第1章 妾を誰と心得るっ!
「無礼者! こちらの方を誰と心得る! タケトリ皇国ミツキ・チトセ・ナヨタケ・サカキ・輝夜・月皇女様であらせられますぞ! 頭が高い! ひかえよっ!!」
妾に向かって「お前ちっちゃいなー。ほんとに士官学校生? 見たことないんだけど。基礎学校生じゃないの?」と愚弄してきた男たちに、アキタが牙を向いた。
妾のことになるとアキタは過保護じゃ。
確かに妾は、小さいと言われるのは嫌いじゃがの。入学したてなのじゃし、あんまり目立ちたくないから大人しくしておこうと思っていたのに、アキタのせいでパァじゃ。
第一、大抵の者は妾より背が高いから「頭が高い」とは、無茶ぶりもいいところなんじゃ。
なんせ妾は12歳にもなって、まだ140cmしかないのじゃからの。
成人の平均身長200cmの世の中で、この小ささはどういうことじゃ。なぜ妾の身長はちっとも伸びんのじゃ。18歳の成人までの6年で、あと60センチ伸びるか不安になってくるのじゃ。この2年、ちっとも伸びとる気がせんのじゃが!
どういう遺伝子設計になっておるのか見たいのに、成人するまで解析するのは厳禁ときたものじゃ!
「す、すみません」
「申し訳ありませんっ!」
4人の男たちの内2人は、すぐさま謝罪し跪いた。かたかたと震えておる。
しかし、妾をからかった軽そうな男は「えぇっ! ちょっと聞いただけじゃん。お前だってそう思っただろ?」と、隣に立つばかでかい男に向かって相槌を求めておった。
ばかでかい男はアキタの発言に呆気にとられて突っ立っておったようだが、ギロリとアキタの絶対零度の視線を向けられて、慌てて軽そうな男の腕を取り、「馬鹿。今のはお前が悪い」と諌めて、共に跪いた。
しかし、一番でかい男は跪いても妾よりでかかった・・・・・・。
でかい男と視線が合ったが、男のほうが若干目線が上だった。
さすがに妾がいかに小さいといっても、跪かせれば妾より大抵の者の目線は下になるんじゃが、でか男はでかすぎた。
でか男も驚いたのだろう。まじまじと妾を見下ろして、ぽつりと呟いた。
「・・・確かに小さい」
――ぷちんっ。
妾だって、わかっておる。妾は確かに小さい。
だからって改めて言うことかの!?
「ひれ伏せ! この愚民どもっ!!」
妾は、妾は、妾は!!
小さいけど、小さくないー!
そなたがでかすぎるのが問題なのじゃーー!
妾と下僕その1その2の出会いは、こんなふうに最悪だった。
この後、在学中に妾に向かって「小さい」という単語が使われなかったことや、妾に話しかけるとき皆が跪いておったのを鑑みると、やはり、このときのこやつらが無礼極まりないかわかるというものじゃ。
後に聞いたことじゃが、このときの妾は相当な威圧を放ち、4人だけでなく、同じ棟にいるもの全てがひれ伏しておったという事実無根の噂が流れておったらしい。
まったく、大げさな。妾の軽い叱責くらいで、そんなこと起こるわけなかろうに。暇人どもが、でたらめを言いをって。下々の噂というのは尾ひれ背びれ胸びれつくから困ったものじゃ。
>>>ミツキ・チトセ・ナヨタケ・サカキ・輝夜・月皇女伝記より抜粋<<<
ミツキ・チトセ・ナヨタケ・サカキ・輝夜・月皇女、月皇国第一士官学校に入学す。同日、無礼を働いた者に罰を与える。何人たりも頭を上げること適わず。咎人、学生一同ひれ伏して許しを請い、怒りが静まるのを待つ。類まれな力の片鱗を臣民は垣間見、ここに忠誠を誓う。
>>>記録官:秋田・ミムロ・インベ・アキタ<<<
※初投稿です。勢いだけで書いてしまいました
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※今後も本作品を宜しくお願いします。