父の真実
アイトーンは父に対して特別な感情を抱いていなかった
あの日目の前で父を殺された時も、父を殺されたというよりも、育ててきてくれた人を殺された気持ちだった
父の教えを守っていたのもそれ以外にやることがなかったから
それなのに
それなのに
(あの人はあなたのこと本当に愛していた、だからこそ、あなたがこの世に産まれると同時に私を使って、この国のすべての自分への記憶と縁を切った、いや斬ったの)
こんなあたいなんかのためにだ
無愛想で、特に感情表現もうまくないあたいなんかのために
『アイトーン、、、』
気付くとフェンちゃんが近くに寄り添ってくれていた
でも、フェンちゃんごめんね
涙が止まらないんだ
あたいは最低だ
父さんはそんなにまでしてあたいを愛してくれたのに
あたいはなにも返せてない
返したくても、もう返せない
「ひぐっ、、、あたいは、、、最低だ」
(はぁ、、、本当あなたってつくづく、、、まぁいいわ、このままだと埒が開かないみたいだし、今日は本当に特別よ?あの人からのたったひとつの伝言を伝えるわね)
父からの伝言は、録音されたものだった
久しぶりに聞く、もうなどと聞けないと思っていた優しい父の声、それだけで涙が止まらない理由には充分だった
そして、まるで父がそばで語りかけてくれるように
眠れなかった時に絵本を読み聞かせてくれたように
父は選びながら迷いながら言葉を紡いでいた
いずれ父にはこうなることがわかっていたんだと思う
だからあの時、ソルティドッグを私に託した
そして、優しい顔のまま、息を引き取ったのだと思う
そんな父からの伝言を聞いてあたいは、、、
「、、、あたい、あたい決めたよ、父さんの自慢の娘として、ソルトファミリーを復活させる!もう二度と私みたいに後悔する人間が出ないように、国だけじゃない、この世界まるごと救ってやる!だからさ、父さんの優しさはさ、しっかりあんたの自慢の娘に伝わってるから!ゆっくり休んでよね」
最後の一粒の涙が言葉とともにソルティドッグに落ちた
優しく光を帯びていた気がした
次回、父の伝言です