第7話 改革⑧
《side:璃音》
王女様に突然の告白されて、パニックに陥ったけど、何とか亜空間に閉じ込める事が出来た。
今は会場に戻る最中なんだけど…誰かに見られている気がするんだよね。
気配はしないんだけど…何故だかそんな気がする。
まさか…本当にお化けって訳じゃ無いよね…?
クスクス…
「……え!?」
何処からか不気味な笑い声が…。
怖くは…な、無いからね?
…いきなり笑い声が聞こえたら誰でもビビるって…。
たから、僕だけじゃないと思うよ、多分。
というか道、合ってる筈なんだけど…行きと雰囲気が違う気がしてきた。
だって、借りにも王宮だよ?
地下牢じゃない限り、暗くて、ジメジメしている場所は無いと思うんだけど…。
…って、ちょっと待って。
さっきから景色が大して変わってない。
同じ所ぐるぐると回ってるだけだったり…!?
焦る気持ちを抑えながら、窓際の壁を見ると…さっき通った壁にあった傷が入っていた。
…うわぁ~。
誰かさんの罠に嵌まっちゃったぽいね。
やっちゃった…と頭を掻いてると、少し離れた所に手があった。
………手?
「……」(うねうねうねうね)
「…………」
ソレは、肘ぐらいまでのが絨毯から生えていて…
うねうねと軟体生物の様な動きをしながらアッチへウロウロ、コッチへウロウロしていた。
…何コレ?
…見なかった事にしよう。
僕は、敢えてその存在を無理矢理意識無視し、暫くそのまま放置して、此処から如何やって出ようかと考えていると…
「………」(うねうね…ガシッ!!)
……。
………キモッ。
何故かその手が僕の左足首を掴んできたので、右足で踏み付けてみた。
勢いをつけたのが良かったのか、手が一瞬拘束を緩めたのでその隙に後に後退する。
手は…痛そうにくねくねしていたけど…今度は、しっかりとした足どり(?)でこちら目掛けて一直線…!?
「…うわぁぁぁぁああ!?」
キモいぃっ!?
あまりのキモさに汗がひいた。
思わず、駆け出したんだけど…。
走っても走っても元の位置に戻され、少しでもスピードを落とすと追いつかれそうになるという無限地獄に…。
暫くそれが続いて…「そろそろ走り疲れて(?)スピード落ちてくれてると良いなぁ…」という希望を持ちながら後を振り向くと…
「「「「…………」」」」((((うねうねうねうね))))
増殖していた。
しかも四本に。
…もう嫌だー!!
「ごめんなさい、僕が悪かったです!!
ですからお願いなのでついて来ないで下さいッ!!??」
疲れて無いからまだ走れるけど、これは精神的に来るものがある。
キモいモノに追い掛けられたら目から涙が出てくるって!!
半泣きで、半ば自分でも意味不明な謝罪をしながら走っていると…何故か手の追い掛けてくるスピードが上がってきた。
何で速くなってるの!?
怒らせちゃったとか?
…そんな地雷要素何処にあったんだ!?
まさか、僕の謝罪方法が間違ってたとか!?
色々と疑問が浮かぶけど、それどころじゃない。
僕は、このままじゃラチが明かないと思い、対峙しようと意を決して止まり、振り返った。
手も空気を読んだのか一定距離を空けて止まる。
…ってあれ?
いち、に…
本数、減ってる…?
良かった、これなら多少は楽が出来る…!?
消滅したのかなと思っていたんだけど…振り返った先には残りの二本がいた。
…見事に挟み込まれたよ。
「………」
取り敢えず、近付いて来ない様に結界を張り、僕自身に魔法で物理・魔法防御を上げておく。
…でも、母さんのギャグ補正という例外も有るから…全然安心できない…。
何故かこの手から同じ臭いがするんだよ…。
もう、嫌な予感以外しない。
「「「「………」」」」((((うねうねっ!))))
やっぱり!?
手は、思いっ切り結界を破って入ってきた。
「くるなぁぁぁぁああ!?」
転送魔法で離脱しようとする前に近づかれ、迫ってくる手に僕の意識は刈り取られた…。
―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―
「…ん」
知らない天井だよ。
…ごめん、ふざけてる場合じゃないよね。
ボーっとしている頭を無理矢理動かし、状況整理をしようと辺りを見渡した。
辺り一面暗い空間が続いていて、壁が見えない。
…如何やら何処か別の空間に閉じ込められたみたいだね。
ゆっくりと身を起こすと、少しだけ体の節々から痛みを発した。
此処に来る前に捻ったのかもしれない。
そこまで痛かった訳でもなかったので、無視した。
《…やっと気がつきましたか》
「…!?」
何処からか、声が響いてきた。
辺りを見回しても人はいない。
…というかこの声、どこかで聞いた気がするんだけど、気のせいだよね~?
《そんな顔しなくても、貴方のご想像通りだと思いますが》
…肯定しないで欲しかったよ。
という事は、あの“城壁壊しの猛烈突進猪さん”という訳だね?
要するに…
「閻魔さんちの側近様のお出ましって事なのかい?」
《……何ですかその言い方》
…敵に突っ込まれちゃったよ。
《…まぁ、良いでしょう。
それより貴方、亜空間に閉じ込められたというのに…余り取り乱しませんね。
気付いていない訳では無いでしょうし》
「頭の許容量を越えた訳の分からない状況に陥ると、人間って、逆に冷静になるんだよ」
《そんなものですか》
「そんなものだよ」
…話をしながらさりげなく脱出方法を探ってみてるんだけど…今の所見つからない。
念話…外に繋がらないから、誰とも話せない。
移転魔法…詠唱破棄で短距離移転をしようとしても、多分此処から脱出は不可能。
…他にも試したんだけど、どれも駄目なんだよね。
《此処から脱出しようとしても無駄です》
「……ちっ」
…バレてたっぽい。
流石に誤魔化せなかったか…。
《貴方には悪いですが、死んで貰いますよ。
…今の所脅威を全く感じないのでついで程度ですが》
…ち、ちょっと?
最後の小声、全部聞こえてるんだけど…?
ついでで殺されたらたまったものじゃないんだけど。
《私は忙しいので、相手は先程貴方が拘束した二人ですから少しばかり生存率は有ります。
運が良ければ生存可能ですので安心して下さい》
…えーっと、どの辺に安心出来る要素が?
きっとその二人、神改造(笑)を施されている可能性が有るから、簡単には勝てないと思う。
とにかく、助けが来るまで耐えるしか…
《この空間からは勝たないと出れませんし、いくらこちらにいても、現実世界の一秒にもなりませんので。
ああ、因みに先ほどの手は彼女達のモノです》
そう、僕にトドメを刺すと、彼の気配は去った。
それと入れ替えに目が虚ろな王妃様と王女様が…現れる。
…選択肢皆無の強制戦闘。
更にあのうねうねは……。
もしかして、これって詰んじゃったんじゃない…?




