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龍と獅子と猫の物語  作者: Neight
第1章 ウェスタリア王国
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第7話 改革④

※残酷・流血描写ありです。

《no side》


「…こ、こんな事をしてただで済むとでも思っておるのか!!」



華美な内装の部屋に二つの影が対峙している。


太った男と細身の男。


太った男の衣類はあちこちに宝石が散りばめられており、一般人が見れば唖然するほどで、部屋の持ち主だという事は…一目瞭然だった。


太った男が呻く様に声を上げる。


濁った瞳は見開かれ、相手を凝視していた。


男自身、言った言葉と裏腹に、体は恐怖に震えているのを自覚しながらも、少しでも時間を稼ごうと頭を働かせていた。


先程、緊急用の連絡魔法具を使用したのだ。


それは触れると対の魔法具に連絡が届くという物である。


本来は触れて伝えたい事を念じなければならないのだが、途中で焦って割ってしまった。


しかし、緊急事態というのは伝わっているだろう。


直属の近衛騎士が来るはず。


彼等なら目の前の裏切り者を始末してくれるに違いない。


余を裏切った報いだ、と太った男は恐怖に駆られながらも、ほくそ笑んでいた。


――ある物を見せられるまでは。



「……これが何か分かります?」



太った男が怪訝そうな顔で相手の掌を見て…固まった。


そこには壊してしまった“魔法具”の対があったのだ。


何故此処にある!?


太った男は目の前のありえない光景に思考停止をしてしまう。


脂汗をダラダラかき、言葉を紡げず口はただパクパクと開閉する事しか出来ない。



「残念ながら助けは望めませんよ」



細身の男はそう言い放つと、“魔法具”を落とし、ギリッと踏み付けた。


パキッという音に我に返ったが、すぐに何が音を立てたのかに気がつくと顔面蒼白になる。


近衛騎士…いや、誰も駆け付ける事は無いだろう。


最後の望みが絶たれたのだ。


太った男は目を見開いたまま、よろめきながら後退し、扉に背をもたれる様に付けた。



「ひぃっ…き、貴様っ!!わ、忘れたのかっ!!貴様の今までの功績は余の御蔭なのだぞっ!?」



今だ高圧的な言動を覆さない男に細身の男は目を細め、冷淡な視線を送っていた。


…この屑は何をほざいているのだろうか。


功績功績と戯言を言っているが、それは自分が策略を立てたからだというのに。


目の前の屑はただ自分の権力を行使しただけに過ぎない。


如何にも自分の功績とばかり胸を張っているとは…馬鹿馬鹿しい。


細身の男は正面の冷や汗をかき、顔を青ざめている顔を見て嘲笑った。



「…貴方に何度言った所で無駄の様ですね。とりあえず………死んで頂きましょうか」


「―――!?」



―――――ビシャッ



突如、断末魔を上げる暇さえ与えられず、太った男の頭部が、驚愕の表情のまま中を舞った。



―――――ドサッ…



地面に落ちただけでは衝撃は収まらなかった様で、頭部が転がる。


タイミングを見計らったかの様に、タイムラグで胴体と肢体がバラバラに崩れ去った。


…人間だった“モノ”は切断ヵ所から赤黒い鮮血を辺りに撒き散らしながら、崩れ落ちた。


赤い液体が四方に飛び散り、染め上げ…この部屋に場違いな染みを作り上げた。



「………はぁ、これだから人間は…」



そんな惨状の中、細身の男は目の前の出来事に別段驚愕する訳でも無く…感情の篭らない眼で一部始終を見届けると心底嫌そうに嘆息する。



「後は頼みますよ…もう、こんな屑の顔も見たくないんですからね」



――ガシ ガシ ガシッ ガ…ゴギッ



「……………あ」



足元にまで転がって来ていた頭部を何度か踏み付けると、頭蓋骨が耐え切れ無かった様で、嫌な音と共に変形した。



「……ま、良いでしょう…誰か判れば」



男は勝手に決めると半ば血と中身でぐちゃぐちゃになってしまった頭部から足を離して再度嘆息した。



「…そろそろ行かないと計画に支障をきたしますしね」



これから起こる催し物(・・・)を思い浮かべ、薄い唇の端を持ち上げ、顔に手を翳す。


手を下げたそこには、細面の老けた顔ではなく、若い男の顔があった。



―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―



《side:澪羽》


…うわぁ、ルー兄無茶苦茶テンパってるよ。


念話に漏れてないのは流石だけど、更に強化された私の超能力で諸バレ(笑)だもんねー。


昨日、水簾にも封印解いてもらったの。


だから更に魔力とか超能力が強化されたよ。


ただ…封印解くとそれだけではなくて、性格があの人(・・・)近付いていったり他にも色々と影響されるらしい。


無自覚で黒くなってるとか怖いねー(棒読み)。


って、話がズレた…閑話休題(それはほうちして)…。


リュウ兄の方は一段落済んだみたいだけど…あ、今度は私に来る様な予感が…?


って、ダメ!!


フラグ建てちゃ……ったよ…。


チラリとポチを見ると彼も気がついていたらしく、瞬きをして肯定してきた。


うわぁ…逃げたい。


無茶苦茶逃げたい。


意識向けてなくても変態思考流れて来てるし。


あぁ、もう逝っても良いよね…?


お父さん、お母さん、お兄ちゃん達、先立つ妹をお許し下さ…



『ミ、ミウちゃん? 何言ってるんですか!? 戻ってきて下さいっ!』


『うっ…。コホンっ、ポチってヴァル以外の命令を拒否出来るんだよね?拒否して貰えない?』


『…この人の場合はそれが通りそうに無いと勘と経験が警報鳴らしてるんですよ…』



えええぇ…。


そんな…回避手段無しの強制イベント?


ますます嫌に…



「やあ、楽しんでいるかな?」



なって………って、来ちゃった。


「無視したい」そう思ったけれど、無視する訳にもいかないから、拒絶反応を無理矢理押さえ込んで声のする方へ振り返る。



「ええ、御蔭様で…」



ニコリと造り笑いをすると相手は嬉しそうに微笑んだ。


ウェーブのかかった金髪を後ろに撫で付け、翡翠色の眼の優男風。


…はい、美形です、お兄ちゃん達とは違うベクトルで。


というか、D.Gr●y-m●nのテ●キぽんの色違いバージョン?


あの国王様からどうしたらこんな顔の人が産まれるのかな…。


…うん、不思議すぎる。


彼がこちらに笑顔を向けた所を目撃した瞬間、目撃した貴族の御令嬢様達は一斉に赤面した。


私は散々あっちで耐性ついてるからこれぐらい全然平気だし、タイプじゃないんだよね…ナルシは。


…もしかしてこれって死語?


……コホンッ!!


それに…


《ふーん、反応可愛いなぁ…ああ、笑顔も良いね…別の顔も見てみたい…まぁ、胸は小ぶりだが許容範囲内だ…っていうか本当に16?12の間違いじゃない?まぁ、将来有望かな?魔力多いみたいだし、俺の正妻にしてやっても良いかm》


………。


…………………。


怒ッテモ良イデスヨネ?


心の中だからって言いたい放題言ってくれちゃって…。


しゃーんなろーっ!!!


………あ。


何かが乗り移った様な…(棒読み)


気の所為よねー?


…………ねー…?



「グラスが空になってるじゃないか…注いであげるよ」


「あら、優しいんですね?」


「これくらい当たり前だよ。それに君は薔薇の様に美しいからね」



気さくなのは良いんだけど…歯が浮きそうな古くて臭くて寒い時代遅れなセリフ吐いてるよ、この人…。


何か回りの女性の視線が何故かどんどん嫉妬と憎悪に変わっていくんだけど…。


お願いですから私の前から早々に退場して下さい。


退きそうな気配が一切無いので仕方なく注いで貰う。


ワインを注がれて、飲めと遠回しに煽られて初めて飲んでみたけれど…。


目の前の状況に冷めてしまい全く酔いそうにもなかった。


ある意味良い事なんだけれど…ね…。



「少し話したい事があるんだけど…テラスに来てもらえる?」



…そしてこのまま放して貰えないみたい。

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