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「よぉ、朝から何ぼやっとしてんだクソガキ」
意地悪にそう言いながら私の頭をぐしゃぐしゃにして目の前を歩いていく幼馴染。
ううっ、せっかくとかしたのに。
赤い髪の毛、気崩した制服、少し目つきの悪い顔。
The不良な彼は私の年上の幼馴染の葛城烈斗。
「お、は、よ! れっくん! また変な格好で学校に行くの?」
そう言ったら今度は頬っぺたを抓られた。
ううっ、私が年下だからってバカにしちゃって!
昔はこんなにいじらないで優しかったのに!ばーか!
まぁ、そんな風に思っているけどなんだかんだ言って私はこの人のこと好きなんだよなぁ。
「ぎゃー! ミミズ踏んだ!」
おっちょこいょいで、面白いからぷぷっ。
「ぷぷっ馬鹿烈斗、ぎゃーだってさ。面白すぎだろ! あはは!」
笑っていたらどこかから、彼をバカにするような声が聞こえてきた。
「んだと!ぶぁかいと!」
「うわっ、れっくん唾飛ばさないでよ!」
紺色の眼鏡をかけたイケメン。
ばかいと、と呼ばれる少年は青森海人。
れっくんと同じ高校に通っています。
いつも、れっくんをからかう変な人です。
「あっ! 紗香ちゃん! 今日も可愛いね!」
そして誰にでも可愛いという、変質者でもあります。
私には、理解出来ません。
彼は影で変態クソイケメンと呼ばれていたり、いなかったり。
私からの評価じゃないですよ、でもまぁ悪い人ではないです。
なになに? さっきのシリアスな雰囲気どこ行った? ですって?
急に学園物始まったけどどうしたですって?
いやーすいません詐欺るようなことして、これは私のゆるふわな毎日を送るハートフル日常コメディですので。
こんな普通な日常を送る私、波乱万丈なんかよりこういうゆるふわな毎日が大好きです。
えっ? そんなんじゃ、つまらない?
……まぁそうかもしれませんね。
「じゃあな、ちゃんと授業受けろよ」
「れっくんもねー、サボってちゃ駄目だよ」
二人に手を振って私は校舎に入る。
すれ違う先生におはようと挨拶しだるそうに廊下を歩く。
「おはよう、ねぇ東雲さん! 頼んだあれできてる!?」
歩いていたら、面倒臭いやつに捕まってしまった。
昨日、私に無理やり材料を買わせ、無理やり可愛いヘアアクセを作れと言ってきたワガママ女。
迷惑そうな顔を隠し笑顔で見つめる。
「……まさか作ってきてないの!? 今日彼氏とデートなのよ! どうしてくれるの!?」
何も言ってないのに、ヒステリックに騒ぐ彼女。
うわっ面倒臭い。
私の顔が引つる。
「お前なんか可愛く着飾ってもブスはブス! 努力するだけ無駄なんだよ!」
そう心の中で叫びました。
……本人に言うわけないじゃないですか、言ったら殺されますよ。
心の中でそう叫び私は鞄から綺麗なアクセサリーを手渡す。
「なんだあるんじゃない! 騒いで損した!」
騒いでる自覚あるなら、騒がないでよ。
私は貴方の召使いじゃないんだけどなぁ。
断れなかったので結局作りました。
いいんですよ別に彼女のためにそんなに時間を割いてないので。
特殊な方法でぱっぱと作れてしまうので、ちょっぴり細工はしますがね。
髪飾りをもらった彼女は嬉しそうにそれを着け、おはようおはようと皆に挨拶して教室に入る。
……まったく、笑顔だけは無邪気な顔しちゃって。
彼女を見ながらため息をついた。
するとその瞬間……
ボン!!
「ぎゃー! 髪が燃えてる!」
爆破音がして人の悲鳴が聞こえてきた。
はぁ、全然ゆるふわじゃない。
憂鬱なんですけど。
ファンタジーでシリアスな展開がお好きな皆さん朗報です。
ここから普通の少女の非日常体験の幕開けです。
あーあ、面倒くさくて私が大変な目にあうだけであんまり面白くないのになぁ……