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龍と獅子と猫の物語  作者: Neight
第1章 ウェスタリア王国
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第7話 改革⑥

《side:ヴァル》


まずい…予定が狂った。


迂闊だった。


幾通りの作戦を組んだのだが、まさかここまで早く来るとは思っていなかった。


相手は手強い相手だ…ほぼ確実に私とポチの存在に気付いているだろう。


操られた兄上の剣先がミウに伸びる。


私は姿消しを解いて剣を呼び、護る様に回り込もうとしたのだが。



「そんな事させないからねっ!!!!」



突然、黒い物体がミウと兄上の間に割り込み、兄上の剣撃を防いだ。


…いや、防いだのは良いのだが、私は何も活躍していないではないか…。


王子として、一人の男として、これは良いのだろうか…。


私の覚悟は…。


それに、攻撃を防いだ物が“巨大なフライパン”というのは如何な物か。



「私の澪羽ちゃんを虐める奴には…てんちゅ!!」



てんちゅ?


もしかして、天誅と言いたかったのだろうか?


流石に神相手に天誅は無いだろう…。


彼女…リィアは黒いフライパンをそのままに、右手の“モノ”を兄上の腹部目掛けて振る。


リュウヤ曰く、“赤いチューリップのアップリケが付いたピンク色の幼稚園の先生みたいなエプロン”がふわりと舞った。


…普通、エプロンで城に登城する人はいるのだろうか。



「【おたま・オブ・おたま】超加速っ!!」


「ネタ武器使うんだ…」



ミウが渇いた笑いをしながら呟いた。


如何やら【おたま・オブ・おたま】というのはその“モノ”の名前らしい。


ただの派手な観賞用のオタマにしか見えないのだが果してアレで攻撃できるのだろうか。



「更に…オマケで紫電ver.!!」



そう叫ぶと、オタマに白紫の雷が宿った。


目も開けていられない程強力な光が輝く。


雷の恩恵なのか、腹部目掛けて進むオタマが近距離から更に加速した。



バチバチッ!!



《…チッ》



兄上はそれを一瞥し、防御しきれないと思ったのか紙一重で回避する。


標的を失ったオタマは勢いを失わずに彼女の背後にあった壁に衝突した。



ミシッ………パリィィインッ…



硝子の様な物に一瞬阻まれた後、壁が崩れ落ちる所まではいかなかったが、軽く2mを越える様なクレータが完成した…。


崩れ落ちなかったのは、ポチが事前に気が付いて、私達の周りと、壁に最高密度の結界を張っておいたからの様だ。


しかし、壁に張っておいた結界は威力こそ弱めたものの、破られてしまったらしい。



「姫様、もう少し手加減をして下さいよ…」



ポチの顔が苦渋に歪む。


実際、空気が割れる程の震動がした。


きっと、衝撃波も出ていたのだろう…私達の周りだけとはいえ、耐えきったポチは流石だ。


リィアは、ポチの呻き声は完全に無視して、フライパンに身を隠す様に防御の姿勢を取る。


直ぐに金属同士がぶつかり合う様な音がして、フライパンが若干揺らめいた。



《…貴女は本当に人間ですか》


「バリッバリの人間よっ!!」



リィアはフライパンに当てた右手を白色に輝かせる。


兄上の剣先伝いに光がほとばしり、直撃を受けた兄上がよろめいた。


リィアは直ぐにフライパンから手を離し、素手で追撃を掛けようとバルコニーを駆ける。


兄上は苦しそうに顔を歪め、首を狙い、迫る手刀を後にバックステップを踏んで避けようとしたのだが。



「そんなんじゃあ…私には勝てないわよ?」



いつの間にか回り込んでいたリィアがニヤリと笑いながら跳躍した。


肩車の様に兄上の肩に乗り、両脚で頭を挟んで後転跳びをする。



「そりやぁっ!!」


「ぐえっ!?」



思い切り地面に頭部を打ち付け、蛙が潰れた様な断末魔を上げた。


ゴキリッと嫌な音と共に兄上は動かなくなる。


そして、そのまま勢いが余ったのかバルコニーに頭部が埋まった。


……死んでしまったのだろうか…。


私が、ずっと憎み、恨んでいた兄上。


しかし変態で、頭脳が残念であっただけの兄上。


尊敬は出来ないが、情けない兄として、父上や母上、姉上の中では1番マシな人に認定していたというのに…先立ってしまうのか。



「【ギャグ補正】使ったから死んで無いわ。安心してね?」



…あんな状態で生きているというのか?


頭部が埋まった時の衝撃が逃げ切らなかったのか手足が有らぬ方向に曲がっているが…?


如何見ても死体にしか見えない兄上を凝視する。


………………。


肋骨は折れていないのか静かに、僅かに胸が上下していた。



「…所詮は鍛えてない優男の身体ね」



リィアは呟きながらフライパンとオタマを回収するとウィンクをしながらこちらにサムズアップをしてきた。


………………。


…もう少しまともな人だった気がするのだが、貴女は何処で如何間違えたのだろうか。


昔は、腐りきった世界にいた私を助けてくれた憧れの人だったのだが…。


…記憶は美化されるモノだと聞いたことがあるのだが、もしかしてそういう事なのだろうか?


そういえばリュウヤとリオンが「師匠としては最高だけど、親としては常識外れた残念過ぎる両親」と言っていたな。


………そういう事なのだろうか。


いや、充分リュウヤ達も常識から掛け離れていると思うのだが…。


…話が逸れたな。


閑話休題はなしをもどさせてもらう



《…貴女は毎度毎度邪魔をしてきますね。神相手によくもやってくれます》



…奴の声は兄上を介していた訳では無かった様だ。


再度何処からか声が響く。



「そりゃあそうでしょっ!


 人間消すなんて言われたら、どんな人でも、たとえ神相手でも抵抗するわよ」


《…そう思っても普通は実行に移しませんが》



溜息でも聞こえそうな呆れ声が響き渡った。


…敵ながら私も同情したくなった。



《まあ、良いでしょう。目的の半分は達成出来そうですから》


「…どういう事?」


《正直、此処に居る必要が無くなったんですよ。貴女達はついでですから》



声はクスクス笑うと、「ああ、これもついでですが」と続けた。



《ジークフリート様の生まれ変わりの方は良いとして、シルファリオン様の方は…どうなるのでしょうかね》


「「「「………!!」」」」



私達の驚愕の表情を見た(?)のか、満足そうに高笑いをしながら声の気配は去った。



…先程、リオンは母上と姉上と共に個室に向かって行った。


リオンは二人を亜空間に一度幽閉する手筈になっていたはずだ。


…もし、二人が操られ、声の主、アレースの支配下だったら?


いくら前線に出た事が無い者が相手だったとしても、マズイのではないだろうか。



「お母さん…行こう…」


「えぇ…!」



私達は兄上を厳重に封印してリィアの亜空間に閉じ込めるとリオンの元に向かった。


――――無事を願いながら。

因みに…

【てんちゅ】

天誅と言おうとして下を噛んだ模様。

天誅とは、天罰の意…神相手に…?


【おたま・オブ・おたま】

FFCCROF(ファイナルファンタジー クリスタル・クロニクル リング・オブ・フェイト)の方のネタ武器…というかリルティの究極武器ですw

リルティの武器はFFCCでは槍なのにFFCCROF何故かオタマとハンマーという不思議…。

そしてちゃっかり全武器中最強の攻撃力を誇るという伝説が…。

DEF(防御力)も10あがるという…謎武器です。

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