夜(が)明け(てた)
────お父さん、お母さん、元気ですか。
僕は多分元気です。
さっきは後先考えない行動をとってすいませんでした。
反省はしてるけど後悔はしてません。
アレだけ派手に壊された屋上の破片は上手いことマンション群の隙間に飛び散っていたように見えたので許してください。
あのバケモンもなんとかやっつけたので褒めてくれてもいいんですよ......なんちゃって。
そんなことより今はお母さんの手作りお料理が食べたい気分です────
そんなアホみたいな事を考え始めていた。
渦に呑まれてからどれほど経ったろうか。
狭い足場になんとか海天と二人で並び立つことに成功した後は、極彩色が目に痛かったからずっと瞑想────それも暫くしてからは迷走────してた。あれは途中で、昔本当にあったらしい子供への罰に似てるな、なんて思ってしまったからだ。多分。
何はともあれ、たまーに周囲を確認していたんだがそろそろ分厚かった渦の向こうにチラチラと青空が見える隙間ができ始めて、もうすぐこの修行じみた時間も終わりかな、と......青空?
ちょっと待て、ワイバーンが現れたときまだお月様爛ッ爛に輝いてたろ!?なんなら倒した時にもまだ居たろ月!?なんでお日様昇ってんの?!そりゃ海天の足も疲れてボヤきたくなろうってもんよ!途中からつり革代わりにお手手繋がれてたぞ!?......俺は不思議とそんなに疲れて無いんだけど。これもきっとドバドバ出てただろうアドレナリンと、深夜テンションのせいだと思いたい。
何にせよ、この邪魔くさい【イデア】がこの調子で何処かへ消えたら、頑張って家に帰って寝よう。もう誕生日とかそんな場合じゃないだろう、これは。
きっと腐れ縁のお隣さんも何かしら準備しててくれたとは思うが......すまんが休ませて欲しい。
その願いが通じたのか、予想通りそれからそう時間をかけずに、みるみる減っていった【イデア】が何処かへ......何処かへ(目逸らし)消えたので、これで晴れて周囲の確認が出来た。ほんとに日が昇って晴れてやがるな!けっ!
「なぁ海天サン?足大丈夫か?降りるぞ。」
「......おんぶ。もしくはだっこ。......やっぱおんぶ。」
「............はいはい......。」
まぁこのへとへとの妹さんに比べれば、少し悪いかなと思えてくるほど俺はピンピンしてるので異論は無い。想定内だよ......。それに昨夜俺を探しに来てから突然こうなったと思うと不憫だしな。
「んじゃ、ほれ行くぞ。」
「ん......。」
なんだか幼児退行していらっしゃる妹さんは、とても軽かった。
そんなこんなで海天と無事に無事な自宅に帰ってきた。
屋上は吹き飛んだが、あまりに勢いよく横へと吹き飛ばされていて、居住スペースには殆ど被害が無かったようだ。
そして疲労困憊の海天と、肉体的には元気だが精神的には疲れきった俺はそのまま寝た。爆睡だった。