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魔法自治!~JCと不良の愛と正義の魔道士物語~  作者: あぱろー。
第1話 初めまして!東雲紗香です!
3/272

1-3

「ぎゃー! 髪が燃えてる!」


クラスに入った瞬間、彼女の髪飾りは蛍光灯に当てられ爆発した。

チリチリになる彼女の頭。


うっわー、またやっちゃった。

折角作ったのにまた失敗かーでも綺麗に整ってたんだけどなぁ……。


何がいけなかったんだろうと考える。

百均のピン留め? それとも私の彼女への思い?

うん、多分後者だ。

仕方ない、自業自得だけどこのまま火傷を負って傷跡が残ると私の気分が悪い。……それにちょっと可哀想だし。


「星野さん! 動かないで!」


ポケットに入っていたグミを投げつけ、指を銃の形にセットする。

そしてそこから魔力を打ち込みグミを巨大化させる。


「ちょっえっ!? やばい! 押しつぶされ!?」


「動かないでって言ったでしょ! 大丈夫! 助けてあげるから!」


そしてさらにそこに魔力を送り個体のグミを固まる前の液体に戻す。

すると彼女の真上で液体に戻ったグミは彼女にそのまま降り注ぎ『バシャッ』と大きな音を立ててその場を濡らした。

彼女の髪の炎は消え、彼女の命の危険は消え去った。


「……一件落着」

「ちょっと! 東雲! 助けて! 私の彼氏が!」


髪飾りブスの事件があったのにまた次の厄介事が。

私を見るなり大きな声で叫んだ彼女。

彼女は確か、私の作った香水を勝手に奪った女。

そして、掃除を私に押し付けて彼氏とデートに行った迷惑女じゃありませんか。


「グゴギャアアアアア!!!」


凄い化け物に追われてるんですが……あぁ勝手に香水使ったんだな自業自得か。


「あんたの香水使ったら彼氏が化け物に変わっちゃったの! どうにかしてよ! というか何したのよ!」


何したのって言われても、香水を使った貴方が悪いと思うの私。

だってそれ、魔道具だし。

それも私が作った負の魔道具いわゆる失敗作。

効果は付けた者の愛している者が匂いを嗅ぐと化け物に変わるって効果。

勝手に使って困ってるのは自業自得だと思うの。


「ちょっと! 何とかしてよ! 何でもするから!」


彼女は私の体にすり寄って泣きついてきた。

都合のいい女、私にそんなこと言っちゃって。

まったく、駄目な人。

彼女を冷たい目で見て少し感考える。

でも、別に彼は被害者ですしね……私のせいでも一応ありますしね。

それに、何でもしてくれるんでしょう? なら仕方ありませんね。


「これは、貴方がやった事だから責任は貴方がとってください」

「でも! 私じゃ彼を助けられない!」

「助けられなくない! 何でもするって言ったよね。なら私に付き合って」

「本当! 助けてくれるのね!」

「ええ、彼氏に罪はありません。これからすること少々キツイけど愛してる貴方ならできるよね?」

「もちろんよ、当たり前じゃない!」


彼女は嬉しそうに私に言ってきた。


……それを聞いて、安心しました。

この方法で助けるのは私には出来ないので。


私は鞄からキャンディを取り出し、彼女に近寄った。


「へっ!? 何するの!? ちょっと近寄らないで!」


私が近づくなり、怯えた表情で言ってきた彼女。


「何企んでるのよ! 真顔でもの持って近づいてくるなんて怖いんだけど!」

「無理だよ、何でもするんでしょ? 彼氏助けたくないの?」

「っ!!!」


包み紙からキャンディを取りだし、無理やり彼女の口に突っ込む。

彼女を掴み、そのまま化け物になりかけた彼氏さんの唇に押し付けた。

するとその衝撃で男の口の中にキャンディが転がり、舌の上で溶けた。

そうすると彼は謎の光に包まれた。


「良かった良かったこれで戻ったよ」

「ちっとも良くないわよ! あんな化け物とキスさせて! 舌までねじ込まれたわ!」


助けてあげたのに、私に向かって激怒する彼女。

あっ、ちょっとそれ以上は言わない方が。


「……誰が化け物だって?」


後ろから元に戻った彼氏が怖い顔で話しかけてきた。


「えええっ!何で!?」


振り向いて、目を飛び出しながら驚く彼女。

凄い慌てている。


「戻ってるっていったじゃん。いいシチュエーションだったよ。お姫様のキスで呪いにかけられた王子様は元に戻りましたとさ。ドラマティックだね!」


ぱちぱちと拍手して彼女に笑いかける私。


「どこがよ!」


そのせいで彼女にすごい顔でキレられた。

おー怖い怖い。

ぶさいくなお姫様は性格までぶさいくときた。

せっかく元に戻してあげたのに……でもまぁ


「おい!お前の香水のせいでこうなったんだぞ! なのに化け物だって!? ざけんじゃねえ! てめぇの顔鏡でよく見ろ!」

「ふざけてんのはあんたよ! あんたとキスした時変な匂いしたし! トラウマよトラウマ! 責任取って私と別れなさいよ!」


彼女達の愛は元に戻りませんでした、ちゃんちゃん。

急にファンタジー色が強くなった私の日常。

仕方ないよね、だって私が魔道士なんだもん。


……ゆるふわな毎日を送るなんて嘘です。

本当はこれ、女子中学生魔道士の馬鹿みたいなファンタジー的日常です。

髪飾りだって百均のヘアピンにちょちょいと魔力を込めて指を鳴らせば完成です。

その際に負の感情を込めるとあんな風に負の魔道具が出来てしまいます、反省反省。


私は5年前の夏、大切な師匠を失い彼女から使命を授かりました。

けれどこんな風にミスをしまくるポンコツ魔道士になってしまいました。

ごめんなさい師匠、貴方から授かった力をこんな風に使ってしまって。


それにしても今日は私が関わった人が大変な目にあっている気が……もしかして次もなにかあるかも。

えーいこうなったらなんでもこーい!


ズドン!


そう思ったら、高等部の方から何やらやばい音が聞こえた。

黒い煙を上げて校舎が壊れたみたいだ。

何でも来いと言った矢先これだもん、よっしゃ私が助けに行きますか!

高等部の方だし、れっくん大丈夫だといいけど。

一難去ってまた一難、私は高等部の方へ急ぎます。バビューン!


数分前、諏訪湖高校にて。


「きゃー!海人様!こっちむいて!」

「海人様ー!踏みつけて!」

「海人様愛してる!」


黄色い歓声に包まれて弁当を食らう二人の男子高校生。歓声は一人の男子だけに注がれている。飯を食らっているのに、人のことを考えずに騒ぐなんてどうかしている。ともう一人の男は思った。


「うるせーぞ!ブス共!ギャーギャー騒ぐな!お前らそんなに騒ぎてぇなら工事現場にでもいってろ!」

「ちっ!うるさいわよ!葛城!」

「そうよ!海人様の人気を下げる不届き者!」

「うるせー!てめえら全員ここから消えろ!目障りなんだよ!」


ぶつくさと文句をいいながら女子たちは去っていった。

『文句言う前に自分の行動をかえりみろっての!』心の中で彼は叫んだ。


そんな中に帰らない女が1人。


「……お前も消えろよ、委員長」


眼鏡をかけキッチリとしたポニーテール、ほかの女達とは違う赤いオーラ。


「消えるわけにはいかないわ、貴方たち今日の昼休みの水やり当番でしょ」

「げっ、忘れてた。海人やっといてくれ」

「ええー!やだよ委員長お願い!あとでお礼するからさ烈斗が!」


手を前に出してごめんのポーズそして満面のスマイルこれで落ちない女子はいないと青森海人は勝手に思っている。


「……貴方、全ての女子が貴方の言いなりなるなんて思わない事ね」

「駄目だ僕の営業スマイルが効かない!」


海人はショックを受けながら烈斗に助けを求める。

彼はため息をついて仕方ないと思いながら適当に彼女をあしらう。


「……わりぃな委員長、やっといてくれや後で俺の弁当わけるからよ」


その言葉をきいて委員長は、一時停止した。

顔をほんのり赤く染め、また動き出した。


「わ……わわわかったわ、その代わり後で報酬は貰うわ!」


委員長は思いっきり走って目の前からいなくなった。

それをみて海斗はうわぁこいつも好きな男の前じゃ乙女なんだと思った。


「絶対お前に惚れてんじゃん」


「……タイプじゃない」


冷たい一言を聞いて、慌ててフォローに入る。


「お似合いだと思うよ、真面目と不良で」


ご飯をかきこみながら、どうでもいいといった態度でそれに烈斗は答える。


「馬鹿言え、俺にだって選ぶ権利はあるっての」

「全女子を敵に回したぞお前。……いや待てそうかそういうことか。納得だわ!」


どうでもよさそうに言っていた烈斗に冷たい目線を送った彼は急に納得してうんうんとうなづいた。


「何納得してんだお前……」

「いや、れっくんにはピッタリな可愛い子がいるなって思っただけさ」


にやりと笑って彼と仲のいい女の子の呼び方で彼を呼ぶ。

そのせいで彼は顔を赤く染めて米を飛ばしながら怒ってきた。


「てめぇそれ、あのクソガキだろーが!おちょくってんのか!?」

「照れるなよ、好きな子に意地悪する男子小学生と同じだろ」

「うるせー!てめえの脳内花畑か!」


ぎゃーぎゃー言い争って取っ組み合いになる二人の男子達。

そんな彼らを見つめる少女が一人。


「……なんだ、私は無理なんだ」


先程、浮かれながら仕事を終わらせに走り、完璧に全て終わらせ、もしかしたら私のことを話しているんじゃないかと淡い期待を抱き急いで戻ってきた彼女。

息を切らしながら、彼女は近くの壁に寄りかかる。

確かに彼女のことは話していた。

けれど彼女自身に興味は全くないという内容だった。

そして彼女は深く傷ついた。


「……はぁ、このお守りも効果なかったわね」


『後輩から貰った恋のお守り。後輩には悪いけど全然効果なかったわね。

……こんなもの!』


彼女が心の中で自暴自棄になった時、そのお守りは弾き飛びそこからドロドロしたものが溢れ出てきた。


それは彼女にまとわりつき、彼女の負の感情に同調した。彼女の幸せを求めるという感情が暴走し彼女は闇へと落ちていく。


そして彼女は魔物へと変貌した。


「彼が手に入らない世界なんていらない!全て壊してやる!」


そして、今に至る。


「……どうしよう、人間じゃなくなっちゃった」


私は高校へと急いで向かった。

……でも、騒ぎを起こした張本人はもはや人間ではなかった。


「コワスコワスコワシテコワス! ワタシヲキョゼツシタコノセカイヲスベテ!!」


負の感情を制御出来ず、魔物に取り込まれてしまった彼女。

人間だったときの悲しみが力になり、哀れな魔物になってしまった。


「……早く助けてあげなきゃ」


魔物になった人間は、ただただこの世界を壊すことしか考えられなくなった。

黒いエネルギー弾を放出して、とにかく撃ち込んだ。

校舎に人にこの土地に。

人を見つけては無差別に打ち込み、建物や地面をふと見れば手から魔弾を発射していた。

校舎は壊れ、地面はボロボロ。

人に当たれば人は石へと変貌した。


「嫌よ、なんで! 私は何もしてないじゃない! 石になんてなりたくない!」


「……ダマレ! オマエハワタシノメノマエデ、シアワセソウニワラッテタ! ワタシハコンナニフコウナノニ!!」


魔物は女生徒をロックオン、魔弾を彼女目掛けて発射した。


「危ない!」


思わず私の体が動いた。

目の前で人を死なせたくないという気持ちが体を動かした。

シールドを張って女生徒を助けてそのまま魔弾をはじき返す。

その魔弾はモンスターの髪を掠めた。そして彼女の髪を石化させる。


「……はっ?」


そのせいで標的が私に変わった。


「……ナンデ? ナンデ!? アタシハ、コノチカラヲゼツボウシテテニイレタ! ケドオマエハゼツボウセズチカラヲエテル! ズルイ! ズルイイイイ! ナンデナンデ!! アタシバッカリイイイ!」


「……何!? 勝手にキレないでよ! 誰だって辛いくて苦しい思いはしてるんだよ! 見てよここにいる人達を! 貴方に石にされて辛く苦しんでる! 苦しい思いをしてるのはあんただけじゃない! 自分が人にされて嫌なこと人にしちゃ駄目って幼稚園で習わなかった!?」


……彼女の言葉に心を刺されてつい感情的になってしまった。

そのせいで彼女の思いも膨れ上がる。


「ダマレ! ダマレ! ダマレ!!!!」


魔物が感情に任せて声を上げると地面から黒い泥が湧き上がり、それが肉体を持ち謎の生物が生まれ人々を襲い始めた。


「うわっ! なんだこれ!」


「れっくん!? 早く逃げて!」


襲われている人の声が聞こえて振り返ると、そこにはよく知った赤髪が魔物に囲まれている姿が見えた。


「紗香!? どうしてここにいんだよ!」

「いいから! 早く逃げてってば! れっくんこのままじゃ死んじゃうよ!」

「あぁ!? 俺は逃げねえ! 悪いな紗香! こいつは俺のせいで産まれたモンスターだ! 俺がケリをつける!」


そう言って彼は、素手で殴り始めた。

びっくりして私の口は顎が外れるくらい開いた。


「ちょっと! れっくん!? どういうこと!?」

「俺がこいつを振ったらキレた!いやあれは振ったのか? こいつが勝手に俺のことが好きで、俺は無理って話してるのを聞かれただけで……」

「間接的にだけどそれ間違いなく、れっくんのせいだよ!」

「だからケリつけるって言ってんじゃねーか!お前は何回も言わなきゃわかんねーポンコツか!?」

「こんなとこでおちょくらないでよ! それより危ないから逃げて!」

「あぁ!? 危なくねぇよ! お前こそ下がってろ! 死ぬぞ!」


モンスターを殴りながら私に向かって啖呵を切るれっくん。

ええーなんで素手で殴れるの。

あいつら蹴散らされてるし、親玉も目が点になっているし。


「あぁぁ!烈斗!私の愛しき人!なのに何故!なぜ私を拒絶する!」


彼女はれっくんを見て少し落ち着いたようだ。

聞こえてくる声も限りなく人間に近い。

でもまずい、このままじゃれっくんが危険だ!

彼女の問いかけに気に食わない回答をするに決まってる!

そんなことしたら、このモンスター暴走しちゃうよ!


私が焦っているといつの間にか二人の会話は始まっていた。


「委員長、別に拒絶したわけじゃねえよ、ただ俺は今……」


「何を言うか、私の事を愛してはくれないのだろう。それは拒絶と同じこと。私を愛せ私だけを見て……私と一緒になって」


「委員長、それは無理だ。俺は今……」


「あぁやはり! やはりか!」


「話聞けよ! ぶっ殺すぞ!」


「れっくんアイツにキレないで! 更にめんどくさい事になるから!」


注意しても遅かった。

れっくんの言葉を聞いた彼女は般若のような顔をして悲しみのオーラを増幅させる。

真っ黒くて少し青白いそんな覇気が私達をひるませる。


「あぁ、烈ト……アタシ以外をIしてゐるノカ? ソレがホントならアタシはカナシイ!! ナラするコトハ一つ! お前をkillし! アタシのナカで生き続けサセル!!」


やばい、本当に壊れた。


私が一瞬固まった瞬間、彼女は仰け反って力を貯め、黒い1本の光線が彼めがけて放った。

『チュドーン!』と大きな音を立て爆発する音が聞こえた。

それを聞いて彼女は良しと不敵な笑みを見せた。


がしかし、その笑みはすぐに消えた。


「……ナンデ!? ナンデオマエ二アタルンダヨ!!!」

「残念ね、当たってもいないのよ」


煙が薄くなり、彼の死体を確認しようとしたモンスターは驚いた。

殺したはずの彼は生きていた。しかも光線をくらった痕跡もない。

その痕跡があったのは、違う方向にいる女の方だった。けれど地面に黒い染み光線の跡が残っているがその女はピンピンしている。


「……少しは役に立つじゃん、このアクセ」


確かに光線はれっくんに目掛けて放たれていた。

けれど私の方に光線は向かってきた。

ポッケの中に入ってた爆発アクセサリーを光線の軌道上に投げ、花の形の部分に光線を当て軌道を変えた。

自分に当たらぬようシールドも張って。


「爆発しなかったし、あれ成功したやつだったかも……あの子に悪いことしたな」

「紗香、お前……」


……れっくん、すごく驚いてる。

そりゃそうだよね。昔からの幼馴染が自分を殺そうとしてくる魔物と同じ力をもってるんだもん。


「大丈夫だよれっくん。私が君を守るから」


彼に普段のような笑顔を見せて、私は再び魔物に攻撃を仕掛けに行く。


「おい!紗香まて!」


もう私の目の前で大切な人を失いたくないもん! 絶対絶対、れっくんを守る!


「……さぁイメージしなさい、愛に飢えた堅物モンスター! 貴方がこれから幸せになる姿を!」


「何を言うか私に幸せなどもうない!」

「ある! イメージしなよ! 南国の島で結婚式をあげる自分の姿を!ウェディングドレス着て、ケーキを切ってヤシの実をすするのもいいね!」


南国の青い空、その暑い日差しの中、コバルトブルーの海辺であげる挙式。

幸せいっぱいの花嫁と花婿。

ハイビスカスの花飾りをつけた少女から幸せのおすそ分け。


「悪くないかも……」


「でしょ! じゃあその夢を抱いて! 貴方の悲しみを消しさろう!」


「……えっちょっとあなたの格好何? そしてこの空間は!?」


私達が話している間に、見ていた風景は学校から南国へと変わっていた。

さっき話した妄想と同じ場所。

私の格好もウェディングドレスに変わり、手にはケーキナイフを持っている。


「結界だよ、でも大丈夫! ここは夢を叶える場所。そして私はここの案内人」

「なんで案内人が私と同じ格好をしてるのよ! 花嫁は私よ!」


不機嫌そうに怒る彼女。

まぁまぁ、そうヒステリックにならないでくださいな。


「そりゃあ、私案内人ですから。貴方をちゃんとした方向に導くね」


ニヤッと笑って、私は彼女に手を差し伸べる。


「こんのクソガキ!」


彼女は私の手をパンと叩いて逃亡してしまった。

……せっかく手を差し伸べたのに悲しいな、でも仕方ないかちょっと荒いけど許してね。


「逃げようとしても無駄だよ。ここは私の固有結界。さぁ、夢を叶える時間だよお姉さん」


背中を向け逃げる彼女。

花嫁姿の私は大きなケーキナイフを構え、化け物の花嫁の背後をとりそのまま刺した。


「悲しみは消してあげる、永遠なる(エターナル)幸福な終幕(ハッピーエンド)


「うわああああああああ!」


南国で散ったモンスターは、普通の日常の真面目な委員長へと戻り、石にされた人は元に戻りなにもかも全て元通り。


「これにて一件落着、めでたしめでたし」


その後元に戻った学校のベンチに腰をかけ、委員長のお姉さんを介抱しました。


「……大丈夫ですかお姉さん」

「……ええ、少し夢を見ていたみたいでもなんかスッキリしたわ」

「そうですか、なら良かった」

「ねぇ、お守り落ちてなかった?ピンクのやつ」

「いえ、何も」

「そう、ならいいわごめんなさいね」


良かった。あの人無事に助かって。

……でもごめんなさい、そのピンクのお守りはもう無いんです。

あの人のとの約束でそれを壊さなければいけないので。


「おい、紗香」


少し不機嫌そうな幼馴染が私を呼ぶ。


「れっくん……あのね!これには深い訳があってね!」


「何も言うな、送ってやる。乗れよ」


ぶっきらぼうにそれだけ言われ、私は無言で頷き彼について行く。

ブロロロとボロボロなバイクは音を立てて、赤い夕焼けの道を不良と私を乗せて走り出す。


「……」


何も喋らない無言な時間。ものすごく気まづい。不機嫌そうな幼馴染の腰に手を回し後ろに座っているので尚更きつい。


「なぁ、お前あんなこといつもやってんのか」


沈黙の中、ポツリと彼が呟いた。

私はその言葉に急いで返答する。


「うっ、うん。そうだよ」

「いつからだ」

「5年前から」

「……そうか」


私が返答した言葉に彼は暗いトーンでそう言って無言になった。


「……ごめんね」


顔を彼の背中に埋めて小さな声でそう言った。


「なんで謝んだよ、お前のやってる事は凄いことだぜ」


その言葉に思わず顔を上げた。

怒ったり、私を不気味がったり、嫌ったりしたと思ってた。

けどそんなこと無かった、その言葉に私は少し嬉しくなった。


「ただお前の親や友達に心配はかけるがな。どうせお前親にも言ってねーんだろこれ」

「うん……」


少し痛いところをつかれて後ろめたそうに呟いた。


「お前がこんな危険を侵してまでやることじゃねえって俺は思うけどよ。あるんだろそこまでやる理由がさ」


彼は振り返って優しく笑ってそう言ってきた。

私は無言でれっくんに捕まってる手をギュッと力を入れた。


「……死ぬなよ、やばいって思ったら逃げろそこに人がいてもな」

「……無理だよ、そんなこと出来ないよ」

「やれ、お前が生きてなきゃ悲しむ奴がいるだろ」

「けど! 助けないといけない人にもそういう人がいるもん!」


「……そうか、そういうやつだもんなお前マジムカつくぜ」


ちょっと、嫌だなと思ったので私は反抗し態度で答えた。


「これは私の事! れっくんには関係ないよ」


そっぽを向きながら、父親に反抗する娘のように。

そうしたら、彼は舌打ちをして私にこう言った。


「ちっ、そうかなら関係あるようにするまでだ」

「……えっ?」

「俺もお前と一緒に戦う」

「えええ!? 無理だよ! だってれっくん魔法使ったことあるの!?」

「やってみなきゃわかんねぇだろ! それに今日だって素手で殴れたんだ余裕だろ」

「そんな無茶苦茶な……」

「それによ、お前言ったよな俺を守るって」

「……えへへ、まあね言ったようん。言った」

「じゃお前は誰が守るんだって話だよ。よくヒーロー物であるけどよ。ヒーローはみんなを守るけどみんなはヒーローを助けてくれるのか?」

「確かにそうだけどそれは、フィクションの話だし」

「お前は現実にいるだろうが。黙って俺に守らせろ」

「いやぁ、気持ちは嬉しいんですけどえへへ」

「おい、照れんな、そして勘違いするな。いいかこれはヒーローに対する市民の義務だからな!? 誰か一人ヒーローを守るものがいないといけないっていう」

「……意味がわからないよ」

「とにかく!俺も戦うっていってんだ!意見反論その他色々受け付けねぇぞ!」


赤い道の下、黒い影がガタンガタンと揺れながら。凸凹コンビは帰っていく。


JC魔道士と不良のコンビは負の魔法から人々を守れるのか、がんばれ紗香!人々を悲しみから救うために!


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