仮
そろそろ準備しなきゃー。
重たい体に鞭を打って布団から這い出す。
これから向かう場所に行きたいなんて思う人がこの世界にいるのだろうか?
行けばお金がもらえる。
そんだけ。
それだけの価値。
私もそれだけの価値の人間ってことなのだろう。
行きたくなくても生きるために
今日も私は化粧をして香水を振りまく。
1.それでも生きたいって思う。
世界は残酷だ。
お金でしか解決できないことの方が多い。
お金がない人は死ねばいい。
そう聞こえるほど窮屈に感じる。
私は何のために頑張ってるんだろうか?
何度問いかけたって何度泣いたって死ぬまで生きるしかないのだ。
「お疲れ様です。」
地下へと進むか階段の前にいる男の人。
「クレハさんお疲れ様です。」
背の高い30代ぐらいの人。
すっかり私の名前覚えてくれたんだね。
それだけ私もココに馴染んできたってことか。
馴染みたくなんてないのにね、
階段を降りれば
ガンガンと鳴り響くBGMとタバコの匂い。
それに混ざって聞こえる女の笑い声と香水の香り。
1番聞きたくない。男の声。
「クレハさん前半行きますね、準備お願いします。」
スーツを着た男。
まだ来たばかりなのにもう出番ですか。
コクリと頷いて口の中にぶどう味のタブレットを2粒放り込む。
この味。嫌いになりそう。
カバンの中から石鹸の香りがする香水を出して振りまく。
この香り。嫌いになりそう。
深呼吸を一つ。
空気が悪くて病気になりそう。
それでも薄暗い店内に足を踏み入れれば笑顔を作って。
今日も良くできたニセモノの私。
「よろしくお願いします!クレハです!」
「おぉー!よろしく」
鼻の下伸ばして気持ち悪っ。
「可愛いねー!それ警察のコスプレ?」
「そうだよー!悪いことしたら逮捕しちゃうよ?」
気持ち悪っ。
私なに言ってんの。
「じゃ、悪いことしちゃおうかなー?」
伸びてくる手がブラジャーのしていない私の胸に触れる。
これでまた私は汚れたね。
男の膝の上に跨り。
キスをして胸を触らせお金をもらう。
ねぇ?
人間生きるためならわりと何でもできゃうんだよ。
ここまでして私は。
何がしたいのかな?
バカだから分かんないよ。
誰か教えてよ。