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シードラゴンとマーメイド

『魔神建立魔物保育園』は赤ちゃん朝組、離乳期昼組、昼幼年期と夜行性魔族の園生を合わせた夜組、年長さんと総称される月組、星組と子供達に合わせて組分けされている。

ただ別園建設の準備期間の為の臨時組である海組の存在は実はあまり関係者以外には知らされていない。



マーメイド種のマメコちゃんとドラゴン種のシドミちゃんは仲良しさん。


今日も保育園の特別施設大型子供プールでプカプカ浮き輪ベッドで浮いている。ガラス張りのプール底は深層エリアでクラーケンのケンちゃんや巨大カニ種のカニコウランくん達が手だのハサミだの触手だのを2人に振ってくる。


海に舞い降りたドラゴンが環境進化したといわれるシードラゴン。そのお姫様がシドミちゃんだ。


「退屈だね。」「ウン、タイクツダネ。」

「つまんないね。」「ウン、ツマンナイネ。」


マーメイド族の実は、こちらもお姫様のマメコちゃん。マメコちゃんは基本的には、ツドミちゃんのイチノコブン。



海は魔族にとっても人族にとってもこの世界では、まだまだフロンティアだ。

海の魔王第5魔王も人族各国水軍海軍も海賊的な気質、気分からぬけ切れていない。

裏ではちゃっかり手を握る部分もあったりして、航海術より足の引っ張り合いの様相だった。

海はまだまだ魔族にとっても人族にとっても果てしなく広かった。


新魔神政権に移行しても、その大部分乃戦力が海の魔物だった第5魔王は地上軍に大援軍を出せる訳でもなかったし、どこか蚊帳の外。

しかし、第5魔王に時勢は味方した。人族軍でも水軍海軍の扱いは同じようなありさまだった。


『魔神建立魔物保育園』設立時、海の魔王領にも魔族執行部より設立趣旨、魔都在住領民への園児募集案内が発送された。しかし、第5魔王師団はナニガドコデ勘違いされたのか、人質要求だと勘違い、各部族の王族、部族長の族子王女クラスの子供達を園児として差し出そうとする。それを不合格の旨通知すると第五魔王領側の使者が集団自害する大事件となった。


それに輪をかけて、この勘違いは実は今でも続いており、どうにも噛み合わず執行部や園長先生の困りゴトノヒトツともなっていた。

そんなわけで海組は全費用向こう持ちの豪華寮を完備する魔都幼児リゾート風といった保育園の趣旨とかけ離れた勘違い組となってしまっていた。



海組担任のセイレーン歌子先生は、今にも落ちそうになる涙をこらえて探し回っていた。歌子先生がちょっと目を離した隙にツドミちゃんとマメコちゃんの姿が見えなくなってしまった。


「ツドミちゃん~!マメコちゃん~!どこなの~でてきて~。」


セイレーン歌子先生の切ない呼び声に特別園舎海組関係者全てが涙した。あまりの切なさにその日、魔力量の薄い寮の従業員2名と用務員さんの三名が医務室に担ぎ込まれたと伝わる。




トンテンカン、トンテンカン。

ツドミちゃんとマメコちゃんは本園舎に続く長い鉄製の非常用螺旋階段を登っている。やっと階段の終わりが見えてきたようだ。

「長かったね~。」「ナガカッタネ~。」

ふたりは笑顔で言った。


特別海組施設は『魔神建立魔物保育園』の本園舎の地下に造られている水性施設である。一部分を除いて全て海水でみたされている。魔物保育園は魔神と5族魔王に委託管理されるダンジョンのマスターの共同で設計、施工でたてられた魔族最新技術建造物である。地下の海組園舎は海の魔王ダンジョンのマスターによってほぼダンジョン一階層部分を占有される形でつくられた。地上部分の本園舎とは本来、魔導エレベーターで行き来する。しかしエレベーターには数式ロックがあり、暗証番号を打ち込まなければ動かない。ふたりはロックを外せないのでこの長い連絡階段を登っている。



「これで遊ぼう~!」「アソボウ!」

ふたりが見つけた木の積み木を手にとり投げる。

ツドミちゃんは三角でマメコちゃんは長方形だ。

カランコロン、ガコーン。

「転がった~。」「コロガッタ!」

ツドミちゃんもマメコちゃんも大笑いだ。

積み木で遊ぶのは二人とも始めてだ。積み木は水中では遊べない。だから、遊び方も知らなかった。

何度も投げてみる。キャハキャハ二人は遊ぶ。


「お嬢さん方、積み木を投げてはいけないよ。」

ドラキュラ種のハーブ君は物音で夜組でお昼寝から目覚め気づいて誰もいないはずの月組教室をのぞいてみた。するとふたりがなんども積み木を投げている。

積み木を拾い上げて、ひとさし指を顔の前で振りながら近づく。タキシードである。

「積み木は積んで遊ぶもの。レディはそんなことしてはだめ。綺麗なお顔にふさわしくない。」

マントをひるがえした。


「なんだ、この子。」「ナンダコノコ。」

「これはごあいさつがおくれた。わがはいは、ほこりたかいドラキュラ種の8代ペニンシルン家ハーブともうすものです。レディどうぞよろしく。」


お歌の練習を終えた月組園児達がホールから教室に帰ってくると見知らぬ三人が積み木を積んで遊んでいた。



園長先生はツドミちゃんとマメコちゃんを連れて魔導エレベーターで月組舎へ降りていく。

エレベーターのドアが開くと、セイレーン先生が泣きべそで二人を抱き締めた。

セイレーン先生の声を聞いていると園長先生も涙がでそうになった。

そのうちツドミちゃんとマメコちゃんも泣き出した。


見ると月組の他の先生方は手で耳をふさいでいる。


園長先生はセイレーン先生の歌のようなお説教を聞きながらいろいろの問題にため息をついた。

園長先生は切なくってたまらくなって手で耳をふさいだ。


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