第8話 石蛇④
サブタイを度々変えてしまってすみません…^^;
《no side》
漆黒の上空には黄金の星が瞬き、金色の装飾が施された美しい白銀の城が聳え立つ。
そんな何処かに存在するとある空間にて、円形テーブルを三つの人影が囲んでいた。
余程深刻な事を考えているのか、紅茶を啜る彼らの眉間には皺が刻まれている。
誰一人口を開かない為、この場には重々しい空気が流れていた。
暫く三人とも黙り込んでいたが、やがてその中の黒色が口を開く。
「……暇だ」
左右に座っている金色と白色が同感、と頷く。
…訂正。
彼らはやる事が無くて考え事をしているだけだった。
「だねー。ほんっっ…とうに暇だよ」
「ですね。布石も相手にばれない程度に配置しましたし…嫌味な程に」
「やる事と言ったら景色変えぐらいだよ」と独言を漏らした白色は椅子に凭れ掛かり、腕を後頭部に回しながら空を仰ぎ見る。
この空間は彼らによって何千、何万回も様変わりしてきたのである。
最終的に今の景色に落ち着いたのだが、元々センスなど全く無い彼らにとって此処まで辿り着くのは至難の道程だった。
だが、これといってやる事が無い彼らは、それに没頭する事ぐらいしか暇を潰す方法は無かったのである。
それもそのはず、彼らはこの空間に千年近く引きk
「…何か言いましたか?世界意思様」
…閉じ篭っていたのだ。
彼らはある意味追われる立場なので、容易に行動を起せないのである。
金色は溜息を吐きながら最早恒例になりつつある水晶を引っ張り出し、軽く手を翳す。
すると水晶は輝き始め…外世界の景色を映し出した。
初めに銀色と白金色の幼児らしき二つの人影が映し出された後、直ぐに霞み、今度は白色と金色の少年が映し出される。
暫く様々な景色が浮かんでは消えていたが、とある景色で金色の手は止まった。
「………これは」
「ん、どうしたんだい?」
空をぼんやりと見つめていた白色は、金色の声に反応して水晶に顔を向ける。
そこにはデカデカと"ギルド"と書かれた建物に入って行こうとする八つの後姿が映し出されていた。
「お、ギルドに入るんだ。珍しいねー、時間枠が合うなんて、さ」
「ですね。こちらの空間は時間感覚が曖昧ですから、意図的に合わせない状態では非常に珍しいです」
彼らはボーッと眺めていたが、ギルドの店員が説明を始めた時、ほぼ同時に顔を合わせた。
「……暇だな」
「ふふっ、暇だね」
「クスクス…暇ですね」
さっきまでの空気は何だったのか、いつもの様に不敵な笑みを浮かべる白色。
二人も例外ではないらしく、金色の口は弧を描き、黒色はほんの僅かではあるが目を細めていた。
「布石敷くのにも飽きましたし…」
「…そうだな。だが…良いタイミングで」
「見つけたよね、丁度良い暇潰しを、さ?」
「…このままの力では先が見えている…何よりも、彼らに合わないだろう」
「そうそう、この力はあくまで僕達のオリジナルだから、合わせてあげないとね~」
「…ただ、力を与えるだけではないがな」
「ええ。それに、布石にもなり、ダミーにもなり…何よりも良い反応が見れそうですから」
「一石三鳥だね」
自称快楽主義者の三人。
本来の目的は単なる建前で"面白そうだから"行動するらしい。
流石、ドSで地獄耳な利己s
「……消されたいの?」
…自称快楽主義者達である。
口元に手を当てて微笑していた金色は、黒色のティーカップが空になっているのに気づき、ポットを傾けて注ぐ。
「…あのさ、兄さん。ずーっと気になってたんだけど…」
「…何だ?」
「それ何杯目だい?」
「…億を超えてからは数えていない」
「あ、あはは…」
金色からの「何を今更な」という視線を感じつつ、白色は項垂れながら作業に取り掛かったのだった…。
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《side:璃音》
…。
……。
……………。
「これはないだろ…」
兄さんが全員の心情を代弁してくれた。
うん、とてもじゃないけどこれは酷い。
ステータスは大体予想した通りなんだけど、属性とクラス…なんなのさ…。
「料理人に科学者に歌姫…それに魔王と勇者ね…。これ、まともなのアルぐらいじゃない?」
言えてるよ、母さん…。
ポチ以外ふざけてるとしか言えない気がする。
特に僕達。
魔王と勇者が親なのに、どれも冒険する様な職業じゃない気がするよ?
というか、クラスだけ見たら凄まじくバランスの悪いメンバーになるよね、僕達。
…それは置いておくとして、
「父さん達のステータス異常だよ…」
そう、おかしいよね?この数値。
だって僕達2段階封印解除したのに、天と地程の差があるって…。
「いや、別に異常ではないよ?これでも本来の数十分の一なんだがね…」
「はあっ!?」
「ボク、"魔王はこれぐらいじゃね?"っていう数値まで抑えてるんだよ。だから逆に…劉夜達のステータスの低さに驚いてるんだ。いくら封印が後三つあるといっても低すぎるから」
「そうなのか…じゃあ、この…属性と称号は…」
「…ボクからはノーコメで」
「さいですか」
ツッコミたい所なんだけど…止めといた方が僕の為にも良さそうだね…。
まぁ、いつか分かるだろうし。
「……」
「ん?どうしたのポチ」
「…いです」
「え?」
「…おかしいです、僕の数値上がってます!というか、何なのですかこのクラスとスキルと称号は!?」
…内容がかなり変わっていたらしい。
どうやら双剣士⇒双剣聖騎士に変わっていたり、【三神の○○】っていうのが増えてるらしい。
三神って…アレだよね?
もしかして加護(笑)を受けたからステータス上がったり双剣"聖"騎士になったのかな?
「ねぇねぇ、ルー兄」
「ん?どうしたんだい、澪羽」
「【カリスマ】って…取得条件は何なの?」
「…僕に聞かれても」
「ああ、それは大人数に指導した事がある人が付きますよ。だから僕や姫様、ヒジリ様についてるんです」
なるほどね。
確かにそれも気になったんだけど…だけどさ。
「父さんの【魅了】って…何?」
「それも…ノーコメで」
「さいですか」
遠い目をして乾いた笑いをもらす父さん。
もしかして、これが父さんの悩みという例の…
あ、完全にトリップだね。
置いとこう。
流石に公共の場で弄るのはよくないだろうからね。
「お主ら、今回の目的を忘れておらんか…?」
「「「「「「…あ」」」」」」
「そんな事だろうと思ったッスよ…。
良いッスか?今回はギルドに登録して、適当にランクが高いクエストをまとめてこなして名声を上げ、商王の屋敷に入って四神の一人に会うのが目的ッスからね?」
水簾が眉間に皺を寄せて腰に手を当て、頬を膨らませて言い聞かせる様に言ってくる。
…幼稚園児の先生みたい。
僕が水簾に生暖かい眼差しを向けたその時、事件は起こった。
「だ、誰か石化解除出来る奴はいないか!?」
突然、ギルドの扉がバンッ!!と開き、慌てた様子で駆け込んできた一人の冒険者らしき男。
すぐさま魔術士らしきローブの人が「私が!」と杖を掴んで男について行った。
ギルド内は人が駆け、怒号が飛び交い、騒然となる。
…え、何が起きたの?
「うーん…これはもしかすると」
「そうねぇ、もしかするとだわ」
「…いやいやいや、二人で完結されてもこっちにはさっぱりなんだが」
そうそう、こっちに来てから1ヶ月、しかもいきなり城暮らしの超温室育ちだよ?
分からないって。
「うーんとね、私の【勇者補正】が働いて、とんでもないものがきちゃったみたいなのよ」
「え…何が…?」
…ゴクリ、と咽が鳴る。
母さんは掲示板前まですたすたと歩き…先程大量に張り出された紙の1枚を引っ手繰る様に剥がすと、僕達が囲んでいたテーブルの真ん中にバッ!と叩き付けた。
「ギルドのAランクが20人集まっても太刀打ちできないと言われるSSランク級の体長50メートル越えの超巨大石蛇…いや、石蜥蜴?
…その名もバジリスクちゃん。それも…10匹出現みたいよ?」
辺りは騒がしいのに、その音と母さんの声ははっきりと聞こえた。
…確かにそんなものが着たら騒ぎになるだろうね。
でも、取り敢えず言いたい事があるよ?
母さん、バジリスクに"ちゃん"をつけるのはどうかと思うよ?
後、母さんの【勇者補正】に巻き込まれた人、ごめんね?
ギルド内にいる人は戦いの、もしくは逃げる準備をしている中、僕達八人はひと時の間、空間から切り離された様に(色々な意味で)唖然としていたのだった…。