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龍と獅子と猫の物語  作者: Neight
第1章 ウェスタリア王国
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第1話 勇者②

《side:璃音》


連れてこられた“計測の間”という部屋は先ほどの天井が高い部屋(如何やら塔の最上階だったらしい)を出た先の城っぽい建物の地下だった。



「これが能力を測る魔法具ですわ」



王女様が扇で指した先…部屋の中央には直径30センチほどの丸い球体の透明な水晶だった。


説明によると、体力、魔力、属性などが水晶の表面に浮かんでくるらしい。


それぞれF-、F、F+…ss-、ss、ss+、sssの計25段階で表示される。


一般的な人の全能力値の平均はE。


騎士の体力系の能力値の平均はD、騎士隊長はC、近衛兵はB、近衛騎士隊長だとA。


魔力系能力値も同じで、魔導士はD、魔導士隊長はC、宮廷魔導士はB、宮廷魔導師隊長はA。


能力値の平均がAから上のは滅多にいないらしくいままで合計16人…現在は4人のみ。


そういう人達は、1人でドラゴン(いるんだ…)を倒すぐらい凄いらしい。


そもそもこの世界のドラゴンがどれぐらい強いのか分からないから何とも言えないのだけど。


属性の方は基本的に火、水、風、土、雷、と光、闇の7属性。


それぞれ属性にも下級クラスと上級クラスがあり、火⇒炎、水⇒雨、風⇒嵐、土⇒地、雷⇒稲妻、光⇒閃光、闇⇒暗闇。


多くの人が火、水、風、土、雷の5属性に当てはまる。


複数の属性を持っている人や、上級クラス、5属性に属さないような人は本当になかなかいなくて、そういう人が大抵能力値の平均がAを越しているらしい。


因みに闇は人間には(・・・・)1人もいないとか。


…もしかしたら悪魔とか、魔王がいるのかもしれない。


「勇者ですか?」って言ってくるぐらいだしね。



『魔法…だと…!?』


『ま…魔法っ…!』



兄さんと澪羽の目がキラキラしている。


魔力があったら魔法が使えるかもしれないしね。


…実は僕も使ってみたかったりする。


マンガやアニメの世界しかないから使いたい!



『あ、でも…もし“闇”属性だったら…まずくない…?』


『私達あっちから来たから…』


『確かに…俺達の所にはいる可能性あるもんな…』



誰かが闇だったら逃走しかないか。


そんな事を考えていると…一瞬だけ離れた所で壁に寄りかかっていた若干豪華な服を着た人と目が合った…気がした。



「では…そこの貴方から触れなさい」



王女様が扇で僕を指す。


僕は「わかりました」と答え、水晶に近づき…そっと触れた。


全員の視線が集中する中、水晶は迷うかのように赤青緑黄紫に光り…



パリィィィィイン



亀裂が走り割れた。



『あれ、ルー兄って、実は怪力?』


『ち、違うよ!? 僕は決して怪力じゃ…』


『また“さいえんす★ぱうぁー”で筋力強化したんじゃないか?』


『僕は別に…というかまたって何!? またって!!』



…僕が普段弄られてる兄さんと珍しく立場が逆転して動揺している頃、フード集団は別の意味で動揺していた。



「測定器が割れた…?」


「そんな筈は…先ほど点検したときは正常に…」


「では何故…!」



フード集団が信じられないと割れた水晶を凝視している。


そんなにまずかったのかな…? 割るのって…


いや、僕は割ってないから!



「他には?」


「あの測定器は国内最高峰の職人が作ったもので、今まで使用してきましたが…割れた事は皆無で…」



王女様が少し目を吊り上げながら問いかけると、フード集団の中から責任者らしき老人が青い顔をしながら返事をした。



「そう…測定は後日にしますわ。 …ヴァルハート、何処にいるんですの?」



詰まらなさそうにため息をついて、誰かを呼び寄せる。



「姉上、此処にいますが」



そう返事をしたのは、離れた所の壁に寄りかかっている彼だった。


あの人って王子様だったのか…王女様と全然似てないような。


王女様より少し赤みがかかった金髪に、空色の瞳を持っている。


王女様みたいな釣り目がちな目ではなく…女顔だね、うん。


ただ、まとっている空気はその辺にいる騎士なんかよりも…



「貴方いつも影薄いですわよ? 心臓に悪いですわ」


「…申し訳ありません」



この王女様はどうやら影が薄いと思っているらしい。


…実際は王子様は意図的に気配を消しているんだけど。



「…まあ、良いですわ。 ヴァルハート、彼らを部屋に案内してくださる?


 父上には謁見は明日と伝えますわ」


「分かりました」



王子様はちらりと僕達を見ると、ではこちらへ…と踵を返す。


僕達も「では、失礼します」とお辞儀をして“測定の間”を出て後につく。


階段を上がり迷路の様な廊下を進んでいく。


僕は道を覚えられるけれど、兄さんと澪羽は迷子気質に方向音痴だから…部屋から出ない方が良いかもしれないね。


なんて事を考えている内に、如何やら目的地についたらしい。


細かい装飾が施された木の扉の奥には…広い部屋に宝石が散りばめられたローテーブル、ソファーなどの豪華な家具があった。


まさかここまで豪華な部屋に通されるとは思わなかったけれど、王宮らしいから当たり前だったりするのかな。


兄さんと澪羽も驚きを隠せないらしく、きょろきょろしている。



「この部屋には此処よりは狭いが、3つ部屋がつながっているから、1人1部屋ずつ使うと良い」



扉を閉めると王子様はその様子を見て苦笑した。


とりあえず、自己紹介したいからソファーに座ってと促されて僕達は座る。



「私はヴァルハート・レイ・ウェスタリア。


 一応第二王子だが、王位継承権は無いから私は所詮お飾りに過ぎない。 様付けしなくて良いし堅苦しいのも無しだ。 気が疲れるだけだからな」


…お、王子らしくない王子だね。


ある意味良かったかもしれない。 王女様みたいな人といると肩凝りそうだし。



「俺は桜城 劉夜。 趣味は料理とかその他諸々」


「僕は璃音。 趣味は実験、研究だよ」


「私は澪羽です! えーと…お手伝いと楽器…かな?」



料理かーとか実験なーとか頷いていたけれど…澪羽の時に若干頬を赤らめていた…


兄さんは気がついていないようだけど…僕は誤魔化せないよ…?



『ヴァーちゃんって呼ぼうかな…』


『ば、ばーちゃん…』


『いや、ヴァルさんの方が良いかもしれないよ?』


『な…某殺虫剤…!? お願いだから…璃音も澪羽も口に出すなよ…?』


『それぐらいわかってるよ。 僕達が弄るのは兄さんだけだから…ね?』


『そうそう! 安心して?』


『そうそう良かった…って、弄るなー!?』


「どうかしたのか? リューヤ?」 


「いや…な…なんでもない…」



突然凹みだした兄さんを不思議そうに見ているヴァルさん。


聞こえない人からしてみれば、うぁぁ…とか言いながら突然落ち込むとか唯の変な人だよね~。



「まあ、兄さんの事はほっといて…何か話があるんじゃないの?」


「あ…あぁ」



ヴァルさんは唖然としながら兄さんがまた澪羽に弄られて今度は頭を抱えだしたのを眺めて…慌ててこちらを振り返り、表情を真剣なものにする。


澪羽と兄さんも雰囲気が変わったことに気がつき、一旦休戦(?)して息を呑む。


ヴァルさんは僕達を見回すと…



「リューヤ、リオン、ミウ…いいか? この国にいてはいけない。 …逃げろ」



眉間に皺を寄せて、切羽詰まった様子でそう言った。

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