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レレとリリ

誤字修正しました。(20.11.9)

 燦爛たるシャンデリアに照らされた地獄城の内壁は、外壁よりも淡い色をしていた。

 沖縄好きの両親に連れられて、石垣島でスキューバダイビングをした時に感動を覚えた海の中。

 それに見劣りしない程、透明度抜群な世界が広がっている。


 俺達は、ララに連れられ城内を歩いている。


 すれ違う兵士や使用人達は、門番長でオークのラーゲンさんと同じ様な反応を見せ、ララはラーゲンさんに対した時と同じ様にフレンドリーに返す。そして、その都度俺達の事を紹介して、俺達も挨拶を交わした。


 そんなやりとりを城の中心部に設置されている、大理石の巨大な柱に辿りつくまで続けていた。


「これは?」

「ふふふ。聞いて驚け諸君! 昇降柱(しょうこうちゅう)と言って、城の各階へと移動できる装置だよ!」


 えっへんと、中々にボリュームのある胸を張るララ。


「うわ~凄いです! そんな事ができるんですね!!」

「あ~エレベーターみたいな物か」


 凄いとはしゃぐレウィに反して、俺とワタルの反応はいまいち。

 そんな俺達の様子に、自慢気に胸を張っていたララは、ズコっとこけそうになる。


「サクタの世界にもあるんだ……初めてだよ、これに驚かないのは……」

「まぁな、俺達の世界、いや、俺達の国でもこの城の何倍の高さのある構造物が数えきれない程あるんだ。流石に階段で移動できないから、エレベーターという機械で移動するんだ」


 地獄城の高さは目測で二十階建ての建物と同じ位だ。

 戦争時に見たこの世界の城の中では圧倒的に高い。

 だが、日本でもある程度大きい都市であれば、これ位の高さの構造物は数えきれない程ある。


「はは……この城の何倍……」とララは、苦笑いを浮かべているララに「だけど、この世界の技術でこれ程の城を建てるのは凄いと思うよ」とすかさずワタルがフォローをいれる。


「ワタルの言う通り、高さはさて置き、この城の美しさは俺達の世界でも中々見れるものじゃないから!」


 続いての俺のフォローにララは「そ、そうだよね!」と調子を取り戻し、「さぁ、柱の中に入ろう!」と俺達の背中を押す。もの凄い力で。ぐいぐいと。


 抗う必要のない俺達は、ララに押されるがまま昇降柱に入っていった。


 昇降柱の中は俺達四人が入ってもかなりの余裕がある。結構な人数が乗れそうだ。

 そして、中心部に半球状の透明な置物が置いてあり、ララはそこに手をかざし「最上階」と口ずさむと、ウィーンという機械音を伴い、俺は浮遊感に襲われた。昇っている事が実感できる。


 しばらくすると、“最上階”という機械音がなり、俺達が最上階に到着した事を知らせてくれる。

 

「うお~すげぇ!」

「わぁ~~」

「確かにこれは絶景だね!」


 昇降柱から降りた俺達は、眼前に広がる光景に目を奪われる。

 内壁一面が透明なガラスで出来ており、バンカーサイドのマリーンブルーの街並みが広がっているのだ。

 俺達の様子をしてやったり顔で見ているララは、ごほんと軽い咳払いをし「ユー達、何をしているんだ? 行こうではないか」と似合わない口調で先頭を足軽に歩き出す。

 そんなララに置いて行かれないように俺達もその場を後にした。


「今からどこに行くんだ? 魔王に会いに行くのか?」

「あぁ~伝えるの忘れてた! アー君は南部に視察に行っているらしいのよ。早ければ明日には、戻るらしいから、とりあえずアー君が戻って来るまで城でゆっくりしてくれればいいよ」


 魔王は不在……か。少し、ほっとしている自分がいる。

 そんな、俺の様子に気付いたワタルは、ふっと笑い、「それは良かった、こっちも心の準備が必要だったから願ったり叶ったりだ! だよね、咲太」と俺の背中を叩いてくる。


 いつもクールなワタルが、こんなアクションを取るのは珍しい。

 多分、俺の事を気遣ってくれているんだろう。まったく敵わないな……。


 この最上階は、謁見の間と魔王の執務室、そして王族の部屋がある階層だ。

 そして、ゲストルームはこの最上階から階段で一つ降りたところにある。

 先程の絶景は最上階のみ。ララはそれを俺達に見せるため最上階まで昇ってきたのだろう。

 

 階段向かう俺達の背後から、「オニ母上ッ!」と叫ぶような太い声が廊下に響き渡る。

 振り返るとそこには、二メートルはあるだろうララによく似たクリーム色短髪、額に一本角が生えた男前な青年と、流れる様な灰色の髪をした美少女が立っていた。

 青年の方は筋肉隆々な腕を上げ嬉しそうに振っており、少女の方は寝不足なのか、ひどく疲れた顔をしていた。

 

「レレちゃん! リリちゃん!」


 ララは、踵を返し飛びつく様に2人に近づく。


 少女は、「オニママ、久しぶり~ぃ」とララの頭を撫でる。

 彼らの様子を見ると、二人はララの子供だろう。


「うんうん、二人とも元気そうだね!」

「もちろんであります! オニ母上も相変わらず元気そうで安心しましたぞッ!」


 相変わらず、青年は声がでかい。腹から搾り出してます、果汁100%ですと言いたげそうな声だ。

 そんな風にララ達を傍観していると、二人がこっちに視線を向け、青年が口を開く。


「オニ母上! こちらの方々は?」

「あ~紹介するから、二人ともついてきて」


 とララは二人間で、二人の腕に自分の腕を絡ませ、俺達の方へ戻ってきた。


「みんな、この二人はミーとアー君の愛の結晶。つまり、ミーの可愛い可愛い子供達なのだ! さぁ、自己紹介、自己紹介」


「分かりました、オニ母上! 俺は! レレディオ・ルートリンゲン! 第三王子であります!」


 やっぱり、声が大きい。耳が痛い。


「リリは、リリディア・ルートリンゲン。第五おうじょ~ぉふぁ~~」

 うん、娘さんの方は、何というか……ゆるい……。欠伸してるし。


「で、こっちはアー君のお客さん」


 ララは俺達をお客さん扱いしてくれているからか、俺達の紹介は、レレディオ王子達の後になった。


「お、お初におめ、めにかか、かかり――」


 いかん、王族に対して挨拶なんかした事なんてなかったから、カミカミになってしまった。はずい!


「ぷはははははは!」


 ララが爆笑している。

 ワタルとレウィは必死に笑いを堪えている……。

 そんな、俺の顔が羞恥心で赤く染まろうとしたその時。


「客人、俺達にかしこまる必要などありませぬ! オニ母上が直接この場に連れている貴方は、謂わば国賓!」


 レレディオ王子は、ニカっと白い歯を見せている。

 いい奴そうだ……声デカイけど……。

 俺は念のため、ララにアイコンタクトしてみると、笑いを堪えながらコクりと肯定したので、砕けた紹介をしようと思う。てか、いつまで笑ってんだ……。


「ごほん、初めまして、人族の服部咲太です。気軽に咲太と呼んで下さい。で、こっちがワタル、そして、レウィシアです」


 俺の紹介で、ワタルとレウィは軽く頭を下げる。


「俺の事はレレと呼んでくだされ! 年も近いようだ、どうだろう、敬語も無しにしよう!」

「わかりま――いや、分かった! よろしくなレレ」

「あ、リリもリリって呼んでいいから~、後、敬語もなしね~ぇ」

「あぁ、分かった。よろしくな、リリ」


 俺がそう言うと、リリは眠たそうに欠伸をし、俺の頭を撫でてくる。

 この年で頭撫でられるって、何か照れる。


「そろそろ、サクタ達を部屋に案内するけど、ユー達はどうする?」


「俺は、やることも無いのでついていきましょう!」と元気一杯のレレ。


「リリは、眠いからパス~少し寝てから、顔だす~ぅ」と眠気一杯のリリ。


「じゃあ、リリちゃんはまた後で。レレちゃんが付いてくるのは問題ないよね?」

「あぁ、問題ないさ」と、ワタル達にも一応確認してから返す。


「では、出発進行!」という、ララの元気の良い号令によって俺達はリリとバイバイした。

いつも読んでいただき、ありがとうございます。

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