質疑応答
とある丘の上。そこに、ぽつりぽつりと二つの影がありました。
「あなたはだあれ?」一方の影が尋ねます。すると、もう一方の影はこう答えました。
「私は白いバラさ。」
そう。少女の視界に映っていたのは白いバラでした。花弁の色は少しくすみ、茎には力のない、そんな年老いた白いバラでした。
白いバラは、もう一方の影に尋ね返します。「そういうあなたは、だれなんだい?」
「私は、可愛い可愛い女の子よ。」影は答えました。
白いバラは何故か黙りこくってしまいましたが、少女は続けます。
「ねえねえ白いバラ。あなたに訊きたいことがあるの。いいかしら?」
ねえねえ、ねえねえ。少女は元気に、白いバラに話しかけます。白いバラは答えました。
「いいわよ。でも最近体調が悪いから、少しだけね。」
はあい、と少女は答えました。丘を訪れたそよ風が、二人をそっと撫でてゆきます。
「ねえねえ、白いバラ。誰も私に触れてくれないの。何故なのかしら?」
少女の問いに、白いバラは答えました。
「それはね、あなたに棘があるからよ。」
そんなことはないわ、と少女は答えました。
「私は美しいもの。あなたみたいなバラなんかと一緒にしないでちょうだい。」
ひゅう、と風が吹き、二人の体を少しだけ揺らしました。
ねえ、と少女がまた、白いバラに尋ねました。
「なんで風は、私たちを揺らすのかしら?」
白いバラはまた答えました。
「それはね、風が私たちに触れたいと思っているからよ。」
びゅう、と返事をしたかのようなタイミングで風が再び吹きました。
少し強めに丘を駆け抜けたそれは、バラの花弁を舞わせました。
花弁が宙へ飛ばされます。一枚、二枚、はらりはらりと。
白と赤の綺麗な風が、二人の体をまた、揺らしました。
ねえねえ、と少女がまたまた、白いバラに尋ねました。
「なんで、赤い花弁も舞っていたの?白いバラは、白い花弁しかないでしょう?」
白いバラは答えました。
「それはね、あなたの花弁が赤いからよ」
そのとき初めて、少女は自分が赤いバラだったことに気づいたのでした。
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