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龍と獅子と猫の物語  作者: Neight
第1章 ウェスタリア王国
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第6話 過去⑪

《side:璃音》


「……」


「……」



紅茶を啜る音が張り詰めた空気の中で妙に響く。


皆、重い空気で喋り出せないのか、その場を取り繕うように紅茶を飲んでいる。


…いや、まぁ、原因の9割は僕なんだろうけれど。


もう既に怒りは冷めてるんですが…誰も気が付いてくれないし…。


…ま、いっか。



「…で、続きを。後半は焔達の事しか判らなかったから」


「は、はい…」



父さんに微笑みかけると引き攣った表情をした。


父さんはゴクリと生唾を飲み込んだ後、意を決した様に姿勢を正した…というか、椅子の上で正座させてるんだけど。



「…天界は昔“天界の長”様とその御子息様…三神ことジークフリート様、シルファリオン様、レーファ様によって治められていたんだ」



うん、それはさっきの映像に紹介されてたからね、知ってるよ。


泣かせちゃ駄目なんでしょ? 長様は、ね。



「…ところがある時、一つの世界の消滅をきっかけに平穏が過ぎ去る事になる。


 その世界は、人間の負の感情が多過ぎて世界を侵食し、バランスを崩し、闇が世界を喰らい、消滅してしまう。


 天界と魔界があるのだが、天界の神や天使は光を制御し、魔界の魔神や悪魔は闇を制御しているんだ。 

 光属性と闇属性が無闇矢鱈にぶつかるとそれこそ下手をすれば総てが消滅しかねないから中々手を出せなかったんだよ。


 だから天界にいる者は闇に干渉が出来る者がおらず、その世界が消滅する一部始終を誰もが何も出来ずただ観ている事しか出来なかった…。


 その後、連鎖反応の様に次々に別の世界までもが消滅してしまった。


 天界の神と魔界の神…ややこしいから天神と魔神と言う事にする…は、実際、物語で語られている程中が悪いって訳では無く、寧ろ仲は良好だった」



…仲良いんだ…。



「天神達は魔神達に闇の侵食を食い止められないかと協力を要請したのだが…魔界でも問題が起きていたらしく、とてもじゃないがこちらの要請に応えられないと返って来た。


 天界と魔界は唯一無二だからどちらかでも崩壊すれば総てが消滅しかねない為無理に頼めなかった。


 天神達は迷いに迷った挙句…ジークフリート様とシルファリオン様の属性を変換する事にした。


 ジークフリート様は闇を抑える為闇属性に、シルファリオン様は闇を消す為に“無”属性に。


 その所為で美しかった金髪と金眼が属性色に変わってしまったのだが。


 本来、それだけ高位な神が変換すると、本来は光と闇のバランスが崩れてしまうんだけど、レーファ様が2人分を受け持った為、そんな事にはならなかったんだ」



昔の兄さんと僕が金髪金眼…!?


似合わない…。


というか、レーファもレーファで十分規格外だよね?


3倍…いや実際はもっとだろうけれど負担かかっていた筈だろうし。


流石、澪羽の前世!


前世でも僕の妹だしなんと言ってもあのt(以下略


…あ、ごめんね?


如何やら前のアレがあったから少し壊れやすくなったみたい。


き、気にしないでね。



「“無”属性は属性を総て“無”に還す属性であり、ある意味では光や闇よりも強力であり…その分負担も大きい為どの世界にも存在しなかった属性でもある。


 シルファリオン様は体質的にあったのかそんな無かった属性をいとも簡単に創り、取込んだ。


 ジークフリート様も問題無く、変換できたのだが…その頃には既に闇はとても1人では抑えきれない程にまでなっていた。


 2人は“規格外”だったから属性転換できたのであって、本来の神ならば転換する時に身体が耐え切れず消滅してしまう確立が非常に高く、危険だった為に、行う事が出来なかった。


 そこで、ジークフリート様は“闇”属性の神を創る事にしたんだ」


「…それって若しかして」


「ああ、ボクだよ」



…やっぱりね。


天神で黒髪黒眼って言うのは珍しいなと思っていたけれど。



「…当時、タルタロスは長と三神が創り出した数多ある“世界”の死者と地獄を監視・管理する役割を与えられた神の1人だった。


 崩壊が起こる前までは、とても律儀で生真面目な男だったが、この事をきっかけに彼は人を消そうと裏で暗躍していたらしい」



タルタロス…ねぇ。


人間ではありえないぐらいの鋭利な美貌の灰色青年、か。


ふふふ…イケメンなんてマジで死ねばいいのに。


…暗示で自殺や呪殺も良いけれど、苦しませながらジワジワ…の毒殺も捨てがたいな…。


あ、いけない、いけない…黒い思考をしている場合じゃなかった。



「その起こしていたのが映像にもあった“瘴気”なんだ。 …ボクはそれをしたら余計に世界が滅ぶと思うが…」



…確かに。


生物が“瘴気”に感化されて魔獣化したら如何するんだろうね…?



「まあ、タルタロスは天界では鬼才の天才とも呼ばれていたから何か考えがあっての事だろうけど…そんな感じで対立したって訳さ」



頭脳派?


…いや、きっとあれだけ巨大な斧振り回してたし、恐ろしいほど破壊力もあったから両方、か。


かなり厄介なんじゃないのかな、それって。



「うん、で話は変わるけど、父さんはあのフード(笑)なんだよね?」


「(笑)って…まぁ、そうだ。ボクは、焔達と一緒に逃げたよ。…彼らを殺したというのにね」



父さんは自嘲気味に笑った。


…更に怒る気力がダウンしたんだけど…。


父さん気が付かずにことごとくフラグ圧し折ってるんだけど。


って、そんな事は如何でも良くて…


僕が一番聞きたい事はそうじゃない。


ほとんど確信を持っているんだけど…“確実”ではないしね?



「父さんの本名…ルシフェルで元魔王さんなんじゃない?」


「…はぁっ!?」


「ぶふっ!?」


「き、きゃぁぁああ! タオルタオルー!!」


「これ使って!」


「ありがとう!!…ってそれちがう!?」



僕は悪くない!


隣で何かもの凄い事になってるけど気にしない!


…ポチが紅茶を飲んで吹いた先に居たのが母さんで、澪羽が咄嗟に差し出したのが母さんのチューリップのアップリケが付いたエプロンだなんて知らない。


というか、何故ポチが吹いた…?



「げほっげほっ…ごほっ」


「…何故にポチが吹くんだ」



兄さんが驚きから呆れた表情に変え、代弁してくれた。



「…まぁ、色々あったんですよ色々と」



…はぐらかされた。


まだ短い期間しか一緒に居ないけれど、ポチは実はかなりの頑固者だって事はわかっている。


多分、こうなったら意地でも言ってくれないだろうからね…自分から言ってくれるのを待つしかない、かな?


…よし、これから少しずつ誘導して情報を集められる様にしよう…!


ふふっ、また楽しみが増えたよ。



「で、どうなの?」


「…ま、まぁ、そういう事かな…」



うん? 父さんが珍しく素直に認めたよ。


明日雪でも降るのかな?



「さて、“本題から随分迷走して全然関係ないけれど意外と今後関ってくるぐらい重要な話”をしている所だけれど、これ以上話すと抜け出せなくなるし…まぁ、気になる人は続きはWEBでね?


 …正直父さん弄りは飽きちゃったしこのぐらいにして、王国建て直し計画の話をしようか?」


「…ボクの勇気ある告白の意味はっ!?」


「父さん、諦めろ。璃音はこういう奴だ」



兄さんが項垂れた父さんに近づいて、哀れみを込めた眼差しを送りながら哀愁漂う背中にぽんっと手をおいた。


…あっ、因みに続きはその内明らかにしてみせるよ?


後でじっくりと、ね…?

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