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【回想】戦闘奴隷として⑥

書けない……全然書けない……

 この世界に召喚されてからひと月が過ぎた。


 このひと月で、俺の身体能力は驚くほど上昇した。

 鉄球をつけての持久走は、当初五周しか走れなかったのが二十周走れるようになり、鉄の棒を持った素振りも二百回までは隊長のペースについていける様になった。

 それでもノルマには届かないが……たったひと月で驚くべき成長と言えるだろう。

 

 他のメンバーはどうかと思ったが、俺以外に二十周走れるのはNo.25の竹本司君だけだった。

 彼は、初日から他者を寄せ付けない程の身体能力を持っていたので当然と言えば当然だろう。

 走っている最中、なんでそんなに身体能力が高いのか聞いてみたが……無視された。

 

 竹本君以外は、十~十五周の間くらいだ。

 No.9のオッサン、三上一郎さんだけはまだ五周しか走れていない。


 それでも「くくくツ、今に見てろ! この私はまだ覚醒していないだけだ!」と胸を張る三上さんは凄いと思う。

 

 俺の身体能力がこれだけ成長できたのは隊長との訓練が役に立っていると思うしかないだろう。


 隊長との訓練は、ひと月が経っても相も変わらずだ。

 俺はタコ殴りにされ、何度も意識がぶっ飛び水をかけられ起こされるという事を繰り返す。

 ただ、気絶する回数が減ったような感じがする。……たぶん。

 

 このひと月、毎日の様に居残り訓練に勤しみ、オリビア小隊長に牢屋まで運んで貰っていた。

 その際に隊長に対して悪態をつく彼女に俺は意を決して「小隊長は隊長の娘さんなんですか?」と問いかけると、彼女は「そうよ、文句あんの?」と不機嫌を露にしたのでそれ以上何も聞かなかったのだが、それを皮切りに彼女が愚痴を混ぜながら隊長の話をしてくれた。


 隊長はカラン伯爵家の当主で、元はオルフェン王国でも一、二を争う武人であり、前国王からの信頼も厚く下の者達からも尊敬される将軍の一人だったらしい。


 前王が病気によって崩御し、現王であるホボルッチ・オルフェンにとって目の上のたんこぶとして扱われた隊長は、様々な難癖をつけられ今の地位へと追いやられたという。本来であれば軍から追放したかったのだろうが、やはり隊長の強さと人望をドブに捨てるわけにはいかない為の処置らしい。


「お父様が国の為にどれだけ尽力したと思ってるの! お父様もお父様よ! 王命だからって二つ返事で受け入れちゃって!」


 プンプンしている小隊長の口調はいつもの堅苦しい軍人のそれではなく、父親が大好きな一人の娘そのものだった。


 そんな彼女を見ていると、俺の脳裏に親父と母ちゃんの顔が浮かぶ。

 親父と母ちゃん元気かなぁ……俺がいなくなって心配してるんだろうなぁ。

  

 牢屋に入ると食事が出される。

 カビの生えた固いパンと泥水。

 このひと月で献立が変わる事はなかったが、もう俺達が完食するまで看守が見張る事はなくなった。

 そして、俺達が腹を下す事も。


 人間、どんな環境でもひと月もいれば慣れるというものだろうか。


 俺は壁に凭れ、自分自身も世話になっている部屋と言う名の牢屋内を見渡す。

 壁や床を這う虫共はもう気にならない。

 こっちに来たばかりの時は、寝てる間に口に入ったら……と心配して手で口を塞いでうつ伏せで寝ていたのだが、身体が疲弊しきっているという事もあり、段々と気にしなくなった。

 まぁ、言ってみれば虫共かれらの方が俺達より先にここに住んでいるのだから、虫共にとっていい迷惑だろう。

 

 俺以外の仲間は四人とも既に寝息を立てている。

 寝息と言っても、紗奈ちゃん以外はイビキが凄いのだが、そんな事ももう気にならなくなった。

 

 俺を含めみんなの身体は生傷が絶えないと言っても過言ではない程にボロボロだ。


 対人訓練は、何というか酷いものだ。

 この世界では異世界ならではと言うべきか、魔法や薬でケガを治す事が出来るのだが俺達は自然治癒力を高めるために、骨折や命に係わるケガでもない限り放置されている。

 ちなみに俺は毎日の様にソレの世話になっている……生きている事が不思議なくらい隊長は容赦がない。

 

 隊長は、俺を強くするためにという意気込みがひしひしと伝わるのだが、他の隊員達はまるで日頃の憂さ晴らしをするかの様に各々武器を振るい、奴隷メンバーはそれに抗う事無く淘汰される。


 決して訓練と言えるものではない。

 だからと言って、隊長がこの行いを止める事はない。俺達が強くなる為の一番の近道だから。


 慣れてきたとは言え、糞みたいな生活環境。容赦のないシゴキ……。

 耐えられる方がイカれている。


 そして、耐えきれなくなった他の牢屋のメンバーは自殺を試みたり、お互いの首を締めてみたりしてこの人生に終止符を打とうとしたが、奴隷紋によって防がれる。

 俺も味わった事のある全身を引き千切るかの様なあの激痛に見舞われ、自ら命を断とうとするものは居なくなった。


 ……そして、更に三ヶ月の日が過ぎる。

いつも読んで頂きありがとうございます。

最近、本当に書けなくて…楽しみに続きを待っていて下さった皆様、誠に申し訳ございません……

自分の力不足に悔しい思いをする毎日です。


色々とさ迷っているので、こんな話が見たい!と言うのがありましたら、どんどんコメント頂けると嬉しいです!

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