースト】!」


『……ふとまき……死ねばいいのに……』

「ちょっと、兄さん!」

「あ、しまった!」


 東城さんは、【ゴースト】と呼ばれるのを本気で嫌う。


 幼少の頃から毛嫌いしていたマスコミによって面白半分に付けられた通り名であるため、六課内では一応禁句の一つになっているが、真紀の奴は馬鹿なのか、毎回東城さんの前で【ゴースト】を連発して結構な罰をもらっているのだ。

 

 まぁ、真紀は馬鹿だけど悪気がある訳ではないだろう。素直に東城さんを褒めているのだ……が、当の本人には響いていないのが残念でならない。


「東城さん、助かります! お陰で的を絞る事ができました!」


 真紀を助けると思って俺はやや大げさに東城さんにゴマをする。


『……はんぞう』

 東城さんは、六課のメンバーで自分より年下のメンバーに対してあだ名で呼んでいる。


 紗奈はさなぎ、真紀はふとまき、早紀はおおさき、俺はというとはんぞうだ。多分、服部半蔵からきているのだろが、一文字もカスってない。


 実にユニークな東城さんの思考はさておき……。 


「はい、なんですか?」

『……さなぎの事お願い。絶対に連れて帰ってきて』


 紗奈は銀座で占い師と接触し、二人でその場を離れた瞬間、周辺の監視カメラから二人の姿が消えたらしく、東城さんはここ数日寝る間を惜しんで、そこら中の監視カメラのデータを引っ張りだし紗奈の行方を捜してくれたらしいのだが、中々成果を上げられずかなり落ち込んでいたらしい。


 だからなのか、いつも気だるそうにしている東城さんの声に熱を感じる。紗奈の事を凄く心配してくれている事が伝わる。それに、いつもなら口を開く度に発している、“面倒くさい”と言う口癖が今日は一度も発せられていない。


「絶対に無事に連れて帰るんで、東城さんは少し休んでください。ここ最近あまり寝てないでしょ?」


『だめ、バックアップは必要だ』


「大丈夫ですって。いざという時は連絡するんで、とりあえず寝てください。紗奈を連れて帰った時に東城さんが満身創痍だったら、おそらく自分を責めると思うんで、元気な姿で迎えて欲しいです!」


『……分かった。はんぞうを信じて少し休む。だから、頼んだ』

「はい! 頼まれました!」

『ふとまきは死んでもいいけど、はんぞうもおおさきも気を付けてな』

「はい、恵美さん」

「恵美~悪かったって~『プツン、ツーツーツ―』切りやがった……はぁ~今度はどんな罰が……」


 と真紀の深い溜息を乗せ、タクシーは駒沢公園へと走った。



 東城さんとの通話を終え十分少々、俺達は目的地である駒沢公園に到着した。


 走っている途中丁度それらしき廃ビルがあったので、俺達は廃ビルの前に降ろしてもらった。

 ビルの前に立つと入り口の上の部分には確かに【MSビル】と彫られていた。

 建物内にひと気がないせいか、夕暮れ時の陽に照らされた廃ビルは、人の接近を拒むかの様なオーラを出している錯覚に陥るのだが、そんなのかんけーねぇえええ!くらいの勢いで俺達は、ビルの中に入ってい入った。


 薄暗い建物の中に入ると、さほど大きくないビルのせいか、すぐにエレベーターホールに到着。そこには古びた小さめのエレベーターが二機あった。もちろん作動はしていない。


 エレベータの階の表示を見る限り、この建物地下二階、地上八階建ての様だ。

 目的地は地下。

 俺達はエレベーターのすぐ横にある階段を使って、地下へと歩みを進めた。

 

 地下一階を見渡すと、細い廊下があり、それを挟むかの様に四つの無機質な取手付きの鉄製のドアが対に並んでいた。


「本当にこんな所にいるのかぁ?」


 とズカズカと前進する真紀の背中にくっつく様に早紀が付いていく。早紀はこういう場所が苦手なのか、腰が引けてる様に見える。


 そんな二人の様子を後ろから見ていると、「咲太、手分けして探すぞ!」と、一番奥の部屋の扉を力任せに開けようとするが、首だけ後ろに向けて「おい、早紀! 動き辛いから離れろよ!」と煩わしそうな表情を早紀に向ける。


「だって……怖いよにぃさん……」

「ったく、お前はいくつになっても……しゃあねぇな! ほれ、こんな所で時間かけられねぇ!」


 真紀は、やれやれと言った感じで早紀と手を繋ぎ部屋へと入っていった。


 ややぶっきらぼうではあるが、真紀は、早紀の事を凄く大事に思っている事が度々感じられる。あんまりその事を突っ込むと真紀が本気で恥ずかしがるので、たまにからかう程度だ。


 それにしても、兄弟の居ない俺にとっては、眩しい光景だ……。兄弟がいるっていいなぁと改めて思わされる。


 いかんいかん、呑気に考え事なんて……俺も探さないと。


 俺は、手前のドアの取手をひねり、室内に足を踏み入れる。

 廊下が狭かったので、勝手に室内は狭いものだと思っていたが、教室一つ分位の広さはある。物が何一つ無いため、更に広さが際立ってるのかもしれない。


 見た感じ何もない。


 人の気配もしない。


 それでも俺は壁を叩いてみたり、床のカーペットを捲って見たり隅々まで確認して見るが何もない。


 奥の二部屋は真紀達が見てくれているので、手前にあったもう一つの部屋を調べることにしたのたが、最初に調べたり部屋と同様何も見つける事が出来ず肩を落としていると、既に奥の部屋を調べたであろう真紀達がヒョコっと俺の方を覗いてくる。


「何かあったか? 奥の二つは何もなかったぜ」

「こっちもだ、何も見つからない」

「じゃあ、とっとと下に行くぞ」


 これ以上ここにいても仕方がない、俺は真紀の言葉に従って地下二階へと向かった。


 地下二階は、物置みたいなスペースとボイラー室があるだけだった。


 ボイラー室を調べていると丸々と太ったネズミが急に飛び出してきて、早紀が狂乱していた事以外特に変わったことはなかった。


 一頻り地下を調べ終えた俺達は、一応上の階も調べる事にし、時短のためここでも二手に別れた。俺は最上階から下の階を、真紀達は二階から上の階を調べていったのだが、成果はなかった。


「おかしいなぁ……」

「他に廃ビルは無いって言ってたんだけどなぁ」


 どうする事も出来なく頭を悩ませていると、早紀が「あのぉ」と恐る恐る手を上げる。


「うん? どうしたんだ?」

「咲太さん、確か魔法使える様になったんですよね?」


 先程、美也子さんへの報告の際に魔法を使える様になった事も報告済みだ。見せてみろと言われ、ドヤ顔で実践して見せたのだが、明らかにガッカリされたのを俺は忘れはしない……。


「飛ばせたりは出来ないけどな……」と自虐を交えて返すが、早紀はそんな事はお構い無しに続ける。


「そうでしたら、田宮さんみたいに魔力探知……できるのでは?」


 なんですと?


「そうだよ! 早紀、お前天才だな! ほれ、咲太。魔力探知だ、やってみろよ!」


「やってみろって言われてすぐに出来るわけねーだろ! 俺なんか、魔法が使える様になってまだ二日しかたってないんだぞ? 魔力操作もままならないのに……」


「でも、何か手掛りが見つかるかもしれませんし、物は試しと言うことでやってみましょう!」

「早紀の言う通りだ、ダメ元でやってみようぜ?」


 俺は、双子の圧力に負け、両目を瞑る。

 魔力なんて、どうやって見つけるんだよ……魔力……魔力……まずは自分の魔力を感じとる。しばらくすると俺の身体の血管という血管に何かが流れ、循環しているのを感じられる。


 魔力だ。これと同じヤツを探す……探す……さが……すーーっ!?

 あっ、た。

 俺は、目を開き現在俺達がいる、廃ビル五階の窓に向かって走る。


 俺の様子に「分かったのかッ?」と真紀が聞いてくる。

 俺は、それに応えるように窓の外を指差す。


「あれだ!」


 俺の指差した方向には、この廃ビルとは比べ物にならない程高く、広い高層ビルが聳え立っていた。


 間違いない。あそこだ。


「あのビルの最上階だ!」   

いつも読んで頂きありがとうございます!

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