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庶民ですので……

誤字修正しました。(20.11.9)

誤字修正しました。ご指摘ありがとうございます。(20.11.15)

 最上階から階段を降り、ゲストフロアへと移動する。

 最上階とは違い、廊下の壁が透明という事は無く、マリーンブルーが続いている。

 

 同行しているレレと会話を交わそうとしたが、すぐに部屋に到着した事でそんな時間はなく、分かった事は、レレが俺と同じ年である事だけだった。


 さて、部屋だが、流石にレウィとはマズイが、ワタルとは同室で構わないと言ったのだが、自分のお客さんにそんな真似はできないとララが食い下がり、俺達は各々個室を充てがわれる事になった。

 

 俺達の部屋は横並びで、レウィ、ワタル、俺の順で三室だ。

 部屋の扉の間隔が結構離れているので、室内はかなり広いだろうと予想していたが……って「広すぎだろ!」

 ついつい心の声が漏れてしまう。


 小規模な宴会場くらいありそうな広さの部屋には、俺の部屋のベッドの三倍はありそうな大きなベッドをはじめ、いかにも高価そうなインテリアが備えられている。


 正直、インテリアとかの知識はない……が、アンティーク調のそれらは、良い素材をベースに一つ一つ丁寧に作られているのが素人目線でも伝わる。


 重厚で品があり、美しささえ感じさせるそれらは、まさに地獄城を表すかの様だった。


「なんか、高級すぎて落ち着かないんだけど……」

「ふふふ、豪華なのは、このフロアにある部屋は最上級のゲストをもてなすための部屋だからな・の・さ」

「最上級って……庶民の俺にはハードル高すぎるって! 一番グレードの低い部屋にチェンジしてええ!」

「サクタ達は王妃であるオニ母上の客人だ! それ相応のもてなしをしなければ、オニ母上の名が廃る! オニ母上の為だと思ってこの部屋で我慢してくれ!」


 部屋を変えてと懇願する俺にレレは事情を説明してくれるのだが……声が大きい。

 初めて出会ってからずっと大きい……。


「ごめんね、サクタ。そんな訳なんだ」とララも苦笑いを浮かべる。

「いや、俺こそわがまま言ってごめん。そんな大人の事情に疎くて……この部屋でお願いするよ!」

「うん! ありがとう!」


 お礼を言わないといけないのは俺なのに……わがままを言った自分が恥ずかしい。

 

 そんなやりとりの後、ララは夕食まで残った仕事を片付けると言ってレレを連れて出て行った。

 

 暇なので、ワタルの部屋を覗きにいく。

 ワタルの部屋では絶賛レウィの魔法訓練が行われていた。

 魔力の器が形成されたレウィではあるが、魔法については素人当然。

 そこで、ワタルが基本的な魔法の使い方をレクチャーしてあげているのだ。


 魔法が使えない俺に出来る事は何もないため、暇を持て余してぶらぶらしていると「サクタ!」と背後から大声で俺を呼ぶ声がして、驚き振り返る。レレだ。ララについて出て行ったレレが戻って来たのだ。


「どうした?」 

「サクタが暇していると思うから相手して欲しいとオニ母上に言われてな!」

「ララには全てお見通しか、はは……」

「オニ母上はこの大陸一の商人だからな! それくらい容易い事であろう! サクタは単純そうだしな! あっははは!」

「あは……あはは……」

 

 単純で悪かったな……全くその通りなので何も言い返せない。

 そんなこんなんで上機嫌に笑うレレを伴い俺は自室に戻った。


 黒茶色のベルベット生地のソファーに腰かけるタイミングでメイドさんがお茶を出してくれる。俺が座るタイミングを計っていたかの様に、ナイスタイミングだった。

 少し酸味のある柑橘系のお茶だ。

 レレにお茶について聞いてみると、ポンダンという果実の皮を乾燥させて煎じた物らしく、疲労回復に絶大の効果があるという。

 それを聞いてか、漂流から始まり、移動続きで自分でも知らない内に疲労が蓄積されていたのか、このお茶のお陰か疲れがすーっと取れていく様な感じがした。

 

「それより、レレ達は何でララの事オニ母上、オニママと呼んでいるんだ?」

「うむ! それはオニ母上が鬼人族であるからだ!」

「うん? だから?」

「うむ! 父上には、オニ母上を含めて七人の母上達が――」

 

 話によると、魔王にはララを含めて七人の妻がいる。

 本来であれば複数妻がいる場合、正妻、妾と区分し序列を設けるのだが、魔王はこれを良しとせず、みんな等しく扱っているらしい。甲斐性のある男だ。

 なので、子供達も同じ様に分け隔てなく七人全員が自分たちの母親という教育をされているため、種族名をつけて母上なり、ママなりと呼んでいるという。

 ただ、暗黙のルールでララ達、王妃の間だけ序列という物を設けているというが、それによって誰かをないがしろにしたりはしないという。仲睦じい大家族と言えるだろう。

 

 因みにリリを含め、レレには十五人の兄弟姉妹がいるという。

 

 そして、まだ幼い弟、妹達はさておき、レレ達を含むある程度年齢がいっている兄弟姉妹は、この国で重要な役職についているという。

 

 レレは大隊の隊長を任されており、リリは研究所の副所長だという。

 そんなリリは、研究に没頭しすぎて、いつも睡眠不足らしい。

 だから、あんなに眠たそうだったのか……。


 そして、もう一つ気になったのは、レレはどちらかというとララの様な鬼人族に見えるが、リリはそうは見えない。角もないし。その事について聞いてみると、魔族の場合、親の種族が異なるとどっちかの種族で生まれてくるらしい。


 だから、リリは魔王である父の種族であるヴァンパイア族なのだと。

 

 少しずつ疑問を解消しながら、俺はレレとの話に花を咲かせた。

いつも読んでいただき、ありがとうございます!

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