第六話「苦戦」
前回のあらすじ
5人での戦闘を命じられた燈真たち
しかし、結局個々で戦ってしまった
訓練2日目もやはりIEで行われた。
ただ違うのはIEのフォルムだ。
今回は1機だがとても大きく、そして畏怖の念を抱かせるような容貌をしている。
そして燈真が以前に戦ったドラゴンに少しばかり似ていた。
硬い鱗を模したであろう分厚い金属。
それらがびっしりと張り巡らされ、爪も鋭く光っていた。
魔法こそは使わないが戦闘能力は本物のドラゴンに負けを取らない強さを持っているだろう。
ただ残念な事は、ドラゴンの最大の強さとも言える再生機能だ。
それをIEで再現することはどう頑張っても、今の人類の技術では不可能であった。
「昨日言ったとおり、今日はドラゴン級のIEを使って訓練をする。こいつを5人で頑張って撃墜をしてくれ!」
宗久が今日の訓練の概要を説明を終えると、真尋が宗久に疑問をぶつけた。
「艦長!ドラゴン級の急所はどこですか?そこが分からないことには倒すことができないと思うのですが。」
真尋が言うことは最もだ。
悪魔級のような下級エクリプスは急所が体の中心のため比較的倒しやすい。
だがドラゴン級のような上級エクリプスとなるとそうはいかない。
ヤツらは体の一点が急所の場合が多い。
「ドラゴン級の急所は逆鱗か首と言われている。」
ドラゴンと一度戦ったことのある燈真は首が急所ということは分かっていた。
しかし、逆鱗が急所ということは始めて聞いた。
(ジョージのヤツ...逆鱗のことも教えておいてくれよ...)
「ただな、逆鱗と言っても個体によって場所が違ったり大きさも違ったりするから急所と言っていいかわからないラインなんだ。ドラゴンの逆鱗を剥がすとそこからドラゴンの魔力が一気に抜けて行く。エクリプスは魔力で生命機能を保っているから魔力が無くなると必然的にヤツらは死ぬことになるという訳だが、さっきも言った通り逆鱗を戦いの中探すのは困難を極める。よって一般的には首を狙うんだ。ドラゴンは脳と心臓が繋がっている限り死なない。」
宗久はパイロット5人に理解しやすいように話した。
「分かりました。ありがとうございます。艦長。」
「よし。全員発進準備!準備が出来た者から発信しろ!」
「「了解!」」
燈真たちは自身の機体に向かって走って行った。
燈真が天ノ叢雲を起動をさせて発進をしようとカタパルトデッキに向かおうとするとジョージが駆け寄って来た。
「燈真さんちょっと待ってください!」
「ん?ああジョージか。どうした?」
「実はですねぇ天ノ叢雲はパーツの生産が追いついてなくて完成しないままここに送られてきたんですよ。ですがパーツが今朝届いたので合体させるので出てくの少し待ってもらえますか?」
「そういう事なら仕方ないな。」
そう言って燈真は整備が終わるのを待っていた。
燈真が足止めを食らっている時、他のパイロット達はIEとの戦闘を始めていた。
目の前に現れたドラゴンにミライ、真尋、カルフォンが嬉々として攻撃をしにかかった。
逆鱗を狙っての戦闘は歩が悪いので首を斬るという事に満場一致した。だが、1対4となるとなかなかそうはいかなかった。
ジャックは味方支援のためにIEの右腕をライフルで撃とうとするが射線上にカルフォンが割り込んできて撃つことが出来なかった。
そのせいかIEの右腕の攻撃対象に真尋が選ばれた。
突如として振り下ろされた右腕に紙一重で避けることが出来たが大きな隙が出来てしまった。
その隙をIEが逃すはずもなく真尋は尾で弾き飛ばされてしまった。
宇宙空間なので何か物にぶつかるかスラスターをかけなければ止まれないのだが経験の浅い真尋は知識では知っていても行動に移すことが出来なかった。
「きゃあああああああああああ!」
「うぉっ!」
するとそこに先程まで縦横無尽に移動していたカルフォンが真尋と衝突した。
「あ、ありがとう。カルフォン。助かったわ。」
「助けたつもりは無いけどどういたしまして!でも僕の楽しみの邪魔をしないでよね!」
カルフォンは支離滅裂なことを言っているがそれに対して真尋は余程混乱をしていたのか性格が素に戻っていた。
一方、ミライは執拗にIEの首を狙っていた。
だが、一点集中で攻撃する型のアンスターンヴァネッツではIEの細い首を狙えないでいた。
当たったとしてもカチカチと音を立て鱗の上を滑って行ってしまっていた。
「くそっ!ちょこまかと動きやがって!」
それに対してイライラを募らせていた。
それもそうだろう。彼女は自分一人でもドラゴン級を倒せると自負していた。だが、それも叶わずしかもジャックの支援を受けているからこそ今こうしてIEに攻撃ができているのだ。
それにジャックの的確な支援がより彼女のプライドを傷つけた。
ジャックもまた四苦八苦していた。
それはビームを使えないことだ。ミライの支援にビームを使えば腕ごと消すことが出来るのだが、それによって出る被害を恐れていた。
ジャックの射線上にIEとその後にカルフォンと真尋がいるからだ。
もしも外れたらそのままカルフォンや真尋に当たりかねない。それを危惧してビームを使うことを止めて、実弾を使っているのだ。だが、IEの硬い鱗は貫くことが出来なかった。
「くそっ...ミライは何でビームを使わないんだ!」
ミライは自分の攻撃がIEに効かないことに焦っていた。
その結果ミライはアンスターンヴァネッツの能力を引き出せないでいた。
「なんで...なんで貫けないの!...これならどうよ!」
そう言ってミライはアンスターンヴァネッツの回転機構を作動させ首を貫こうとした。
だがアンスターンヴァネッツは鱗の上で空回りを続けるだけであった。
それに唖然にとられていたミライは振り上げられた右腕に気がつくことが出来なかった。そして右腕はミライに対して振り下ろされた。
唖然にとられているミライは鳴り響く警報によって現実に戻された。
警報が指し示す方向を見てみるとそこには振り上げられたIEの腕があった。
ミライが回避行動を取ろうとしたその時、IEの腕が振り下ろされた。
ジャックはIEの腕がミライへの直撃するのを避けるために援護をしようとした。
真尋とカルフォンは先程の場所から依然として動こうとしないので彼らの支援も求められず、またビームを使うことが出来なかった。
ジャックはIEの腕を狙って射撃した。それが外れると分かるや否や間髪入れずにもう1度射撃をした。
この弾は一直線にIEの腕に向かっていると思われた。
しかしそれは直撃をせずカチンと音を立てて掠っただけであった。
ジャックはIEの腕がミライにグングニールに直撃すると思った。しかしその予想は外れた。
ミライが回避行動をとっていたのもあるがジャックの最後の一撃によってIEの腕の軌道が少しばかりズレていた。
それらの要因によりミライへの直撃は避けられた。
だが、ボディへの直撃を避けられただけであった。
IEの腕はグングニールの腕を根こそぎ持っていってしまった。
ジャックはすかさずミライのもとへ駆けつけIEから距離をとった。
「ミライ!無事か!」
「ええ。お陰様で助かったわ。と言ってもこの損傷具合では戦闘の続行は難しいわね...あとは真尋やカルフォンに頼むしかないわね。」
「それは難しいかもしれないな。あいつらはさっきからあそこから動こうとしないんだ。ん?」
ジャックは真尋達がいる場所へ目をやった。しかしそこには真尋もカルフォンも居なくなっていた。
IEの方へ目をやろうとすると目線を移動させると真尋とカルフォンがIEのもとへ移動をしている姿が見えた。
ただ違うのはカルフォンがただ闇雲に向かっていなかった。
真尋がIEのもとへ着くとアステリディアレージで首へ向かって牽制を始めた。
しかしアステリディアレージは鎌状ではなく槍状であった。
その戦闘に乱入するかと思われたカルフォンは真尋の左斜め後ろで時を待つようにじっとしていた。
真尋の攻撃を嫌がったIEは左手を挙げて真尋へ攻撃をしようとするがそれは叶わなかった。
IEの腕には何重にもワイヤーが巻かれていた。
ぎしぎしと鈍い音を立てている。そしてIEがワイヤーを引きちぎろうとした時、IEの腕が鈍い音を立てて真っ二つに引き裂かれた。
その時に出来た隙を逃すまいとアステリディアレージを鎌状にしてIEの首を狙った。
「貰ったぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
誰もが真尋がIEの首を取ると思ったその時、IEが真尋の方を向き突如として咆哮を浴びせた。
それにより真尋は吹き飛ばされてしまった。
そして運悪く真尋の近くにいたカルフォンもまた吹き飛ばされてしまった。
「くっ...こんなヤツに勝てるのか...?」
誰もが諦めかけたその時、一閃の光が駆け抜けた。
それと同時にIEの首も弾け飛んでいった。
「「なっ...」」
そこにいた全員が驚愕した。
先程まで自分たちが苦戦していたIEを一撃で終わらせてしまったその機体に。
初めて見るその機体に。
「ふぅ...みんな無事か?」
「その声...燈真か...?」
「何言ってるんだよ。天ノ叢雲に乗れるのは俺以外いないだろ?」
「それが天ノ叢雲だと言うの?格納庫の時とはまるで違うじゃない...」
ジャックとミライ2人とも驚愕していた。
それもそのはずだ。天ノ叢雲は今までのフォルムでは無いのだから。
更新に少し間が空いてしまって申し訳ない。
まだ隠されたギミック等がありますのでそれが公開し終わったら1度機体説明を兼ねてイラスト付きの回を設けようかと思っています(イラストを描く時間があればですが)。
またご意見等がございましたら気軽にどうぞ。