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これでやろうぜ?

一部修正しました。(20.11.15)

誤字脱字修正しました。ご指摘ありがとうございます!(20.11.16)

 何故か俺は今、レレと対峙している。

 闘技場のど真ん中で、だ。


 円形の広い空間には、階段式の観客席が設置されており、そこには先程までここで訓練をしていた様々な種族の兵士達がワクワク顔でルンルンしている。

 彼らはレレの隊の隊員らしい。

 だからなのか、彼らは俺に向けて溢れんばかりの殺気を向けてくる。

 殺伐としたその光景は、パンピーならばパンツに染みを作り、ごめんなさいするところだが……ちっちっちっ、俺には程よいそよ風のようだぜぃ!


「おい、どっちだ!」

「俺は、隊長に百だ!」

「俺は隊長に二百!」

「私も隊長に……」


 とか思っていたら、こいつら賭け始めやがった……。


 まぁ、この世界は元々娯楽が少ないので彼らの気持ちも分からんでもない。

 こんな他愛のない対戦でも、彼らにとっては中々ない最高の娯楽だろう。

 数ヶ月は酒の肴にできるくらいの。


 だからなのか、レレも彼らを咎めたりはしない。それにしても……誰も俺に賭けようとしない。屈辱だ。


 まぁ、彼らにとって人族の俺は下等種族。

 かたやレレは、最強魔王の血を引く彼らの隊長。

 俺が彼らの立場でも、俺には賭けないだろう。


 だが、いいのか? レレばっかりに賭けたら、賭けにならないだろっ!


 レレに視線を向けたまま、心の中で盛大に突っ込んでいる俺の耳に「じゃ、テムテムは、あの人族に賭けるさ」と俺を推す声が!


「お前ギャンブラーだな」と、俺を推したテムテムという男を馬鹿にする様な声が聞こえるのだが、もう一度お前らに教えてやる!

 そもそも、テムテムがいなかったら賭けにならないからな!?


 テムテムの事が気になり、チラっと声のする方を見ると、そこには弱々しい顔とは反比例した全身ムキムキな男が遠慮気味に手を上げていた。普段ならば心の中で彼に感謝を述べて終了の筈なのだが、俺の目に映った一対の物体がそれをさせなかった。

 耳だ。テムテムの頭の上に赤い一対のウサミミがピンと天に向かって伸びているのだ。


 テムテムはタムタムと同じ赤兎族だったのだ!


 兎族の中でも戦闘狂の証であるソレを、テムテムは頭に携えているのだ。そして、名前も似ている。更に一人称が名前だ。


 何だが親近感が湧きテムテムに笑みを向けると、露骨に引いていた気がするのだが……気のせいだろう。

 

 さて、視線をレレに戻す。


 そもそも、何で俺はレレと対峙しているのか?


「サクタは、強いのだろ!?」


 事の発端は、生き生きとしたレレのこの言葉だ。

 部屋でレレと談話タイムを満喫していたら、レレの口から突拍子もなく発射された言葉だ。


「まぁ、人並み以上は強いと思うよ?」

「謙遜するな! 俺には分かるぞ!」


「お前に何が分かるんだ!」と口に出かけるが、ぐっと堪える。


「強いだろ?」と聞かれ、「おう! 俺最強!」と胸を張るほどの自信はない。

 少し前までは謙遜はしつつも、実際に俺最強と思っていたが、魔王の存在が俺の意識を変えた。


 まだ見ぬ魔王の存在にビビってるなんて、最強とは程遠い。

 だがら、今の俺の辞書には謙遜という言葉は無い。

 それを魔王の息子であるレレに見透かされている様で、嫌な気持ちになるのだが……よくよく考えれば、レレは直接的なタイプの男だ。短い付き合いではあるのだが話してみてそう感じた。いや、絶対そうだ。


 レレは、歯に衣着せず自分が思った事をストレートに伝える男だ。デカイ声で……。

 素直に、俺を強者と思ってくれたのだろう。嬉しい限りだ。

 

「そういうレレはどうなんだ?」

「うむ、俺は強いぞ! 兄弟の中で一番強い! 俺に勝てるのなんて、父上くらいだ!」

 

 うん、こんな感じだ。

 これだけ言ってるんだ、レレは強いのだろう。

 魔王の次に強い。つまり、この大陸で二番目に強いという事だ。

 俺の今の立ち位置が分かるかも知れない。


「なぁ、どうだ? 手合わせしてみないか?」


 俺の言葉にレレの口角が吊り上がった。


 そう、この対決は俺が望んだ事だが、レレも満更でもない様子だ。

 というよりも俺と手合わせしたかったが、流石に母であるララの客人に戦おうと言えるはずもなく、何かしらのタイミングをうかがっていた様な、そんな感じがする。

 

「そこにある好きな武器を選んでくれ!」

 

 レレの指さす方には、様々な武器が立て掛けられていた。

 剣、槍、弓、斧、鎌、棒……本当に多種多様だ。

 普段なら、剣を選ぶのだが……それじゃあツマラナイ。


「これでやろうぜ?」

 

 俺は拳を二度ほどぶつけ、続ける。


「俺はこれでやるが、武器の方がいいなら、構わないぜ? 好きなヤツを取りな」

 

 武器を使わない方が、単純な地力が分かっていいと思った。

 だが、これは挑発にもとられる言動だ。案の定、レレの部下達から酷い罵声が俺に向けて発せられる。


 自分の親分をコケにされて怒っているのだろう。

 そんな中、レレが観客席に向けて掌を向けると、部下たちの罵声が一斉に止む。

 怒っているような俺に向けられた力強い眼は、次第と緩み――。


「あっはははは! なるほど、力を測るには素手が一番だな! よし、俺もこれでやろう!」


 俺と同じように二度拳をぶつけ、高らかに笑うレレの声は、シーンと静まり返っていた訓練場に響き渡る。

 流石というべきか、レレは俺の意図をちゃんと汲んでくれた様だ。

 

「せ、僭越ながら、レレディオ軍娯楽担当であります、この狸人族のポンクロスがこの立会人とさせていただきます!」


 何か、出てきた! 


「では、レレディオ隊長とえっと……」


 あ、俺の名前知らないよな。


「サクタだ!」


 俺は簡略に名前だけを伝える。


「ありがとうございます! レレディオ隊長とサクタ殿の対戦を始めます! レレディオ隊の皆さん、準備はいいですかあああ!?」

「うおおおおおおおおおおっ!!」


 ポンクロスの言葉で、外野のボルテージは天井知らずだ!


「お二方も、よろしいですかあああ!?」

「いつでも、いいぜ!」

「うむ! 俺もだッ!」


 俺達も準備万端だ。


「では、勝負かいしいいいいいいいいッ!!」

 

いつも読んでいただき、ありがとうございます!

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