第6話 過去⑤
※残酷・流血描写ありです。
《side:劉夜》
璃音(?)が爺さんの背後からレイピアを突き刺した。
背中合わせに降り立った時には既に左手の手元から剣は消え、後ろに立っている爺さんに刺さっていた。
映像はあくまで記憶であり、猪の動体視力に影響されるらしく、戦神だから低い訳無い…筈だよな?
そんな奴でも見えないって…凄いな…。
それにしても、宣言通りに即死だろうな、コレ。
“神殺し”を持っているらしいからなぁ…。
剣自体が淡く発光してるんだが…それが関係有るのか?
『……………』
『…次回何処かの何かに転生する時は父さん…じゃなくて“天界の長”を尊敬して裏切ったり無視したり放置したり泣かせたり餌付けしたりしない様に~。
…重要だよ?明日の課題テストに36.9%の確率で出るからしっかり復習しておく様にー』
静まり返った空気の中、璃音(?)がふざけた発言をした…。
流石にこの空気で乗る猛者は…
『はーい、シルファリオン先生ぇ~』
…いた。
真面目にメモを取り出して書いてる髪の毛を2つに分けてそれぞれ3つ編み…お下げにした天使が。
「死んでる奴にテストだすのか…」
「鬼畜ですね…。しかも36.9%って、もの凄く微妙です」
「確かに…って、いやいやいや、ヴァルとポチ、突っ込む所そこじゃないからな!?」
思わずノリツッコミを…。
というか、普通は“裏切ったり”は良いとして…“無視したりetc…”の方に突っ込まないか!?
特に“泣かせたり餌付けしたり”は如何考えてもおかしくないか…!?
それに猛者さんに対してコメントは無いんだろうか…。
って、また話がそれた…閑話休題。
璃音(?)は、踵を返し剣をさっと抜いた。
剣や槍などを相手に刺した場合、それらが傷口の蓋になる。
だから刺す時よりも抜く時の方が血が流れる訳で…
ビシャッ…………ドサッ
心臓を刺したのもあるが、案の定、爺さんの傷口から血が噴き出、それが合図の様に倒れた。
剣を抜いた璃音(?)は勿論1番近くに居る訳で、諸に鮮血を浴び、白い服が一気に血に染まる。
それを一切気にせず、剣先からポタポタ垂れている血を落とす為に軽く素振りをした。
地面にやや孤を描いた生々しい赤いラインが浮かぶ。
ある程度血が落ちると、剣を前に掲げ、出した時と同じ様に光に包まれ…消えた。
鮮血は頬にもついたらしく、重力に逆らわず、つぅ…と下に流れる。
璃音(?)は黒い薄ら笑いをしながらそれを……舐めた!?
思わずばっと璃音の方に向き直る。
皆も同じ様で…全員ほぼ同時だった。
勿論ヘヤノスミスとフレンド条約を結んだらしい水簾も、だ。
璃音の顔は…引き攣っていた。
「璃音…人の血を舐めるという趣味が…」
「無いからね!?」
「これまたマニアックじゃな…」
「だから違うって!!」
『…うわ、まっず…やっぱり老人の血は飲めたものじゃない…』
言い合ってる最中、タイミング良く(?)璃音(?)が(璃音にしか被害が起こらない)爆弾を投下した。
「…え~、今のは…」
「明らかに…」
「今まで他人の血を飲んだ事がある…って事だよね?」
「りっくん…貴方ってば実は吸血鬼だったのかしら?お母さんショック…」
「ち…違っ…」
「…ある意味13日の金曜日の某チェーンソー男並に怖いな」
「父さん酷い…」
「ルー兄…そんな趣味が有るなんて…失望したよ…」
「……うわぁぁぁあっ………!」
璃音と同じでタイミング悪く(映像だけど)璃音(?)が空気読めない発言をした所為で舐める所か、飲むにランクが昇格、更に澪羽が留めを刺した為…
「あぁ…僕は変な奴だよ…前から自覚してたさ…確かに今まで飲む機会はあったよ…父さんの手伝いをしていた時なんて相手の血が流れ放題だったんだからね…でも、一度も飲みたいなんて思った事なんて無いよ…いや、そんな事はどうでも良い…良いんだ…澪羽に見捨てられたんだから…今まで嫌われない様に細心の注意を払い、“細部にまで気が利く優しくて賢くて頼りがいがあって格好良くて漫画の中に出てくる様な王子様みたいなお兄ちゃん”をモットーにしていたのに…あれ?おかしいな?目から水を主成分に、アルブミン、グロブリン、リゾチーム、食塩、燐酸塩その他諸々が…」
「………ヘヤノスミスのお友達第2号完成だね?」
「……だな。というか態々遠回しに言わずに涙って言えば良いのに」
璃音は水簾とは反対側の隅で体育座り(笑)をしながらブツブツ何かの呪文を唱えだした。
…というか…そんなモットー掲げていたのかよ…。
全員(特にヴァル)が生暖かい眼差しを送った。
『…さて…と、御次は誰だい?』
無情な事に、映像の中の璃音(?)は笑みを浮かべながら話を進めていく…。
『…誰も来ないって事は、全員かな?』
『それなら加勢する』
『私もしますね』
お、俺(?)と澪羽(?)が参戦するのか?
これは面白そうだな。
特に澪羽(?)が如何戦闘するのか…。
(約2名という名の一部を除く)俺達は、固唾を飲んで再度パソコンの画面に集中した…。




