東へ
フェンちゃんの乗り心地が最高すぎる
綺麗な毛並みは高級なベッドも勝てないほどふわふわで、あーっ、ちょっと寝ようっと
『アイトーン、おい、アイトーン!』
「、、、んっ、、、ふわぁぁ、よく寝た」
『我もかなり長い間生きてきたが背中で爆睡した人間は其方が初めてだよ」
「ありがとう、照れるじゃないか」
『褒めてはいないんだがな』
「ところでさ、ここどこ?」
『我は何度も聞いたが、其方は東に向かえとしか言っておらんかったぞ』
「えっまじで」
完全に寝過ぎたなぁ、これは
んっ?なんか向こうの方ざわざわしてる
「フェンちゃん、ちょっと止まって」
『承知した』
馬車が立ち往生しているが、紋章を見る限りどこかの貴族みたいだ
それを取り囲むようにそれぞれの武器を持った男達がいる
「へへへっ、こんなところで貴族様の馬車に出会えるとは、俺たちツイてますね、兄貴」
「ほんとだなぁ、しかも中には美人がいるときた、さぁ、降りてこいよ!」
はぁ、本当、賊の姿だけでもこちとらトラウマなんだよなぁ
「フェンちゃん、ちょっと待ってて」
『了解した』
「あれっ?普通ここは女ひとりに行かせるのは危ないとか言って止めるんじゃないの?」
『何をふざけたことを言っている、其方は我らが森の主、そんじゃそこらの人間共に負けるはずがなかろう』
「いや、一応対人戦は初めてなんだけど」
『はぁ、、、まぁ良い、どうしてもやばくなったら我を呼べ、まぁ、そんな機会万が一もないとは思うがな』
「それちょっと酷くない?あたいだって一応か弱い少女だよ?」
『其方の世界では、か弱い少女とは我のような神獣や魔獣ひしめく森を身体一つで統治するものなことを指すのか?』
「それは言い過ぎでしょ、ってか、あんた神獣だったの??」
『そこからか、その話は後にしよう、早く行ってこい』
「はいはい、か弱い少女が一人で行きますよーだ」
「やめなさい!私がだれかわかっているの??」
「貴族のお嬢さんってことくらいだね、さぁ、痛い目に遭いたくなきゃ早く降りて「待ちな!」誰だ!」
「あたいかい?あたいの名を知りたいかい?」
「なんだぁ、この小娘!こいつもまとめてやっちま、、、あれっ?」
一人の賊の頭が間抜けな顔をしながら落ちていく
うるさいから、ナイフを一振りしただけなんだけど、これちょっと斬れすぎでしょ
うわぁ、綺麗な断面、ってあれ、血が出てない
「あっ、あっ、兄貴!おっ、俺、何で死んでねえんだよ!」
「お前、何で首落ちてんのに喋れるんだよ!?」
「わっ、わかんねぇよ!」
あぁ、こんな感じなんだ
このナイフおかしいとは思ってたんだけど、ちょっと能力がわかってきたかも
検証のためにもう一人っと
「くそっ、こうなったら全員突っ込、、、いっ、いてぇよぉー!くっ、首から、血がとまらねぇよ!助けてくれよぉ!」
あたいが思う通りに斬れ味が変わるし、斬る部位も設定できるんだな、これ、ちと便利すぎない?
ちなみに今のは首を斬り落とさないように斬ってみたんだけど、傷口は綺麗な断面で、まるで元からその部位がなかったかのように斬れている
血管ももちろん斬ったわけで、そこから血が流れまくってるってことか、、、うわぁ、その血が首だけの男にかかりまくってる、最悪だなぁあれは
「おっ、お前ら、にににっ、にげろぉ!」
「おっと、あたいは賊が嫌いでね、逃すわけがないじゃないか」
とりあえず全員の脚を斬り落とす
斬れ味良すぎて3人に対して3秒って、やべぇね
しかも斬ってる手応えがないんだよなぁ、これ
(はぁ、今更気づいたのね)
、、、、んっ?今の声誰だ?
「あんたら、ちょっと黙って」
「無理に決まってるだろ!こいつイかれてやがる!」
「あぁ、もううっさい、お前ら全員死ね」
そういって全員の心臓をひと刺ししといた
もとから生かすつもりはなかったからね
なんか全員時間が止まったみたいな感じだね
もしかして死後硬直?早すぎない?
(持ち主が変わってやっと使われると思ったら、肉を斬ったり、果物を斬ったり、なんで、ここの持ち主の家族はこうもナイフの使用法が上品なのよ)
いや、これは聞き間違いじゃない
この声、ナイフからだ
「もしかしてあんたが喋ってる?」
(あんたって呼ばないでよ、ちゃんと名前があるんだからね!)
こいつ、ナイフの癖に図々しいな
「なら、その名前教えてよ」
(はぁ、、、今更感すごいけど、良いわ、教えてあげる。"ソルティドッグ"それが私の名前、覚えてよね?)