拡張されし世界境界
ぶっちゃけ設定垂れ流し
────その日、世界が変わった
かの救世主が、【理想素】を観測した時から
そして、かの救世主はこう云った─────
─────これより見らる超常は、直に日常となる。心せよ────
あの時、世界に満ちた【イデア】はその日のうちに、正しく世界を塗り替えた。
言わば【イデア】とは、何物にも成り得る可能性を秘めた純粋なエネルギーそのもの。取り込んだ情報を、それまでの常識など全く以て無視して具現化するという、魔法じみた特性を持つ。
分かり易い例として、【アルマ】の創造を挙げよう。かの人工大地は一年という十二分に驚異的な早さで完成した......が、【アルマ】そのものは一夜にして造られたものだ。
正しくは、一年掛けて練られた「設計図という情報」と結び付いた莫大な【イデア】が、一夜にして【アルマ】へと姿を変えたのただ。
【アルマ】の面積は二十万平方km......今は沈んだオーストラリア大陸に比べ、直径にしておよそ二倍の大きさだ。それ程の面積の浮揚大陸を、机上の空論に等しかった、頭でっかちの空想島が一晩で。
因みに、一年掛けて練られた【アルマ】の概要は、
・最後の島を中心とする、二十万平方kmのドーナツ状の大地
・下層、中層、上層からなる三層構造を持つ
・三層それぞれに対海中、海面、空武装を搭載
・波の揺れを余さず動力へと変換することで、上層部には一切の揺れを伝えない機構
・頑丈極まりなく、海中成分を用いた自動修復機能を有する【イデア】素材
等々......という理想を列挙しただけのお粗末な空想。いくら【イデア】を用いるとはいえ、長い時間をかけてそれらを実現する為の理論を考え、詰めていこうとしていたまさにその時......それは起こった。
......しかしそれは、仕方の無い事だったのかも知れない。なにせ、【イデア】の観測からまだ間もない時期のことだ。
......まだ、以前の常識に囚われていた。
......まだ、舐めていた。
────【イデア】の持つ、馬鹿げた「常識」への破壊力を。
理論もクソもない、「こうなるといいな」という図々しい願望の塊。希望の性能と完成予想図だけのそれを読み取った【イデア】を介してデータは次々拡散し、月を写す海、その上にも揺蕩う莫大な【イデア】へと拡がり......
────気付けば、そこには見渡す限りの人工武装大地......【アルマ】が在った。
この後の度重なる【アルマ】自体の改良と付随施設の創造に一区切り付くまでを指して、〈大地創造の五年〉と呼ぶ。
......これは余談だが、【アルマ】の大地創造、その時点では未だ【イデア】の解析は完全とは言えず、この事件は既に確認されていた中での【イデア】の具現化限界とそれに伴う対価についてのデータを更新するいい機会ともなったが、それはそれ。この迂闊な【アルマ】創造班は上からお叱りを受けたとか。
それはさておき、これは【理想素】によって「更新」された世界で人工の浮島に生きる少年少女達の戦いの物語である────
──Data──
Shadow:
超小型携帯端末。未来型スマホ。
基本的な操作は使用者の周囲に展開されるホログラムウィンドウによって行われる為、実質本体は飾りでアクセサリー扱い。
【イデア】によって生み出される。