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「今日はれっくん来てないよね……お父さんもいるし」
「おっす、今日の髪型決まってんなさや坊」
いた、しかも変なあだ名付けてきたよ。
お父さんいるのに来たよこの人、みてよお父さんの顔渋くなってるよ。
「おじさん、いつもお仕事ご苦労様です肩でも揉みましょうか」
「……! よろしく頼むよ」
おっお父さーん!
いい笑顔だよ、なんて顔してるのさ!
チョロすぎですか貴方!
さっきまでの表情どこいった!?
「さやちゃん、ご飯食べちゃいなさい。れっくん待ってるわよ」
「お構いなく」
「……いただきます。うん美味しい流石ママだなぁ」
「やぁねえ、目が死にながら褒めても何も出ないわよ」
「紗香、早く食べちゃいなさい。そうそう烈斗君もうちょっと左」
親父ー!チョロすぎではないですかー!
我が家のスペースにれっくんが侵食して決めますよ!
このままじゃ私の居場所が食われてしまう……!
「よし行くか紗香」
「うん、レリゴーれっくん」
私は棒読みで適当にそう言った。
「テンション低くないか紗香、もっと上げてけ!暗いと幸せが逃げるぞ」
「れっくん不良なのに、なんか不良っぽくないよね」
「……おう?どこがだ?」
無自覚ですかそうですか。かっこいいけど性格が素直すぎるからなぁ悪い奴らに騙されないか心配だよ。
「紗香着いたぞ、危なくなったらすぐ助け呼べよ」
「わかった、すぐ連絡する」
こういうとこなんだよなぁ不良っぽくないの。
「おはよう!……グェッ!」
教室に入ると、嫌な雰囲気が漂ってた。
私は入った瞬間気持ち悪くなった。
「どうしたのこれ……山田」
「あれ見ろよ、中南さんと未来ちゃんが喧嘩してんだ」
教室の真ん中をみると、中心の2人を囲むように人のサークルができていた。
「……なに?言いたいことがあるならハッキリいいなよ!」
「じゃあ、言ってあげる!目障りだよ!なんで私がいつも悪いみたいになってるの!?私は全然悪くないじゃん!悪いのはみんな私以外でしょ!貴方はなに?川崎くんのことが好きなら彼に直接言えばいいじゃない!」
いつものホンワカした雰囲気が無くなり代わりに獣のようなオーラをまとった未来ちゃんと
「何?なに?私が悪いって言うの?確かに私は悪かった。けどこんなとこで私の好きな人ばらして言い訳がないじゃない!思ってたこと全部言ってスッキリ出来て良かったわね!けど貴方今の顔みてみたら?野獣よ野獣!」
溶けたと思った氷が、再び凍った中南さんがいた。
「2人ともどうしたの!?……」
……やばかった。2人には禍々しいオーラが取り付いていた。このままだと魔物化してしまう。
どこ!?魔道具はどこにあるの!?早く見つけないと彼女たちが人ではなくなってしまう!……チャーム!どこだどこに着けた!?あった!あの鞄!ピンク色のチャームだ!
力いっぱい握ってチャームを壊す。あとは未来ちゃんの方。いったいなにが魔道具なんだ……
「……はぁ?それあなたも自分の顔みたら?これ貴方が普段やってる事だけど?自分の醜い顔を晒しながら赤子のように喚いて人に迷惑をかけてるの自分では理解してないのかなぁ?」
「……とうとう正体をあらわしたわね性悪女!いつもニコニコニコニコ!あんたの化けの皮が剥がれた瞬間ね!いい気味だわ!」
うそでしょなんでヒートアップしてるの!?
中南さんの方は壊したのに……。
紗香は考えた。けれどもう何もかも遅かった。ヒートアップした結果、2人の負の感情は魔道具に影響を与えた。
パリーン!
教室中に何かが割れた音が響く。
そして黒いドロドロとしたものが2人の感情と同調して2人にまとわりつく。
何もかも気づくのが遅かった。
あの時、チャームを買うのを止めていたら!
私は後悔した、けれど後悔している暇はない!
「みんな逃げて!ここから離れて!」
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛サヤカチャンどうしてコワイカオヲするの?ワタシのミカたジャナイノ?」
「シノノメサン、マッテ、わたしをヒトリにしないで」
「ごめん、未来ちゃん中南さん。2人を魔物にしちゃってごめんなさい!待ってて今助けるから!」