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龍と獅子と猫の物語  作者: Neight
第1章 ウェスタリア王国
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第7話 改革③

《side:璃音》


…はぁ。


何なのだろうね? あのデ…おじさんは。


あんな嫌らしい視線を僕の澪羽に向けるなっ!


汚れるから!!


半径10km圏内に入ってくるなって感じだよ、全く…。


こうなる事は事前に分かっていたのに、実際に起こると無性に腹が立った。


業と微弱な殺気を放ちながらズカズカ進んでると、人々が道を空けてくれる。


……楽だね。



「そこの貴方、少々宜しくて?」



澪羽の手を引きながら隅のテーブルへ向かっていると、声がかかった。


…何? 機嫌が悪いんだけど。


やや、落ちかけた仮面(えがお)を貼付け直し振り返ると、王妃様と王女様がいた。


流石に王族相手に殺気は放てない為、抑えたよ。


…というか、空気読んでよね~…?



「少し、付き合って貰えません?」



お願い口調だけど、逆らったら後々面倒になりそうだね…。



『…ポチ』


『は、はい。何ですか?』


『…ごめん、暫く澪羽を害虫(きぞく) から護ってくれないかな。


 …王妃様と王女様に絡まれたから』


『り、了解です!』



兄さんの方を手伝っていたらしいポチに念話を送る。


王妃様達に了承の返事を返しながらさりげなく澪羽をポチに託した。


まぁ、ポチは表裏が激しくないし、母さんの知り合いみたいだから信用出来る。


王族近衛騎士って言うのは、実はかなり位が高いらしくて、自分の王族以外の命令等は無視出来るらしいんだよね。


…すごっ。


…それに、澪羽を護れなかったり、手を出したら僕が許さない事ぐらい重々承知だろうしね。


初対面の時から牽制かけてるから高確率で大丈夫だと思う。



「では…こちらへ」



王妃様達は、やや顔を赤らめながら踵を返し、優雅に歩を踏み出す。


熱でもあるのかな?


あるなら休んでれば良いのに。


…僕にうつさないでね?


ついて行くと、個室に案内された。


ソファーに向かい合わせに座る。



「あっ…あの、リオン様…」



王女が話を切り出そうとして、しどろもどろになる。


…あれ?


こっちに召喚された時とかなり態度違うんだけど…?


名前が様付けとか…。



「何でしょうか、リシェラ様?」



こっちも対抗して名前で呼んでみた。


…うん? 更に赤くなってるんだけど。


…林檎病?


…いやいや、有り得ない。


あれは幼少期にかかりやすい病気だからね。


そんな王女様に向かって「頑張りなさい!貴女なら出来るわ!」的な視線を送っている王妃様。


…何なのだろう、この空気。


王女様はテーブルに置いてあったワインをグラスに少量注ぎ、優雅に飲み干すと、重い口を開けた。



「わ、私か…お母様と婚約を結んで頂けませんか」



…。


……。


………………。



「……は?」



思わず聞き返しちゃったよ。


あははっ…聞き間違いだよね?



「この国では一夫一妻制…いや、一夫多妻制というのは無いのですか?」


「いえ?そんなものございませんわ?」



聞いてみると「寧ろそれ何?」という眼差しが返された。


王妃様、貴女王様と結婚してるんじゃないの?


…えっ、この国もしかして多夫多妻制?


そんなのあるのかな? ははっ…この国の法律が如何なってるのか小一時間に渡って問いただしたいなー。


…って、一時間じゃ無理だね。一週間かな?


というか、王妃様は自分もある意味関わってるのに娘の王女様に言わせたんだ…。


…本当に、意味わかんない。



「…申し訳ございません。私には4年前から将来を誓い合った婚約者がいるのですよ。私の国では一夫一妻制なので…」



いないけどね! 口から出任せだよ。


僕みたいな奴にいたら奇跡じゃないかな?


僕が済まなさそうに言うと王妃様と王女様が一瞬硬直し、ガッと迫ってきた。



「それは、何処のどなたです!!」


「あちらに戻る方法など見つかっていませんわ、そんな方諦めなさい!」



…ちょ、近い。


そして、ツーンとしたきっつい花の匂いがした。


鼻が利きすぎる所為で…香水が臭い。


…しまった…まさか、香水で頭が痛くなるなんて予想外だったよ…。


対策立てないと…。



「向こうでは…神様の前で一度誓いをたてると、生涯その人に尽くさないといけないのです」



…頭がくらくらする。


悟られないように出任せ2(笑)を言うと渋々下がってくれた。


顔に嫌々とかかれている…。


僕は苦笑しながら、もう一度謝り、ワインボトルを手に取った。



「私が注ぎましょうか」



王妃様と王女様が途端に表情を変え、扇で口許を隠した。


空になった2人のワイングラスにゆっくりとワインを注ぐ。


2人が何故か嬉々として飲もうとグラスに手をのばし、ゆっくりグラスを傾けワインを飲み―…倒れた。


…そりゃあね?こんなチャンス逃したら勿体ないからね。


ワインにこっそり仕込んだ薬は睡眠薬と麻痺薬をベースに色々混ぜて更に魔法改造した僕特製の即効薬。


無味無臭で無色、水みたいな物だから気づくのは不可能だよ。


因みに効果は、仮死状態。


多分、1mlあれば、神様にも効くだろうってぐらい強力な物。


今回は量を極少…0.01mlにしたから、長くても一週間ぐらいかな。


人が間違えて神様と同じ量飲むと、確実に即死出来る猛毒薬に変化するから注意だよ。


…まぁ、そんな感じで眠った王妃様達の記憶をトレース。


本物の2人は金縛りの術で拘束して、亜空間に閉じ込めた。


ヴァルに殺すなって言われてるし、亜空間は逃げる事は不可能だけどある意味一番安全地帯だからね。


神や天使が来る可能性があるから慎重過ぎるぐらいが丁度良い。


…まぁ、僕が死んだら消滅するらしいけど。


僕はその後部屋を後にした。



その瞬間、背筋が凍る様な…何かに捕まれてる様な…今までに無いぐらい嫌な予感がした。


…いや、まさか、ね…?

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