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散策

ギムレットとの対峙にはなりませんでした;;

 レウィが急に泣き出した事で俺もワタルもあたふたしていたが、覗き込んだレウィの表情が決してネガティブな物では無かったので胸を撫で下ろす。


 そしてレウィが落ち着く頃合いを見計らって、俺達は市場の散策を続けた。


 色々と物色していると、陽が頭上に差し掛かっていたので、そろそろお昼にしようという事になり、食事処の品定めをする。


 そんな中「えっ?」と、レウィのビックリした様な声が聞こえ、振り返ると小学校低学年くらいの猫人族の少女が、レウィの裾を引っ張りながジっとレウィを見つめていた。


「どうしたのかな?」とレウィは少女の目線に合う高さまで腰を落とすと、少女はすかさずレウィの耳に口を近づけ何かを告げる。

 

 猫人族の少女の言葉に、レウィは一瞬だけ驚いた様子を見せるが、すぐさま元の表情に戻る。

 そして、何かをレウィに告げた後、さっさとこの場から去る猫人族の少女の背中を見つめながらレウィは物思いにふけていた。


「どうかしたのか? 何て言ってたんだ?」


 反応がない。


「レウィ!」

「あ、はい!」

「さっきの子に何か言われたのか?」

「い、いいえ。何て言われたのか聞き取れなくて、それで考える込んでしまいました」


 と満面の笑顔を見せるレウィは、そんな事を言っている割には、何か違和感を感じさせる様なそんな様子だった。


 ――何かを隠している様な、そんな。


 レウィが言葉にしないのなら、追求してもしょうがないと俺は口を噤む。

 俺のそんな様子を見たからか、ワタルも口にしようとした言葉を飲み込んだ。


 一頻り町を見回った俺達は、宿に戻り休息をとる事にした。


「たくさん歩き回って少し汗をかいてしまったので、お風呂に入ってきます」

とレウィは俺達に断りを入れて浴室へと向かう。


 別に断りを入れる必要なんて無いのにと思うのだが……。


 レウィの姿が見えなくなった事を見計らって俺はワタルに「気づいているよな?」と同意を求める。


 俺の脈略も何も無さそうな問い掛けにワタルは頭を縦に振る。


「原因は先程の猫人族の少女かな?」

「それしかないと思う」

「君のその馬鹿げた耳で少女の声を拾えなかったのかい?」

「馬鹿げたって……いくら鍛えているからって常時発揮する訳じゃないんだ。集中する必要があるんだけど、あまりにも急で反応できなかったんだ」

「それは致し方ないね。しばらくレウィの行動に注意しよう」

「そうだな」


 しばらくワタルと言葉を並べる。

 時間にして一時間弱。


 レウィが一向に戻ってこない。


「少し時間が掛かりすぎじゃないか? いつもなら長くても三十分もすればあがって来るのに…………まさか!?」

「サクタ!」


 俺とワタルは急いで部屋の入口近くにある浴室へと向かう。

 ここイトは港町だが、マリーンブルーに囲まれ、周辺にいくつもの海水浴場を有する観光地でもある。そのため、海で遊んで汚れた身体をすぐに洗い流せるように、この町にある宿は全て浴槽が入口周辺に設置してある。


「レウィ!」


 返事はない。

 仕方ないと思い、「レウィ開けるぞ!」と言って浴室の横開きのスライドドアを恐る恐る開く。


「くそっ、やっぱりか!」


 そこにレウィの姿はなかった。


「これはこれは、やられたね」

「やけに風呂に入る事を強調してた訳だ。ワタル」

「うん、急ごう」


 俺が部屋のドアノブに手をかけようとしたタイミングで、独りでにドアが開かれる。

 そして、ドアの隙間から猫耳をピンと立たせたララがヒョコっと顔を出し、「まぁ、焦りさんな」と、ララが外に出ようとしている俺達を押し返す。


 こいつ……それなりに力を入れている俺を押し返しやがった……。

 だけど、今はそんな事気にしている場合じゃない。


「焦るっつーの! レウィがいなくなったんだぜ?」

「それで? ユー達は、今外に出て闇雲にレウィちゃんを探すつもり?」


 何だよこいつ、イライラする。


「わりぃかよ! とにかく退けよ!」


 思いっきり力を込めて、ララの肩を掴もうとした瞬間俺の世界が廻り、一拍置いて「――えっ?」という情けない声が漏れる。

 俺はいつの間にかララの手によって、倒されていた。これには、ワタルも驚きを隠せない様子で、ララから距離を取り警戒心を露にする。


「そんなに警戒しなくていいよ。ミーはユー達の事を気に入ってるからユー達に不利益になる事はしないよー。だけど、もう少し冷静になる事を心掛けた方がいいぞ? この様子じゃアー君、魔王に瞬殺されるぞ」


 ララはいつもと同じ口調で柔らかく俺達に諭すのだが、ララから放たれるプレッシャーは相当な物で、冷や汗が止まらない。


「ララ……お前は……」


 俺は未だに倒れたままで、ララを見上げる。

 そんな俺にララは笑みを向け、「よっこらせ」と俺を片手で持ち上げ立たせる。


「ミーの事は後で説明するとして。まずは二人を安心させるとしますか」

「「…………」」


 俺とワタルは黙ってララの言葉に耳を傾ける。


「ふふふ。やっと冷静になれたかな。よろしい。ミーはレウィちゃんの居場所を知っている」

「ララ……どこだ?」


 声を振り絞った割には、酷く弱々しい問い掛けになる。


「レウィちゃんは、ドゥオ家に向かっているよ」

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