表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
龍と獅子と猫の物語  作者: Neight
第2章 サウスノール商業都市国
71/77

第8話 石蛇⑤

《side:聖》


「父さん、バジリスクってどんな奴だ?ゲームとかと同じと解釈しても良いのか?」



ボク達は町に逃げる人達の流れを逆らう様に進んでいく。


中にはボク達と同じ様に外に向かって歩を進めている人もいるが…いずれにせよ、双方とも表情は悪い。


うん、劉夜の言葉を借りる様だけど、ボク達は"浮いてる"ね、本当に。


それにしても…バジリスクねぇ…



「大まかに言うと…そうだね、その認識で合ってるよ。邪視という石化効果の技を持っていたかな?


 後はデカイ割に素早い身体能力と砂漠という利点を生かした攻撃と移動だろう。


 本来ならAランク程度なんだがね…今は繁殖期と合致している。


 どの魔物にも共通する事だが、気が立っているから、通常以上に警戒心や身体能力が高く、更には強い固体が出現し易いし、各地から集まったりしたのだろう」


「やっぱり石化はあるのか…。どう対処したら良いかな…」



劉夜はそれっきり考え込んでしまった。


まぁ、一番厄介なのは石化だからね。


それさえ対処出来れば後は何とかなるだろう。


いくらランク上では下でも石化は効く事があるだろうからね。


ボクや焔、水簾には効かないけれど、まだ力を取り戻しつつある子供達には効いてしまうだろうし、リカとポチも対処法は知ってるけれど、万が一の事も考えておかなくてはね。



「…そういえばルー兄って何してるの?」



澪羽の言葉に振り向く。


璃音は何か小さい物をいじっている様だった。



「うん?…あぁ、僕達が付けてるカラコンあるよね。それに機能を付け加えれないかなって」


「機能、ですか?」


「うん、僕の眼鏡のと、今回必要そうな石化耐性」


「璃音、簡単に言ってるが…創造魔法にも限度があるぞ?」



そう、劉夜が言う様に、創造魔法は一見便利で万能な魔法にしか見えない。


想像力が力になるのだから、呪文、魔法陣、触媒等が必要なく、正直言って魔法名もなくて良いからね。


魔導士にとって、一番致命的な瞬間になる詠唱時間がなくて良いのは特に大きいだろう。


だが、極めるとなると、それだけでは足らない。


創造魔法は言わば"材料を適当に組合せた既製品"と言える。


だから、威力は操作出来るが、あくまである程度にしか過ぎない。


考え無しに使うと、現象発生地点を間違えたり、加減を間違えたり…冗談抜きで最悪世界を滅ぼしかねないからね。


その補助となるのが"知識"なのだよ。


"既製品"に己の"知識"…オリジナルのパーツを組み込ませる事によって、初めて真価が発揮される。


創造魔法は科学と魔法の融合と考えた方が良いだろうね。


だから、こちらの世界では発展しない魔法とも言える。


科学という概念自体が存在せず、魔法が全てだと思い込んでいるのだから……。


だけど、この子達はそうじゃない。


恐らくこちらで生を受け、向こうに行ったとしても同じだろうね。


ボクには出来過ぎた子達だよ。


全く…誰に似たんだろうね…。


…あ、ジーク様とシルファ様とレーファ様の生まれ変わりだったね。


すっかり忘れていたよ。



「そうだけど、あっちの科学とこっちの魔法を組合せれば、大抵の事は再現可能だよ」


「そうなのか?…何そのご都合主義」


「同感だよ…。僕が思うに、古代魔法に物質や生物を石化にする魔法があるんだけど、その概念を反対に考え…」



璃音が何かを言いながら手を動かす。


その間足はやや速歩き気味だったのだが、ペースはそのままに何かをしている。


器用だなぁ。良くそんな事が出来るね。


ボク達がジ=マムードの出入口の門に着く頃には完成した様で、複製して配ってくれた。


さて、ボクも試しに……お?


視界的には何も変化無い様にみえるが、勝手に生命感知をして、魔力や気力が一般人より明らかに上の人だけを表示するらしい。


他にも色々な機能があって、全てオート作動、又は頭の中で考えると、脳波…微弱な電流を拾って操作する事が出来る様だ。


…いくら眼鏡でとはいっても、こんなのが向こうにいた時点である程度完成してたって…正直、流石科学バカ(オーバーテクノロジー)だと思ったよ。



今だに逃げ惑う人が奔走している中、門には門番らしき人はいない。


逃げたのか、砂漠へ向かったのか…。


前者だったら、呆れるが。


砂漠に向かって歩を進めると、門を出て直ぐに人だかりがあった。


恰好からして冒険者の集まりだろうね。


さて、ボク達も…



「おい、そこのお前ら」


「…はい、俺達の事ッスか?」



赤毛の青年に声をかけられた。


程良く引き締まった身体と、髪と対色の深い緑色の隻眼、斜め上に尖った耳が印象的だ。


ただでさえ長身で目立つというのに、この辺では見かけない背中に斜めにかけられた黒い鞘の太刀と、腰に下げた3本の脇差のせいで、余計に存在感を放っている。


機動も重視しているのか鎧は着ていない。


物語の中の主人公として有り得そうな、そんな見た目。



「そうだ。参加するのなら、隊長の所にカード見せに行けよ?作戦練るらしいからな」



「んじゃ、俺は仲間呼びに行くから」とボク達の脇を通り過ぎ……



『全身黒尽くめの糸目男を捜してるんだが…知らないか?』



ボクに念話で問い掛けてきた。


一瞬だったが、ボクの心を見透かす様に一瞥してきた。



『…さぁね、一々人の顔を覚えたりしないものでね』



はぐらかしたは良いが、口調からして…確信しているだろうから、何言っても意味ないだろうけど。


それに、ボクはまだ…



『…まぁ良いか。それらしき人物を見つけたら伝えといてくれ。「後少しで準備が整う」と主が言っていたとね』



……!



『ああ、分かったよ。伝えておこう』



そういうと彼は澪羽に近づき一言耳元で呟いてから片手を上げて立ち去った。


…あ、しまった。突然の事で澪羽に男を近づけさせてしまったよ…。



「み、澪羽…お前あいつに何言われたんだ…!?」


「そ、そう!何言われたんですか!」


「…うん。澪羽教えてくれないかい?ほら」


「…ええっ!?」



お、おい!澪羽が怯えているよ!?そ、そこの3人止めなs…



ギロッ ×3



ハイ…スミマセンデシタ…



「…え、えーっと、『俺さ、"鷹の爪団"のリーダーなんだ。後でアジトに来ないか?』って」



(((((……ぶっ殺す)))))



僕達の心が1つになった瞬間だった。



(トウガラシ盗賊団って所には突っ込まないのじゃな…)



そんな事よりも重要なんだよ、内容が。



「…あらあら殺気だっちゃって~そんな事は後で幾らでも出来るでしょう?ほらさっさと隊長さんに見せてバジリスク狩りまくるわよ?」



あ、そうだった。思いっ切り忘れていたよ…。


それが目的だったよね、確か…


一旦頭を切り替える事にしよう。うん、それが良い。


取り敢えず、ボク等はその隊長に声をかけに向かう。


探すまでもなく、人集りの中心部に立っていた。


逞しい筋肉が勇ましい、斧を担いだ屈強な戦士がいた。


あくまで普通基準でだがね。



「あの、すいません。俺達バジリスクを討伐しに来たんですが…」


「そうか。ではカードを魔力流さずに見せてくれ。…ああ、お前達がパーティ組んでいるのならリーダーだけで良い」



…ボクやリカのは色々と拙いし、印象付ける為にも敢えて低い方が良いから…劉夜か璃音が行った方がい良いだろうね。


劉夜に目で合図する。


意図を読み取った劉夜は隊長に向き直るとカードを見せた。



「Fランクの料理人!?…そんな職業在ったのか…?…まぁ良い。お前達は一応前線に行って貰うが、死なない様に気をつけろよ…?」



「…剣持ってるから使えるのだろうが、果たして料理人を前線に送って良いのだろうか…?」と首を傾げながら、此方を可哀相なものを見る様な目で見られているけど…我慢だ。


今はプライドとか気にしている場合じゃない…!


全ては商王の屋敷内にいるアイツに会う為なんだから…


…って、全てアイツが原因じゃないか!!



「ひーくん最近カリカリしてない?ニボシと牛乳欠かさず食べてる?」


「…忘れてた」



そういえば、こっちに来てから食べてないね。


1ヶ月弱…か。


…そうか、食べるの忘れてたからイライラするのか。


後で売ってる店を探さなくちゃね。


そんな事を考えながら、ボク達は前線に行く人々が集まっている所に向かったのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ