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龍と獅子と猫の物語  作者: Neight
第1章 ウェスタリア王国
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第7話 改革⑬

《side:サラ》


初めての私サイドでやや緊張気味のサラよ。


…ごめんなさい、電波を拾ったかもしれないわ。


それ以前に「貴方誰?」という声が聞こえてた気がしたわ。


…もう1度説明すると、“ヴァルの叔母兼乳母”よ。


因みに、私は三姉妹の長女なのよ。


可愛い妹が二人いて幸せだったのに…行方不明だったり、国王の側室になったと思ったら…。


…っと、この話は此処までにしておくわね?


これから行うのは“国家反逆”という、国勤めだった私達には本来ありえない行動だわ。


でも、私達はその行動を取った。


理由は簡単。



あんな“国王(クソ)”に任せていたらこの国が潰れる。


守る筈の国民に重税かけて金を毟り取り、その金で悠々自適に暮らしてやがる王族も貴族も全部消し去ってやるわ。


それに、私の大切な(ミレア)甥っ子(ヴァル)を散々足蹴にしてくれた奴なんか精神的、社会的、肉体的に死にたいと思う程屈辱を受けて地に落ちやがれってんだ、ゲスが。



…あら、口調が崩れちゃったわね、うふふふふっ、いけない癖ね。


私って、ついついムカつく奴の事を考えたりすると口が悪くなっちゃうのよ。


…直す気なんてものは毛頭無いのだけどね。


一部私的な理由だったりするけれど、前半は誰もが思っているに違いないわ。


この国は市民と上流階級の格差が酷い。


重税掛けられたり、兵士は貴族構成で何にもしてなくても目が合っただけで暴力振られたりするのよ?


挙句の果てに、周囲の弱小国を問答無用で戦争を吹っかけ、略奪行為に等しい事までしているわ。


それで何を勘違いしたのか、魔国にまで喧嘩売るなんて救い様が無い。無さ過ぎるわ。


それどころか異世界召喚を使い、異世界の方を強制拉致して“勇者”という名の奴隷にするなんて馬鹿馬鹿しい。


本当に土下座モノよ。


それに、私の大事な大事な(ミレア)を可愛い甥っ子(ヴァル)の前で刺殺させるなんて、忌々しすぎてこの手で消してやりたいわ…。


…ヴァルは本当に可愛そうな子よ。


あの子は昔から(ミレア)だけではなく、私や周囲に気を使いっぱなしなの。


あの子は成長した今でもその気遣いは変わっていないし、更に謙虚になってるわね。


だって、“民から受け取ったお金は民や国の発展の為に使わなければいけないんだ”と、1銭も受け取らず、タダ働き同然なのよ。…時々抜け出している様子だけど。


それどころか、ヴァルの着ている服から食費とかお金が掛かるもの全て冒険者時代の資金で賄っているのよ!?


もう…ほんと、出来すぎた甥っ子なの。


そんな甥っ子と今回の計画を立てて十数年。念願の時を迎えたわ…!


もっと早くにしたかったのだけど、準備が必要でね、ほら…一般民の脱出用地下通路開通とか、逆に王族専用脱出通路封鎖とか、王城魔改造とか、新しく町を作り直すとか、制度とか…。


色々としていたら、時間が掛かっちゃったのよ~。


兵力は増量しなくて良いのかって?…確かに量は良いけれど、質よ、質。


いくら凄まじい人数いたとしても、広域魔法一撃打ち込めば終わりでしょ?(規格外の発想by世界意思)


それに、傭兵とか集めた所で統率取れなかったら意味が無いし、賛同してくれた人だけで行おうと思うの。


その代わりと言ったら何だけど…かなり体力底上げをしたわ。


最低クラスでもBよ?すごいでしょう!


え?給料とか、町建設費の資金は何処からって?


ふふふっ、私持ちよ。


私、こう見えても一応大昔に冒険者の端くれをやっていたのよ?


それぐらいの貯金はあるわ。(普通はありませんby世界意思)


…何か聞こえた気がするけど気のせいね。


運悪く召喚されてしまった勇者様三人もこちらについて下さったわ。


更にヴァルが選んだ側近の方や、勇者様のお知り合いらしい四人もこちら側について下さるみたいね。


…あら?


そういえば、一人懐かしい気配がする様な…


私の……いや、まさか、ね。


まぁ、それはいつでも良いとして…


ふふふ…待ってなさい、クソガキども…!


見た目がおっさんだからって、私から見たらただのガキよ…!!


脳みそ無いってのに政治しようなんて思わない事ね…!


今にその咽笛掻き切ってやるわ…!!


(妹と甥っ子の)積年の恨み…今日こそ晴らして…!



「サラ様、あんまり黒いオーラ撒き散らしてると味方が気絶しますよ?」


「…あら、ごめんなさい」


「…しっかりして下さい」



やだわ…気がつかない内に真っ黒なオーラを出していたみたいね。


内心で若干慌てながら抑えると、隣にいたホークに溜息を吐かれたわ。


…年下に駄目だし食らうなんて私年取ったかしら?



「今回、私達の部隊はサラ様が肝心なんですから」


「はいはい、分かってるわ」


「……はぁ」



…に、二度も溜息吐かなくても良いじゃない!!


私は食いかかりそうになったけど、すんでで留まる。


…落ち着け、落ち着くのよ、サラ…。


何度か深呼吸すると大分落ち着く事が出来たわ。


…余計な話を長々としてしまったけれど、もう一度今回の作戦の事でも話しておきましょう。


今回は私達がその辺の兵士…もとい、雑魚達を一掃し、ヴァル達が王族・貴族捕獲、その他邪魔するモノは殲滅する作戦ね。


ちなみに、私達は細かく作戦の詳細を決めてるけれど、ヴァル達は決めてないみたい。


決めない方が柔軟に動けるからですって。


後、羽が生えた奴にあったら逃げろと言われたわね。


…その相手、ものすごく嫌な予感がするから即刻逃げる事にするわ。


…で、話は戻るけど、私達は事前に町の人達に“音魔法を使うから聞こえたら地下通路使って逃げて”と言ってあるの。


音は貴族豪邸や城の周りに配置しておいた部下百余りが防音魔法を使った筈だから聞こえてないと思うわ。


それは昨日鳴らせておいたから、大丈夫ね。


…貴族とかが外出していたら聞こえているんじゃないかって?


それは絶対無いわ。


リオン様が下剤を大量に作って下さったので、外出予定のあった貴族は全員寝込んでいた筈よ?


後は、貴族が通りそうな道は全て把握してあるからそこに民に扮装した兵士を配置するだけで良いわ。


朝早いし、少なくても気づかれないわね。貴族は馬車から外なんて眺めないから。


…そんな訳で、守るべき民は新しい町に全員移動した筈だから暴れられるって訳よ。


でも、城はあんまり破壊すると資金源が無くなるから慎重に攻撃しないといけないわね。



ズカアアァァァァン!!!!



城壁で立っていた私達は突然、凄まじい轟音と共に一瞬白い光が城の内部の何処かで迸ったのを見たわ。



「あら?始まったみたいね」


「「「「「……………」」」」」



呟いた私の声を聞いた周りの部下達はジト目で見てくる。


…何故かしら?



「貴方が平然としているからですよ…」



…そのツッコミ、無視させてもらうわね。


ホークのツッコミを受け流していると、さっきの爆音に気づいたのか兵士・騎士塔、魔術士塔からぞろぞろ人が出てくる出てくる。


その人達は、こんな事態になった事は無いのと、総隊長のヴァルがいないという事が原因でパニック気味になっている…怠けていたのね。


城壁に隠れている私達に気づく事も無く城を目指していったわ。


それも、一箇所に固まりながら。



…国王様?貴方はとんでもないミスを犯したわ。


一つ、城の離れた位置に戦力をおいた配置ミス。


二つ、兵士をろくに育成してなかった事。


そして三つ目は…



「【紅蓮の魔女】を怒らせた事よ…!」



私の愛用のロッドの先で地面をカツンと突くと足元に巨大な魔方陣が出現した。


ふふふふ…覚悟は良い?


気分が高まり、自分でも口の端が上がっているのが分かる。


久しぶりね…此処まで盛大に魔法が使えるのはっ…!


私は右手をロッドから離して頭上に揚げ───



「燃え散りなさい」



───振り下ろした。

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