第7話 改革⑫
《side:璃音》
やぁ、前回何にもしてなかった璃音だよ。
しょうがないよね?糸が効かなかったんだからさ…。
でも兄さんが有効な攻撃方法見つけてくれたよ。
僕、途中から例の魔改造伊達眼鏡をつけて分析してたんだけど…あの闇もどき、神力混ざってたんだよね。
水簾に封印を解いて貰ったからだと思うけどね。
え? 澪羽は僕と同じ事言っていたのに兄さんは「準備期間中何も無かった」って言ってたって?
………。
…気のせいだと思うよ?
…ま、まぁ、その話は後日するから一旦閑話休題!
焔達によると四神+αが僕達の力を封印しているらしく…つまり、焔と水簾には会ったから後三人に会わないといけないみたいなんだよね。
αって誰って聞いたら、無言で通されたよ…。
それは良いとして、封印解除してると徐々に能力が神力に変換されていくらしく、十倍も効率が良くなるとか。
つまり、“MPを10消費してケアルをかけるのが、神力なら1で同等の能力が具現化される”らしい。
僕は忍術が使いたいという妄そ…もとい、願望があるんだけど、封印を完全に解けば更に何でも出来るようになるんだって。
…チートだよね。
まぁ、ともかく…小量とはいえ神力を得た僕達は一応前の属性の時のみ使えるんじゃないかな?
だって、ほら…兄さんが闇属性みたいな謎の物体の時だけ神力で構成されてるみたいだし。
って事は僕は“無属性”なら良いんだよね?
………。
“無属性”ってどうやって想像すれば良いの?
兄さんや澪羽のは想像しやすいけど、“無属性”って…。
何この難易度の高い属性!?
いや、待って…僕の前世(笑)はどんな方法で戦っていた?
確か…白い剣とかで…
そう思って創造しようと想像してみるけど、何も起こらない。
…いや別にギャグを言った訳じゃないよ?
僕がこんな寒いの言う訳ないからね?
ともかく、イメージが大まかで漠然とし過ぎていたからだと思うけど、失敗したみたい。
そんな簡単に出来るとは思ってなかったけど…無意識に、しかも一発で使えてる兄さんが羨ましいなぁ…。
そんな兄さんは二人相手に少々苦戦中。
剣に闇モドキを纏わせ直接切りつけているけど、王妃様達は警戒して回避重視し始めて当たってない。
体力や怪我とかは大丈夫そうだけど、早く援護した方が良さそうだね。
となると、僕も使えなくちゃいけないけど…“無属性”って何だろう?
火とか光とかは有属性だろうから、何処にも属さない属性?
そう思いながら適当に武器を想像してみるけど、何かが出てくる様な兆しはない。
もしくは“無に還す”属性…?
もう一度、さっきと同じ様に適当に…って
「えっ…」
今度はいつの間にか白い短刀が出現していた。
成功…なのかな?
能力の確認の為、触手(笑)にきつく絞められて青痣になっている足に、ある事を頭の片隅に置きながら先を軽く刺す。
…自虐癖とかじゃないよ!?
“無に還す”属性ならもしかして…と思って刺してみたんだけど、どうやら当たったらしく…痣が消えた。
引き抜くと刃物の傷痕も残っていない。
もう一度別の事を考えながら刺してみる。
同じ痣が浮き出る様に広がった。
更に少しだけ傷ができている。
どうやら僕の推測はあってたらしい。
刺す時に“痣を無かった事にする”と念頭して、2回目に刺した時には“痣を無かった事にしたのを無かった事にする”って思っていたんだけど、無事成功したよ。
傷が残ってないのは刺した対象に敵対心を持っていないからだと思う。
2回目の時に少しだけ殺気を出したら切れたからね。
どうやら、殺気によって殺傷能力が上下するみたいだし。
ん? そういえば…この能力何処かで似た様なのが…!?
…もしかして某過負荷二重鍵括弧学ラン生徒会執行部副会長と同じ機能?
というか、“無かった事を無かった事にする”時点で彼の過負荷超えてない…?
流石に星一つ消せるかは分からないけどね。
でも…人間離れも良いとこじゃない?
軽い気持ちで色々“無かった事”にしちゃったら…拙いよね。
怖いな、この力…。
よく耐えれたね、僕の前世(笑)…。
『璃音、脈拍上がってるぞ? 大丈夫か?』
『なん…だって?』
えっ…剣を振り回してるのにそんなとこに気をまわしてる余裕があるの?
というか何で気がついたのさ!?
『何となく?』
『意味わかんない…』
…ゴホンゴホンッ
まあ、気にしたら負けなんだろうね、きっと。
あんまり検証してないけど、使えるかなと気楽に考え、もう一度神力を使って糸を合成してみる。
白い淡い光が掌に集まり、白い糸が出来た。
…うん、普通に創れるね。
普通、有色だと目立つと思うんだけど、この糸は表面が反射して相手の視覚を錯覚させ、“見えなかった事にする”事ができるらしい(眼鏡による情報)。
とんだご都合主義だよね~…。
…という事で始めからここまでの思考約15秒、そろそろ行かないとね。
体内のチャクラで自然治癒力を上げて、さっき付けた足の傷を治す。
隠蔽魔法って隠密行動程度なら継続されるけど、戦闘体制とかになると解除されちゃうらしい。
兄さんを援護しようと地面を蹴ると、触手(笑)が一斉にコッチに向かってきた。
糸を指に絡ませながらばらまき、触手(笑)を拘束する。
触手(笑)は糸と触れた瞬間パッと消え、“無かった事”になった。
うん、今度は問題無く使えるね。
そのまま走りながら触手(笑)相手に無双しながら更に糸を創って周囲にまく。
神力はまだそんなにないから、魔力を使って操作して糸を縦横無尽に張り巡らせる。
触手(笑)はこっちに向かってくるけど、糸の包囲網を抜けれず、次々に消えていく。
わぉ…セルフだよ、楽だね~。
僕や兄さんには効果が効かない様に“設定”しておいたから、糸を気にせず走れる。
上手く触手(笑)が糸に触れる様に誘導しながら、僕は兄さんに近づいた。
「兄さん来たよ」
「ん? 手がウジャウジャそっちに向かってたけど大丈夫だったのか?」
「あれ…」
僕が後ろに視線を向けると、こっちに向かって進もうとして消滅してるある意味謎な光景が広がっていた。
「…きもっ…姫さん達の方で良かった…」(ボソッ)
「…何か言ったかな、兄さん?」
「き、気のせいだ、多分な!」
バッチリ聞こえてたし、テンパったのか墓穴掘ったね、兄さん。
まぁ、ある意味僕が触手(笑)相手で良かったと思うよ?
…僕1人でこの状態の王妃様達を相手にしてたら、ちょっときつかっただろうし。
僕は戦闘方法は暗殺者スタイルだから敵にタイマン出来る様な力は無い。
隠れて逃げて薬品使って気配隠して不意打ちして…一般的に忌み嫌われる類の戦闘方法になる。
まぁ、別にそれに拘らなくても兄さんみたいに戦えるんだけど、こっちの方が性に合ってるんだよ。
ともかく、“手加減すると死にかけて本気で行くと殺してしまう”…中途半端な二人が相手だと力加減が良く分からなくなる。
だから少しでも余裕を持つ為に兄さん呼んだんだけど。
兄さんが居なかったら…力加減誤って殺しちゃいかねないからね。
『…行くぞ、璃音』
『はいはい、兄さん』
僕達は同時に駆け出した。