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龍と獅子と猫の物語  作者: Neight
第2章 サウスノール商業都市国
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第8話 石蛇⑥

《side:リカ》


…んもうっ!


ひーくんってばず~っとカリカリしてるんだから。


やだやだ、帰ったら料理の中にカルシウム混ぜ込まなきゃ!



「…集まった様だな。では作戦を言うので良く聞いて欲しい」



…あら?始まった様ね。


と言っても、かなり大まかなものだったのだけどね。


余り細かく決めると、「お前何様だ!」とか言って自分勝手な行動を起こす人が出てくるもの。


訓練された集団や常に一緒の仲間(パーティー)はともかく…その場限りの寄せ集め(アライアンス)なんて特にね。


作戦はまず、相手の感知外からの遠隔攻撃でバジリスクの目を狙う。


目潰しして、邪眼を使えなくさせるのね。


次に比較的柔らかい尾の付根を狙うの。


バジリスクに尾再生能力は無いし、バランス感覚を失わせたり、攻撃手段を減らす為ね。


その後はひたすら火力で押し切る戦法(ぶきでギッタギタ)かしら。


この戦法がベストね…といっても、これしか方法は無いのだけど。


でも、それはコチラが複数で相手が一の時しか成功しない方法よ?


というか、相手は気が立っていて警戒心MAXだからどれだけ隠密行動をした所で直ぐに気付かれるわ?


結果的には無駄死にが増えるだけね。


だから、私達が速攻で倒しちゃえば、商王の屋敷に入れて、死人も出なくて良いじゃない!


ふっ…我ながら良い事を思い付いたわ。


と、冗談は此処までにしておいて…



「璃っくん、ほら目立って来てね」



私が意味ありげに口の端っこを上げると、璃っくんは意味を察してくれたのか、一拍空いて目を細めた。



「…了解。要約すると、『僕達が殲滅するから出て来るな』って言えば良いんだよね?」



さっすが璃っくん!


察しが良くてお母さん助かるわ。



「…ちょっと待て。あんまり目立つとめんどくさくならないか?」



…男なら気にしないの。


目立った方が楽しいじゃないの!


全く心配性ねぇ、劉くんってば。



「…こいつら敵だー!!」



あらら~私、表情に出てたみたいで、頭抱えてしゃがみ込んじゃったわ。


劉くんは察しが良すぎるだけに、苦労症ね。


「父さんは味方だ…よ、な…………」



ひーくんに縋った劉くん。


でも残念。ひーくんも表情からして…味方じゃなさそうよ?



「すまないね。ボクは劉夜の味方になれなさそうだよ」


「……。そういえば、家の教訓が"愉しいなら犠牲が遭っても全て好"だったな…。もうやだこの家」



劉くんは溜息を吐いて頭を抱え込んじゃったわ。


偶に、ヴァルがいれば…とか、痛み分けが…とかが聞こえてくるわね。


あらら~今更じゃないの。



「…俺はな、名前を盛大に売ったら、天使とか神が襲撃してこないかが心配なんだ」



…あら?ソッチを気にしていたの?


てっきり注目浴びるのがめんどくさいのだと思っていたわ?



「だったら、とっくの昔に殺されてるよ。ボク達が行動している事に気付いてない訳が無いだろう?アレースがいた時点でね」


「…それもそうか」



納得した様で引き下がる劉くん。


よしっ、璃っくん頼むわよ?


肩を軽くポンッと叩くとサムズアップを返してきた。



―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―


《side:璃音》


母さんからバトンタッチした僕だよ。


正直、倒すのは僕達三人だけで良いんだよね。


父さん達は今回参加しない予定。


参加したら「世界最強ランクが手伝ったんだから勝って当たり前」ってなって折角のチャンスがパーになり、目立っただけになるからね。


父さん達のカードは別に見せても良いみたいだけど、今見せると僕達から注目が外れるからだとか。


…そういう訳で父さん達は参加しないんだけど、決死の覚悟で挑もうとしている人の目には、僕達(こども)の練習台に使わせる様にしか見えないよね。


事実、そうだから否定できないけれど。


しかも、「適当に頑張る」程度の意気込みの集団(ぼくたち)


…なんて事を知ったら、また別の失望に陥るだろうね。



っと、閑話休題(はなしをもどすよ?)



さて、どうやって目立とうかなぁ…。


ただ、余り言うと、ムキになって自分から突っ込んで行く人が出てきそうだから、程々にしないといけないんだけど。


うーん…僕達の事を印象付けつつ、巻き込ませない方法、ねぇ。


………そうだ!良い事思い付いた。


亜空間から袋を取り出し、鞄にいれておいて、っと。


後はさっきの隊長に話し掛けて巻き込んじゃえば…



「すみません」


「何だ、聞きたい事でもあるのか?俺が答えられる範囲なら返答出来るぞ」



…という訳で、隊長さんに声をかける。


彼は愛想の良い顔で振り返ってきた。


おぉっ…さっきもそうだけど、彼、人相良いよね~。



「…それとも止めておくか?今ならまだ間に合うからな」



僕達が初心者なんだろうと思ったのか、何処か心配そうに聞いてくる。


まぁ、リーダーの兄さんがFランクなんだし…全員が同じぐらいだと思ってるんだろうね。


それに、初心者がSSランクのバジリスクに突撃とか普通なら自殺行為でただの無駄死に以外何でも無いし。



「…何も、君達の様な若者が生き急ぐ事もないぞ?若い頃は大物に挑みたい気持ちは分からなくもないが…」


「いいえ、僕達は参加します。忠告有難うございます」


「…そうか」


「で、一つお話があるのですが…」



少し強調しながら言うと、それまで緊張で静まり返っていた為に、僕の声が結構通ったらしい。


辺り一帯の人が僕の言動に注目しているのを肌で感じ…


…よし、良いかな。



「賭けをしませんか?」


「…はい?」



この余りにも場違いな発言で、聞いていた人は興味を持つ筈。


特に、今回のバジリスクで一攫千金を狙っている奴らはね。


多分、今此処にいる人々は"何かを守る為"か"一攫千金"が理由の大半だと思うんだよね。


中には"スリルを楽しむ"人や"己の力量を試す"人もいそうだけど…此処まで酷い死地に自分を追い込む人はそんなに人数いない筈。


だから、そう考えると…多分人数的には"一攫千金"狙っている人が多いんじゃないかな?


この商業都市、自衛団がいるみたいだけど、如何見てもその人数よりも冒険者の方が多い。


それに、商業都市だし、お金持ちが一杯いるだろうから…必然的に報酬が高くなる。


彼らは自分で自分を守る術がないのだから、お金で雇うしかないからね。


相手はSS級のバジリスク10体だし。


そうじゃなかったら、こんな人数集まらないと思うんだ。


人間、大金を目の前にしたら…目が眩むんだよ。


それ以外の人も、こんな絶望的な状況だから、現実逃避したい人の方が多いだろうしね。


"賭け" なんて楽しそうな単語に反応しない筈がない。



「さて…皆さん!僕と賭けをしてみませんか~?」



やや大袈裟なそぶりで手を叩き、僕に注目を集める様にする。


…これで殆どの人の注目を集めれたかな?


よし、次次っと。



「今回、討伐対象はバジリスク…しかも、普段はお目見えする事が出来ない様なSS級10匹…皆さんの心情はさぞかし不安に駆られている事でしょう…。


 っと、そこで僕からの提案!僕達のパーティーから3人が奴らと対峙し…どちらが勝つか賭けをしませんか?」



此処まで一息に言い切って様子をみる。



(…おい、あいつ何言ってるんだ!?)


(3人ごときが10匹のバジリスクに勝てる訳がないわよねー)


(そうそう…って、あいつ、リーダーのギルドランクがFの所じゃね?)


(けっ!馬鹿だな。一瞬で死ぬんじゃねぇか?)


(若気の至りだな)



批難多いね。


ま、そうだとは思ったけど。


…というか、既にFランクっていうのが広まってるんだ?


流石冒険者、情報収集力(ぬすみぎき)は凄いね。



「あ、言い忘れる所でした。僕は科学者、1人は料理人、もう一人は歌姫で全員ギルドランクはF。因みに先程ギルドに入ったばかりです」


(((((あ、アホだ!!)))))


(ちょっと待て、誰が前衛だ…!?)


(まぁ、どれも前衛後衛の話以前の問題だな…)


(その前に、そんな職業ってあったか?冒険者に)


(ない…はず?)


(あそこの隊長の表情を見る限り…驚いてはいるが疑惑的ではないな)


(んじゃ、本当の事か?)


(みたいね…)


(あ、ありえん…)



ヤバイ、反応が面白すぎるよ…!



「選択は二択です。倍率はどちらに賭けても20倍とさせて頂きます。勿論ちゃんと支払えるだけの硬貨は所持していますので御安心を」



僕が鞄から硬貨が入った袋を取り出し、中の白金貨を数枚取り出して見せ、袋を軽く振る。


勿論、中身も全部本物だから金属同士が当たり、ジャラジャラ音がした。


…と言っても、前にヴァルに見せて貰った白金貨を創造魔法で複製しただけだけど。


本当に創造魔法様々だよ。


それを見た人々は、驚愕を含んだ表情で息を飲んだ。


…まぁ、普通目の前に一枚1000万の価値がある白金貨なんて出されたら、ビビるよね。



(白金貨!?は、初めて見た…)


(あいつ…世間知らずの貴族なんじゃねぇか?)


(そうに違いない!っしゃ!儲けた!)


(私は勿論バジリスクに賭けるよ)


(俺も同じく)



最初の内は困惑した雰囲気だったけど、徐々に馬鹿にした雰囲気になった。


強制では無いのだけど、殆どのパーティーが賭けに参加してくれた。


ま、彼等にとって当たり前過ぎるから、悩むまでもないのだろうけれど。


それに、同じ倍率にした事が更に拍車を掛けたのか、僕達にかける人が圧倒的に少ない。


…でも、いない訳ではないんだよね。


その人達は何れも…玄人っぽい気配を持っていた。


顔覚えて置こうかな。いつか役に立つかもしれないし。


その中には、隊長さんもいるし、さっきの色男もいつの間にか戻ってきて僕達側に大金を…色男?


…此処で遭ったが1日目、殺っても…良いよね?


…っと、いけないいけない!こんな事で力使ってたら駄目だった。


勝手に記入される特殊な紙を創造魔法で創り出し、賭けた人にカードを当ててもらい、IDと名前、金額を記録に残しておく。


で、その紙と白金貨が入った袋を母さんに渡して…と。



「これらは僕の仲間に渡しておきます。もし、仮に僕達が負けたら彼女から貰って下さいね」


(おい、アイツ勝つ気満々?)


(も、もったいない。うう…止めてくれないかな)


(っは?何が?)


(…イケメンだもん。あんな彼氏欲しいな…)


(((……そこかよ)))


「……。では、挑むメンバーを紹介します澪羽、兄さんー」


「おう!」


「はーい!」


(((あ、アカン!!)))


(え?何が?)


(((あの子!!もったいない!!)))


(…結局同じじゃない…)



…今何か考えた奴…後で僕の元に来なよ?


遠慮しないで…ね?



「では、締め切ります。くれぐれも僕達が負けるまで手出しはしないで下さいね?この賭けは無かった事になりますから」



僕は口角を上げた。

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