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会談(上)

更新が遅くなってすみません!

誤字脱字修正しました。(20.12.14)

「そこで魔力を纏ったサクタの腕が真っ黒に染まり!」

「すっごーい! サクタ魔法使える様になったんだ!」

「ほぉう、それは興味深いな」

「もぐもぐもぐ――」


 魔王一家は、先ほどの俺とレレのタイマンの話で盛り上がっている。

 リリは、食事に夢中で声は発せず相槌をうっているだけだが……。

 

 さて、魔王一家とは打って変わり、俺、ワタル、レウィは借りてきた猫の様に静かに食事を口に運んでいた。俺が魔法を使った事でワタルは、凄く俺に何か聞きたそうだが、ぐっと我慢している様なそんな表情をしている。


 そんなワタルの気持ちが俺にも凄く分かる。

 その実、大人が数人寝っ転がっても事足りる、縦に長いテーブルには、まさに絢爛豪華な食事が並べられており、本来であればテンションマックスで全てを食べつくすだろう俺が、ちんまり、ちんまりと食事をしているのだ。

 予想外に早い魔王アーノルド・ルートリンゲンとの対面に心の準備が出来ていなく、そして、やっぱり一国の王、いや、この世界で最強の王の前だ……いくら、大雑把な俺でもそれ相応に緊張するのだ。


 ちんけなオルフェン王国の豚王とはわけが違うのだ。


 俺でさえこんな感じなのに、自国の王を前にしている幼いレウィはもっと負担が掛かっているのだろう。先程から誤作動を起こしているロボットに様にカチカチだ。


 ちらっと魔王を覗き見る。イケメンだ。

 年は俺の親父と同じ位だろうか。いや、実際はもっといっているだろうが、非常に若々しく見える。

 まだ誰も足を踏み入れていない新雪の様に白い髪は、食事の為か後ろに一つに結んでおり、やけに様になっている。レレの話を聞いて終始笑顔を向けてはいるが、時折見せるその奥に光っている血の様な真っ赤な双眸から放たれる眼光には油断も隙も感じさせてはくれない。


 だが、一つだけ言える事は、この人物が俺達の世界を征服しようなどと思っている事が信じられないという事だ。傍から見る限り、家族を大事にしていそうなパパさんなのだから。

 そんな事を考えているとふいにパパさん……もとい魔王が「どうしたのかね? 食事が進んでいなようだが……口に合わなかったか?」と俺に語りかける。


「い、いえ! 滅相もありません。美味しく頂いてます!」

「うむ。それなら良いが……」

「一国の王様を目の当たりにして緊張しているだけですので!」


 本当だよ?


「あっれ~ミーの時は、凄くフレンドリーだったくせに~これでも一国の王妃なのに~」 とララが揶揄う様な表情で俺に意地悪を言ってくる。


「いや、それは、ララとは出逢いが出逢いだし……かしこまらなくて良いって言ってたし……」

「ふふふ。冗談だよ~そんなに焦らなくても」

「勘弁してくれよ……」

「はっはは、随分と仲が良いのだな。我でも妬けてしまいそうだ」

「い、いえ! 奥様に、邪な気持ちなどありませんから!」


 ふざけんな、俺が焼かれてしまうだろッ!


「はっははは、冗談だ。我はこれでも世界で一番妻を愛し、妻も同じだと自負している。であろう? ララディア」

「も、もう……人前で……」


 すげぇバカップルなんだけど……ララ、めっちゃ女の顔になってるし。


「がっははは! 両親の仲が睦ましくて何よりでありますな!」

「うん、仲良しが一番だよ~ぉ」


 こんな感じで、魔王一家は凄く仲のいい家族だ。


 それから、俺達は魔王夫妻ののろけをおかずに食事を続けた。



「魔法が使えるってどういう事だいッ!?」


 開口一番は、予想通りのものだった。

 俺とワタルは、使用人の案内で魔王の執務室へと向かっていた。

 食事が終わり、俺達と話がしたいという魔王のリクエストによるものだ。

 この場には俺とワタルしかいない。


 レウィは、リリに魔力操作を教えてもらうためリリの部屋へ行き、ララは仕事が残っているため自室に戻った。そして、レレは部下達を連れ街に繰り出した。魔王との話が終わったら合流する予定だ。それまで俺の命があるか分からないが……。

 さて、我が友人の疑問に答えてあげるとするか……。


「うん、何か使えた。俺も良く分からん」

「はぁあ? もっとちゃんと説明をしてくれないか?」

「だから……」


 右腕が黒くなった事、今までで感じた事のない凄い力だった事、だけど魔力を飛ばすことができないという事、そして、リリの見解。それぞれをワタルに伝えた。


「非常に興味深いね……確かにリリ姫の見解には何一つ違和感がないよ。ぷふふふ、それにしても魔法を受けて魔力が溜り、しかもそれを無理矢理こじ開けるなんて本当に君は面白い男だよサクタ」

「面白いって……まぁ、それでも魔法を使えるからいいんだけどな! 早く、ファイヤをアロー出来る様に頑張りたいぜッ!」

「うん、頑張って。君ならできるさ」

「おう!」

 

 そんな会話を交えていると、使用人の足が止まり、俺達もつられて止まる。

 

 目の前には俺の身長の倍はあるであろう、両開きの木製のドアがあり、ドアの両サイドには、今にも俺達に襲いがかりそうな、顎を目一杯開いた獅子の顔が模ってある。

  

 ――コンコン

「アーノルド様、客人をお連れしました」

 使用人の言葉に一泊遅れて、「うむ。入るがよい」と魔王が応えると「どうぞ、お入りください」と使用人は右の扉を開く。


「失礼します」と俺は短く断りをいれ、魔王のいる執務室へ足を踏み入れた。

いつも読んで頂き、ありがとうございます。

次話は、明後日までに更新する予定です。

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