大地創造
眠れない......
誕生日が楽しみで寝られないだとか、日付を跨いだ今日からは十六の身としては恥ずかしくはあるが、寝られないものは仕方ないじゃないか......!!
こうなったらいっそ朝まで徹夜してやろうかとも思ったが、恐らく今のリビングは誕生日会の為のセッティングがなされているだろうと────ついでにセッティング中に寝落ちした妹と父が転がっているだろうとも────思うと、部屋に籠るしかなくなって、それはそれで退屈だ。
眠れないまでも一応はベッドに入り、さてどうしたものかと考えていたその時。あの日に染まったままの色彩......今は闇に溶けて意識すらしていなかった【イデア】の色が目まぐるしく変わり出した。
普段は大体柔らかい暖色が薄く視界に掛かっているだけなのに、今は目に痛い極彩色となって騒いでいる。
その変化と同時に、恐ろしい人口密度を叩き出している自宅高層マンションの外も騒がしくなってきた。
気になって表に出ようとしてベッドに身を起こすと、その異変は窓からでも十分すぎるほどに目に写った。
地上二十階の一室にある我が家の俺の部屋、その抜群の見晴らしの窓から見えたのは、俺らの住む「人類最後の島」を囲む広大な海の上を、狂ったように翔ける極彩色の【イデア】だった。
俺は急いで屋上────地上へ十九階降りるより、最上階の二五階に向かう方が普通に早い────へ向かった。
こんな色をした【イデア】はこの一年見たことがなかったし、そのことに何やら嫌な予感がした。
屋上へ出ると、いつもは見えるものが見えず、いつもは見えないものだけが見えた。
即ち、ここらでは一番高い自宅マンションからなら見える筈の水平線。それが、覆い隠されて全く見えなくなる程、夥しい量の極彩色が視界を埋め尽くさんとばかりに荒れ狂っていた。
極彩色に輝く【イデア】はこの研究島の周りで目まぐるしく渦を巻いている。濃密すぎるそれが、交わり、混ざり、または離れていく。
眼下のいくつかの屋上にも、同じように登ってきた人が居る。
彼らは単純にこの光景に感動している様だが......しかし彼らとは見えている世界が違うのだ。
彼らには、あの【イデア】の美しい輝きだろうが、俺からすれば異常な風景だ。
あの日のそれとは少し違うが、あの日のようにこの風景を眺めていると、ふと頭を過ぎった話があった。
その原因について思い出そうとするも、目の前の光景に気が散ってか、中々思い出せない。
そうして暫く経つと、駆け巡る【イデア】は速度を落とし、海上に緩やかに渦を巻き始め、薄く拡がりながら海面へと降りていった。
そのまま幻想的に輝く素粒子は、それまでとは違う硬質な輝きを帯び始め......気付けば海上で、大地へと変わっていた。
しかし全ての【イデア】が変わった訳では無いようで、ごく少量の────あくまで先程までの夥しい量に比べれば少量であって、膨大な────【イデア】は鮮やかな色彩もそのままに辺りへと散った。
*主人公は眼が......(滲み出る作者の中二ぢから)
イデアぱわーです。(今作のデウスエクスマキナ)