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龍と獅子と猫の物語  作者: Neight
第1章 ウェスタリア王国
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第7話 改革⑯

《side:ヴァル》


あの後、私はリュウヤ達に新たな城の一部を譲渡し、その上口約を使い国の政を手伝ってもらったのだ。


…いや、半ば強制か。


…正直申し訳ないとは思ったのだが、リオン達が言っていた制度は全く知らないのだからしょうがないと言えばしょうがないのだ。


最も、そちらはヒジリ殿の方が詳しいのだが。


それは長年魔王だったキャリアがあるから、良き指導者であり、相談役となっている。


…ただ、顔をあわせる度『ミウに手を出すな』と呪詛の様に言って来るのは止めて頂きたい…。


夢にまで出てきてしまうだろう…だからと言って諦めないが。


私の国は話し合いの結果、半分議会制、半分王政という方針をとる事にした。


その分、璃音が言った政党は存在しないし、議会も1つだ。


議会の人数は20人が定員で、それぞれ各町から1名、大都市から3名住民投票で選ばれる。


王族側は議長的立場にあり、議員1名1名よりは権力があるが、あまり持たせない様にしておく。


父上の様に暴走しかねないからな…。


あの様な事態はもう起こしてはならない。


民の為にも…異世界の人の為にも…。


そして、その事を用紙にまとめ、領内全域の領主に資料を届けた。


ソレを見た各地の領主は早速準備に取り掛かったらしい。


因みに横領等を行っていた貴族は国外追放をし、開いた枠には新たに有能で信頼できる者を置いた。


制度はまず学校作ってから開始する予定なので、暫くは議会は空白だ。


その為、元大臣達に補佐をやってもらう事にしてある。


コレで多少は良くなってくれるとありがたいのだが…。


国という単位は大きい。


数年では変わらないだろうが…長い眼で見て、良い方向に改善されて行ったら…私の取った行動は無駄ではなくなるだろう。


…ああ、ついでに私の母上、兄上、姉上の事なのだが、ヒジリ殿とリオンに拷問…もとい、話し合い…?をした後、全ての権利剥奪され、容姿を変えられた後(と言っても色のみ)偏狭の田舎町に飛ばされた。


当初幽閉する予定だったのだが、そんな事に税を使わない方が良いと思い直した為だ。


偏狭なら容姿は伝わっていないだろうし、死んだ事にした為、誰も気がつかないだろう。


…噂によると、リオンが嫌がらせに異性から好意を抱かれない呪いを掛けたらしいが…本当なのだろうか?


……物思いに耽ったまま歩いていると、既に通り過ぎていたらしい。


最近気が緩んでいるな…と苦笑しつつ目的地まで回廊を戻った。


今日の私は普段滅多にしない正装をしている。


今日は…彼らが此処を出発する日だからだ。


彼らは封印された力を取り戻す為に、後3人程会わなければならない神がいる様だ。


世界は数多にあるらしいのだが…前に、この世界にその3人はいるのかと尋ねた。


その問いに対してリィアが答えるには…この世界は数多の世界の中でも天界と魔界に強く結びついていて、特別な世界であるらしいのだ。


…つまり、この世界共通の信仰神…最高神が最初に作った世界と言う事の様だ。


そして、彼らは…最高神の御子らしい。


本当に全く…運命と言うのは分からないな。


彼らが待っている部屋の扉を開く。



「待たせたな、ちょっと手土産に迷っ……ぐふっぁ!!??」



彼らが美味しいと絶賛していた紅茶とミルクを選別して持って来た。


喜んだ顔が見たいが為にだ。


だが、扉が開いた瞬間、誰かの拳が腹に刺さり、袋が破れ、宙に舞い…


……………。


私の顔にかかった。


部屋にいた者が全員固まった。



「……あ…ッス」



犯人が我に返ったらしく顔面蒼白で謝ってくる。


その必死な様子があまりにも可笑しく…



「…っくくく…ぶっ、あはははははははっ!!!」


「…ひ、酷いッス…必死で謝ってるのに笑わなくても良いじゃないッスか…」


「ははっ、そ、そっちが、悪いんじゃないか、っ」



思わず声に出して笑ってしまった。


此処まで大声で笑ったのは彼らが来て2度目。


困った顔の犯人は更に眉尻を下げる。


その顔を見た私と、皆は釣られる様にして笑った、笑い続けた。


全員で一頻り笑った後、城門に向う。



「今までありがとうな、ヴァル」


「いや、それは私のセリフだ…本当にありがとう」



代表して劉夜が私に言ってきたが、私は彼らには何もしていない。


そして私は一番近くにいた璃音にペンダントを渡す。


先端に文様が刻まれた宝石がついた物だ。



「…ん?コレは何かな」


「この国の通行手形の様なモノだ。


 この国を出る時に門番に見せると良い、通して貰える筈だ」



実際は通行手形ではないが…まぁ、良いだろう。


私からのせめてもの感謝の気持ちだからコレぐらいは渡しても問題ないし、秘密裏に大臣や国民にも了承を得たからな。



「…ヴァルハート様、すみません」


「いや、良いあくまで仮だったのだから…気にするな」



ポチが申し訳なさそうに私に低頭してくる。


…つまり、見送る側にいるのは私とサラのみだ。


私も同じ立場であったら、同じ事をしていただろう。


長年待ち続けた君主が帰ってきたのだからな…。



「じゃあ、そろそろ行かなきゃ…また会おうね!!」


「…ああっ!」



ミウが悲しそうに顔を俯かせたが、そんな表情を消して満面の笑みで町へ駆けながら手を振ってきた。


いや、ミウだけではなく、全員が振り返りながら手を振る。


私も出来る限り笑顔になりながら、手を振り続けた。



作り物の笑顔ではなく………本物の笑顔で。




~~第1章 ウェスタリア王国 fin.~~




……………。


…で終わっておけば良かったのだが、それまで隣で無言を突き通していたサラが私の耳を引っ張ってくる。



「あのね、今更なんだけど…」


「なんだろうか?」


「彼ら、眼が紫色だったでしょう?」



ああ、最後はめんどくさかったのか認識阻害を解いていたな。


もしくは忘れていたのかもしれないが。


まぁ、サラには全てを話したからばれても問題は無いし、眼の色は貴族が気にするだけで庶民はあまり気にしないから大丈夫だろう。



「ソレがどうかしたのか?」


「うーん、紫で何か引っかかるな…と思ってずっと考えていたのよね。


 そしたら、彼女以外にも紫の眼の人がいたのを忘れていたわ。


 何でこんな大事な事忘れてたのかしらー」


「…?紫はこの世界にはいないだろう」


「…私の妹が巫女だったのは知ってるわよね」


「ああ」


「じゃあ、私達にとって此処が生まれ故郷じゃなくて、魔法による事故(・・・・・・・)に遭ったというのは?」


「…は?」


「しかも、唱えた魔法はただの移転魔法だったとしたら?」


「………?」



…どういう事だ?


他にもいるかもしれない紫眼保持者。


魔法による事故(・・・・・・・)というのは普通怪我を指すだろうが…話の流れからしてソレは無いだろう。


そして、この時ふと思い出した…母上がいつもサラに漏らしていた言葉。


『…帰りたいわ、姉様。 兄様のローゼンブルグへ』


………いや、まさかな。


…いくらなんでも…ありえない、ああ、ありえない筈だ。


私の空想よ、止まれ…お願いだから…。


私はフラフラとした覚束無い足取りで帰城するのだった。



…本当に、運命は分からない。



―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―


《no side》



その頃…城では怪しい影が三つあった。


手に持っているのは双眼鏡らしき筒と…石。


石からは複数の声が聞こえてくる。


そして…



「…王子はお疲れの様ですな」


「うっうっ…ヴァル様が不憫で仕方が無い」


「ほれ、現財務大臣、また泣いておるのか。塩臭くてたまらんわい」


「現外務大臣殿…ひっく、毎度毎度ハンカチ濡らしてすまんのぉ…」


「儂のヴァル様もご立派になられた…」ずずっ


「そうじゃな。昔のヴァル様は本当に…」


「じゃから、ヴァル様には幸せになって貰わんといかん」


「…偶には良い事いうのぉ…現内政大臣殿」


「こうとなったら待っておれん、即実行じゃ!!」


「「おおぅ!!」」



ヴァルハートはこんな会話が交わされているなど、この時知る由もなかった。

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