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龍と獅子と猫の物語  作者: Neight
第1章 ウェスタリア王国
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第7話 改革⑮

《side:劉夜》


「It's made she got see tell no?」


「うん?…あぁ、これが終わるまでだな」



澪羽に尋ねられた俺は机の上の紙の山を見る。


澪羽は…じゃあよろしくねと更に山を追加した…殺す気かよ。


…え?澪羽の英語文法無視しまくってるって?


あぁ、そりゃあ謎英語だからなー。


アレを訳そうなんて思ったら思惑に嵌るぞ?


深くは考えずに…英語をそのまま棒読みに読んでみれば分かる筈だ。


助言するなら、madeだけローマ字読みか。


…あ?そっちが聞きたいんじゃない?


もしかして、何故殺伐とした空気が打って変わっている所か場所が違うって事の方なのか?



そうだな…アレは隕石が降りそそぐ…世界崩壊の危機に陥ったある日の事だった…」


「兄さん何ふざけてるの?馬鹿なの?死ぬの?…飛べば良いよ、崖から」


「死なねぇって!!?ってか、さり気なく酷い事言って無ないか!?」


「リュウ兄ってば何言ってるの?気のせいだって、ねー、ルー兄?」


「ねー」


「2人が一番信用出来ないんだよっ!!!」



ぜぇぜぇ…落ち着け、落ち着くんだ俺…。


思っていた事が口に出たのが原因なんだよな…気をつけないとまたなるかもしれないな…。


っと、前の話をしないといけなかったな。


結果的に言えば、俺達側の勝ちだ。


ある意味負けだが…。


あの後、俺達は魔法を使い、無くなった城のあった地面に降り立った。


馬鹿でかい城だった為、更地の様に…というか更地だが、そこには何も無かった。


いや、正確に言えば、呆然とした焔と水簾、辛うじて残った門前に同じく呆然として立ってるサラさんとホークさんとその他一同がいた。



「焔、何がどうなってるんだ!?」


「そ、そそそそんなに詰め寄られてもわらわも分からないのじゃよ!?」


「す、すまない…」



ヴァルが鬼の様な形相で焔に詰め寄っていた。


おおぅ…怖いな…。


焔達によると、突然地面が消えて落下したんだとか。


…ん?



「じゃあ、オッサン達はどうなったんだ?」


「あっちじゃの」



焔が指差した方を向くと、地面に倒れている人の山があった。


って事は、城だけが忽然と消えたのか。


じゃあ、国王さんもいるかもしれないな。


…まぁ、取り敢えず、サラさんに報告するか。


と言う事でサラさんの所に向ったのだが、何かあるのか円状に人だかり(と言っても全員兵士)が出来ていた。



「…どうしたんですか?」



璃音が何かおかしいと感じたのか、眉間に皺を寄せ、呆然と立っているサラさんに声を掛ける。



「あ、あれ…貴方達が…?」


「は?」



指を指す方向は人だかりの中。


俺達が来た事に気づいたのか顔を青ざめて下がる。


明らかに俺達に恐怖を抱いている表情だった。


何でそんな顔をしているのか全く分からなかったが、そこにあるモノ(・・)で嫌でも納得させられた。



「兄さんっ!!」


「…!!!澪羽見るなっ!!」


「え?……ぁっ!!?」



一番最初に見た璃音が澪羽に立ち塞がる様に移動し、嫌な予感がした俺は、声が掛けられる前に澪羽視界を塞いだ。


…のだが、隙間から見えてしまったらしく、体が小刻みに震えている。


…もっと早くに気がつけば良かった。


人だかりの中心には…頭部と胴体が離れた…死体があった。


それだけならまだ耐えれたかもしれない。


父さん達や俺達は向こうで天使を殺している。


数回なんて生易しい回数ではない、何百、何千の単位で、だ。


隠していたつもりだし、本人は一言も言わないが、偶に気配があったので見ただろうっていうのは知っている。


まぁ、俺は嘘をつくのが苦手だし、心読まれたら尚更だしな…。


だか、コレ(・・)は別だ。


そんな生易しい様なモノじゃない。


頭部と胴体だけならず、四肢全てがバラバラだ。


しかも、細切れではなく…部位が分かる大きさで。


頭に至っては恐怖の表情を刻んだまま…右頭部が砕け散り、脳が…露出していて……。


相当強いもので殴るかどうかしないと此処までいかない。


…流石にこれは…酷い。


そっと澪羽を抱きしめた。


サラさん曰く、魔法で殲滅していた頃、突然城が無くなり…目の前にコレがあったらしい。



「……コレをやったのは彼らじゃない、私が保証する」



そっとヴァルを見ると…複雑そうな表情をしていた。


そりゃあ、憎かっただろうが、一応長年見知った顔がこんな無残な姿になったらな…。


そう…コレは国王さんだったモノ(・・)だ。


ヴァルの言葉を聞いて安心したのか、ほっとした表情を見せる兵士。


流石に戦場でもこんな死体は無いだろうからな。


となると…こんな事をしたのは…



「そう。あいつで合ってるよ、劉夜」


「…あら、お帰りなさい」



ジャリッ、と、この場に似つかない草履が地面に磨れる音がして父さんが現れた。


黒い外套を羽織っている。



「今まで何処に行ってたんだ?」



俺が疑問を口にする。


そう、今回一度も顔を見ていなかった。



「そうだ、京都に行こう!って事でちょっとね。


 …っと、冗談は此処までにして、単刀直入に言おう。アレースに会ってたんだよ、ボク」


「「「ふーんそうだったんだ……ってええええええっっ!!!???」」」



向こうの人にしか分からない地名とネタをかました後、サラリとついでの様に言われたのだから理解に数秒かかった。


この場の空気を読め!と視線で非難するが父さんは意図的なのか気づいていないのかは知らないが無視している。



「…んまぁ、結局あんまり相手にされなかったんだがね」



薄ら笑いで首を振る父さん…何か妙に殺気が篭っていて怖い…。



「…と言う事で、父さんのせいで空気が壊れた一同は、頭の中が釈然とせず、モヤモヤとしながらも地下のアジト経由で新たなウェスタリア王国の王都に移り住んでから約半月、ヴァルの策略にまんまと嵌った俺達家族五人+神姉弟二人は新たな城で規律やら法律やら制度やら公共整備の予定表やらの作成に明け暮れるの日々を送る俺達でした…」



そう、アレから既に約半月経っている。


というか、此方に来てから1ヶ月しか経ってない。


何か充実したというか、色々あり過ぎて何年もいる様な感覚に陥ってるが、まだ1ヶ月だ。



「そうだね、あらゆる意味で“勝負に勝って試合に負けた”って感じだね」


「うん?“勝負に負けて試合に勝った”じゃないか?」


「…どっちも意味は同じだよ?ルー兄、リュウ兄」



澪羽に突っ込まれて苦笑する俺達。


ほら、休んできたら?と背中押されて風呂場まで来たのは良いが…



「あれ?俺達が休めないのって澪羽が自分の仕事回してくるからじゃなかったっけ?」


「…え、あ…そうだね」



璃音と顔を見合わせ…



「…はははははっ、コレは後でやり返さなきゃいけないなぁ」


「…ふふふふふっ、そうだね兄さん。偶には兄らしい事もしないとね…?」



まずは風呂だがな。


俺達は黒いオーラを放ち、互いに肩を組み合いながら笑顔(・・)で風呂場に足を踏み入れた。



……後に理不尽にも被害にあったPさん(匿名希望、都内お住まいの27歳、独身)とVさん(匿名希望、都内にお住まいの28歳、独身)は顔面蒼白させて怯え、互いに抱締め合いながら語る。


アレは修羅だったと。


…それもターゲットにされている人以上に周囲の人の被害の方が酷かった、と。

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