「違う」って言って。
「愛してる」
そんな言葉聞きたくなかった。
私は貴方のことが好きだった。
だから、だからこそ、
今まで想いも告げずにここまできた。
なのに、貴方は酔った拍子に、それを言った。
私が必死に「言っちゃダメ」だって、
そうやって、何度も繰り返し言い聞かせてきたのに、
貴方はその苦労を知らないまま、簡単に言葉を発した。
貴方には奥さんがいる。
それに、5歳と3歳の娘さんもいる。
奥さんに似て、娘さんも可愛い。
そして、貴方はカッコいい。
私にとっては理想の家族。
それが貴方の家族とは全く関係ない私の自慢。
だからこそ、我慢できた。
奥さんが私よりも見た目も性格もブスだったら、
私が貴方を掻っ攫っていた。奪っていたはず。
だけど、それをしなかったのは、
奥さんが私なんかとは比べようがない人だったから。
なのに、貴方は私に言った。
「お前が好きだ」 「愛してる」って……。
私のどこを見て、そう思ったのだろうか?
血迷ったのだろうか?寝ぼけていたのだろうか?
それとも、本気だったのだろうか……?
いや、それはない。 それはないと思う。
思いたい。 だから、「嘘だ」って言って欲しい。
だけど、貴方の目は変わらずに私のほうを見ている。
酔っていたなら、寝言で言って欲しかった。
私の目を見て、真剣な顔をして言わないで欲しかった。
明日から、仕事場でどういう風に、
貴方に接したらいいのかわからない。
「好きだ」って想いを誰にも言ったことなんてなかったのに。
なのに、私の現実を貴方は崩した。
今まで我慢してたのに。ずっと耐えてきたのに。
貴方の結婚式に出席したときだって、
笑顔で「おめでとう」って言ったのに。
なのに貴方は、そんな私の想いなんて気にせずに言った。
私は……私は……どうすればいいの?
私の好きな人には奥さんがいて、子供もいて、
私のことをどうやら本気で好きみたい……。
私は一体、どうすればいいの?
このまま不倫をしろっていうの?
だけど、あんなに優しい貴方の奥さんを裏切れない。
私が今まで我慢してきたような想いを、
奥さんにもさせるつもり? いや、それは無理。
だったら、私は……どうすれば……いいの?
貴方への気持ちに嘘はない。
だけど、私は今から嘘を言うよ?
「ごめんね」「それだけは受け取れないや」
一粒、涙があふれた。
それは貴方への怒りでもなく、
奥さんへの妬みでも嫉妬でもなく、
単に、私の不甲斐に対する涙だった。
もう少し、うまくこの想いを告げられたら。
誰も傷つかずにこの話をまとめられていたら……。
どんなに楽だったろうか?
どれほど泣かずに済んだだろうか?
ありがとね?
嘘はついてしまったけど、
やっぱり私は貴方が好きだよ……。