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龍と獅子と猫の物語  作者: Neight
第1章 ウェスタリア王国
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第0話 召喚②

《side:澪羽》


「ううっ…い…痛い…。」



ゴンッ、と鈍い音で目が覚めた。


寝ぼけていたのか、ベッドから転げ落ちてカーペットとキスをする形になってしまった私は頭を抱えながらゆっくりと起き上がる。



「…澪羽(みう)、大丈夫?…凄まじい音がしたんだけど」



隣の部屋からドタドタ音がして、慌てた様子で兄のルー兄こと璃音(りおん)が私の部屋に来た。


鼻が赤くなっている気がしたけど、心配そうに覗き込んでくるルー兄を心配させたくなかった私は、



「大丈夫だよ!気のせいだって!!」



と、とりあえず笑う。


だけど、我慢がばれてるのか不安そうに私の顔を覗き込んできた。


お互い無言で数秒間。



「まあ、澪羽が言うなら大丈夫だね」



暫くジーっと見つめられたけど、顔を離して苦笑した。


って、いくら兄弟でもいきなり部屋に入ってくるのは…いけないと思うよ?


…そう思った私はルー兄を部屋の外へ押し出し、制服に着替える。



「おーい、朝メシ出来たぞ~降りて来い~」



そう言ってテキパキと1階のリビングの6人がけのテーブルに着々と出来立ての朝ごはんを並べていくのは兄の劉夜(りゅうや)


ブレザーの上からエプロンを掛け、右手にフライ返し、左手にフライパン…という正に"俺、料理出来ます!"な格好で階段を下りてきた私達を迎えてくれた。


私の家…桜城(おうじょう)家は、父の(ひじり)を筆頭に母のリカ、長男のリュウ兄こと劉夜(りゅうや)、次男のルー兄こと璃音(りおん)、そして…私、澪羽(みう)の5人家族で構成されている。


リュウ兄とルー兄は高三で、私は高一で二歳差なの。


リュウ兄とルー兄は双子だけど、見た目も性格も全然違うんだよ。


お父さんは黒髪黒目で、背中の中ほどまである髪を後ろで束ねているの。


眼は何故かいつも閉じていて、着物を普段着として愛用しているちょっと変わった人だったりするんだけどね。


お母さんは外国人なので私達はハーフって事になる。


お母さんは菫色の瞳と明るい茶色の髪をボブにしている所為か、唯でさえ年齢不詳なのに余計に若く見えるんだよね。


私達兄妹はお母さんの遺伝子を継いだらしく、菫色の瞳を持っていた。


…ただ日本だと珍しい色という事もあってチラチラ見られるので、普段は黒のカラコンをつけている。


髪の方は私とリュウ兄が黒でルー兄が茶色。


ルー兄の髪色は日本人にしては明るい色だけど、茶色自体は金髪よりは珍しいという訳では無いし、茶髪に染める人は結構いるからあんまり気にされない。


お母さんが外国人だけど、それ以外は至極普通な家庭と言えると思んだけど…これが普通の家じゃないんだよね。


…お父さんは元暗殺者でお母さんは武術マスター…うん、色々とアウトじゃないかな、これ。


お父さんがとある依頼でお母さんを暗殺しようとしたみたいだけど、逆にコテンパンにされたのが出会い…みたい。


「リカにニコニコされながらコテンパンにされた時、ボクの心がズキューンと来たよ!ズキューンと!! それにね? リカったr(略」


前にこの話をした時、こうお父さんが熱く語ってたけど、兄弟揃って引いたよ…?


リュウ兄はそんな両親に武術を習ったから、腕前は達人と言える程強いし、ルー兄もリュウ兄程ではないけど全然強い。


リュウ兄は主に正統派が好きな様で、お母さんに習い、ルー兄は逆に隙を突く…暗殺系のお父さんに教えて貰っているみたい。


というか、現代社会で武術要らないんじゃないかと思ったんだけど、お父さんが元暗殺者だったから、未だに狙ってくる人がいるみたいで、護身用に教えてるらしい。


なら私も習いたいと言ったんだけど、両親は「お兄ちゃん達が守ってくれるから」の一点張りで教えてもらえないんだよね…。


私が武術を教えてもらえない理由は他にもある。


私は体が弱く原因不明の病気(?)に罹っていて、小さい頃から頻繁に寝込んでいたの。


病院に行っても原因は不明の一点張りで、散々家族を不安がらせちゃったりしたし。


最近は比較的安定してきて、普通の生活が送れるようになってきたんだけど…。


ルー兄は昔から頭が良くって、私のこの病気を治そうと医学・科学・心理学等あらゆる学問を全て独学で勉強、研究したみたい。


お陰で科学バカマッドサイエンティストって呼ばれる様に。


…毎日学校の授業以外では白衣を着ているし、本人は苦笑するだけで否定してないんだけどね?


そんなルー兄が言うには如何やら私の"超能力"が関係しているらしいんだけど…。


え?オカルトじみてる?


そう思うかもしれないけれど、実際私は使えるんだよ。


私は体の一部に触れると他人の思考が読める。


だから、握手とかするだけで相手が今何を考えてるか分かっちゃうから…怖いんだけどね。


こんな力要らないのに…。



「ほら、ひ~くん起きなさい」


「リカ…もうちょっと寝かせてくれ…」


「もぅ、しょうがないなぁ…。


 ま、出勤時間まで時間があるから、もう少しだけ寝ましょうか。…お休みなさい~」


「「「……」」」



…聞こえなかったフリをして、私達はリュウ兄が作ってくれた朝食を食べ始める。


トースト、野菜のコールスロー和え、ハム、ココア、ヨーグルト。



「兄さんが作る料理は、無駄に美味過ぎるんだって…。


 偶には不味いものも作ってよ。…僕の下手さが目立つから」


「それ、褒め言葉なのか…?」



リュウ兄は料理がシェフ並で、食材に対するこだわり様も凄く、パンやヨーグルトは自分で作るし、野菜も近所のおじさんの有機栽培のをおすそ分けしてもらっているらしいんだよ。


ある意味リュウ兄も変わり者だと思う。


ルー兄がそういえば、と私とリュウ兄に顔を向けた。



「あ、そうだ…コレ耳に付けてみて?昨日やっと完成したんだよね」



「色面倒だったから適当に菫色にしたけど…良いよね?」と言われて出されたのは片耳分のピアスだった。


シンプルなデザインで流涙状の形をした紫水晶(アメジスト)の様な石が、細いチェーンについている。


私達が通っている高校はピアス付けててもokという比較的緩い校則なので気にせずに付けた。



「で、これはどんな効果があるんだ?璃音が作ったんだから何かあると思うが」



興味津々なリュウ兄を説明するからとルー兄が宥める。



「これはね…付けてる人同士、心の中で会話できる…つまり"念話"が出来るようになるんだよ」


「「えぇぇぇっ!?」」


「澪羽の"超能力"を研究してたら出来そうだなって」



普通に考えて大発明だよね…?これ…。



「璃音…おまえ凄すぎだろ…」



リュウ兄がぽかーんとしているよ…。



「どうやって使うの?これ」



とりあえず、唖然としているリュウ兄は放置して質問する。



「使い方は簡単、話しかけたい相手を思い浮かべながら、心の中で話しかけるだけだよ。ただ、さっきも言ったけどピアスを付けてる人にしか届かないからね。


 色が全部御揃いなのは、念じると同じ色の人に届くんだよ」



『へぇ…凄いね!!』


『うぉ!?ホントに聞こえた!』


『距離関係なく届くから、地球の反対からでも時差なく聞こえる筈だよ』


『…璃音、お前本当に人間なのか?』


『失礼だなー、僕が正真正銘人間なのは兄さんが良く知ってる筈だよ?』


『確かに。…って、もうそろそろ時間だな。家出るぞ』



ほんとだ、何時も家を出てる時刻まで後3分しかない。



「母さん達は多分まだ起きてこないだろうから、ご飯はラップに包んでおくね」


「ああ、ありがとな」



確かに、お母さん達はああなると当分起きてこないんだよね…。


…という訳で放置する事に決めた私達はいつもの様に学校に向かう為に家を出たの。



この時はただ、いつもの日々が訪れるだけだと思っていたんだ。


…まさかこの後あんな事になるなんて思いもしなかったのだから…。

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