第6話 過去④
《side:澪羽》
リュウ兄が頭抱えながらブツブツ言い出しちゃったから、交代したよ?
というか、ずーっと突っ込みたかった事があるんだけど…さも当たり前の様に伝説の武器の名前が出てくるけれど、全くわからないからね!?
一般人にはマニアック過ぎて訳わからないよっ!
デュランダル以外聞いたこと無い気がするもん。
ヴァルとポチの武器は名前すら思い出せないし…。
っと、そんな事言ってる場合じゃ無かった…私も現実逃避してるのかな…?
じゃあ、閑話休題ね~。
『…小癪な真似を』
『洗脳した奴は誰だい?…消してあげるから』
『私も賛成です。…日頃のストレスが貯まっていますので』
今、3人の前には沢山の神様や天使がいる。
私達にソックリではあるけれど、同じ様で違うんだよね。
何と言うか…言動もそうだけど、雰囲気がって言えば良いのかな?
でも、根本的な所は同じ様な気がする。
私達の性格を極端にすればこうなりそうかな。
その間を分けて出てきたのは、焔ちゃんと水簾くんと謎のフードさん。
フードさんはリュウ兄ソックリさんと同じぐらい真っ黒黒介な服装だよ。
焔ちゃんと水簾くんは虚ろな目をしていて、正気じゃない事は明らか。
フードさんは分からないけど、多分同じじゃないのかな…?
『………』
リュウ兄ソックリさんは無表情で冷気の様な殺気を放ち、猪さんを睨みつけてる。
『早く出てきなよ。 今なら…苦しまない様にしてあげるから』
…あ、ルー兄ソックリさんがどす黒いオーラを放ちながらクスクス笑い始めた。
すると青い顔をしながら1人の白い髭を生やした神様…というより仙人みたいな人が出てきた。
余りにもルー兄ソックリさんの微笑みが恐ろしいのか、私ソックリさんに助けを求める様に懇願の眼差しを送る。
『御顔が真っ青ですね。 貴方、私達に喧嘩を売るという意味を理解していたのですか?
…あらあら、小鹿の様に震えちゃって…可哀相に…でも残念ながら貴方の容姿だと可愛くないわよ?…この愚図が』
小首をコテンと傾げ、ふわりと微笑みながら言い放つ。
顔は笑っているんだけど…棒読み…。
自分と同じ容姿の人がやっても全然可愛くない。
美人な人がしたら破壊力抜群なんだろうけど、所詮、私だし…。
というか、自分が結構黒い事を自覚していたけれど、私ソックリさん黒過ぎる…。
何あのブラックっ!?
恐すぎるよ…っ!!!
あ、黒いと言うより毒舌成分多めなのかな?
…女王様気性乙だね…。
『ひ…ひぃぃっ!!』
頼みの綱(?)の私にバッサリ切られ、精神をどん底まで落とされた仙人さんは視線をルー兄ソックリさんに戻し、ガクガク震えながら後退りする。
もう顔は真っ青通り越して真っ白になっちゃってるよ…。
『僕達は何で君達よりも上位なんだろうね?』
『あ…ああ…っ!い…命だけは…っ!!』
『ほぉ…良くわかってるじゃないか…。
そうだよ、普通、神は死なないし殺せない…躯を破壊出来たとしても年月をかければ再生できるからね』
だけどね?と続けるルー兄ソックリさんは…畏怖というより恐怖を覚えるのに充分な、黒い笑みを浮かべる。
『僕達は神々を束ねる父上の直系…長の補佐だから世界を新たに創り、定期的に綻びや異常が無いか探したり、書類処理等している訳だけど、断罪者でもあるんだよ』
ざっ……ざっ……
態と音を立てているのか、静まり返った森では足音がやけに大きく聞こえる…。
ルー兄ソックリさんは、仙人さんにゆっくりと近付きながら左手を横に掲げる。
手元から平行に白い光が集まり、輝きが収まると、一降りの装飾が美しい純白な細身の長剣になった。
…って、どれだけ白が好きなんだろう…?
服装は勿論、髪の毛や目も白いんだよ?
あ、でも、目は銀色掛かった白かな。
その上剣まで…物好きだよね~。
『だから僕達は…神だけど“神殺し”を持ってるんだよ』
仙人さんは、恐怖で脚がすくんだらしく、よろよろとその場に崩れた。
『…それが分かっていて今回行ったんだよね?』
『わ…儂は』
『言い訳なんて聴きたく無いし、言って良いなんて言ってないよ』
言いかけているのを遮ると、そうだと立ち止まり、剣を持ちながら器用に手をぽんっと打ち鳴らした。
『僕に5分以内で独りで一撃を入れる事が出来たら消さないであげるよ。
僕は手を出さないから、君は神力でも何でも使えば良い。 掠るのもカウントしてあげる』
『…ふえっ?それで良いのか…?』
『うん、僕に二言はないよ』
仙人さんは少しばかり顔色を戻した。
かなりのハンデを貰っているから行けると思ったのかな?
…でも、私は多分不可能だと思う。
だって…ルー兄のソックリさんだよ?
仙人は欝すら笑う事が出来るぐらいまで復活した様で、杖を具現化させてそれを支えに立ち上がった。
言葉の効果って凄いね~。
『何時でもどうぞ』
ルー兄ソックリさんはそういうと姿勢を軽く崩した。
『【岩石双鎗】』
早速仙人さんは詠唱破棄で地面から鋭く尖った岩を突き出す。
ルー兄ソックリさんは軽く地面を蹴り、飛び上がって回避するとふわりと着地する。
…神様も厨二なんだね。
『【魔矢】』
着地と同時に様々な色の矢状の光線が突き刺さる。
一瞬視界がホワイトアウトした。
仙人さんは満足そうな表情をしている。
大丈夫なのかなこの人…。
だって、その程度の攻撃なら私にでも出来るし、ルー兄でもかわせる。
当たっても結界を張って無傷だよ?きっと。
猪さんの目が慣れてきたのか、視界が元に戻ってきた。
『それだけかな? 動きが単純だから誰にでも防げるよ。 まだまだ時間は有るけれど、続けるかい?』
「あの爺さん大丈夫か…? 死亡フラグ立てまくっているけど」
「確実に殺されるね、僕にソックリな人に…ある意味可哀相にだね、あのお爺さん。
生暖かい眼差し送っておこうかな? …過去の映像だけど」
「だな…私の父上と交換してほしい立ち位置だな」(ボソッ)
「…ヴァル、璃音に感化されたか…?」(ヒソヒソ)
「かも…」(ヒソヒソ)
「ご愁傷様です…名も知らない御老人…」
「…皆さん、老人老人言ってますけど、あの人一応神ッスよ…?神は生まれた時から既に見た目は決まってるんッス。
自力や力を使い過ぎたりしない限りは見た目は変わらないッスから」
…水簾が突っ込み&解説をしたけれど、全員再度パソコンに集中した所為で華麗にスルーされてヘヤノスミスとお友達になりました。
『な…!?』
仙人さん…気付くの遅いよ…。
また顔が真っ青になった。
あの人、百面相得意なのかな?…と思うぐらいに顔色がころころと変わる。
ある意味凄いね~。
『早くしないと…時間切れになるよ?』
『う…うわぁぁぁぁあ!!!』
あ…仙人さん自棄になっちゃって、出鱈目に神力使い出した。
自棄になって当てようとしているもの程避けやすいものはないよね。
普通にひらひら回避していたよ。
『もう無理かな? 3…2…1…終了…さようなら』
背後に降り立ち…あれ?何もしてない…?
「「…!?」」
「え? お兄ちゃん達如何したの?」
「見えなかった…」
「確かに…映像だからもあるけれど…」
え、何が?と聞く前に、理由は直ぐに分かったよ。
だって…ルー兄ソックリさんの手元から剣は消えていて、仙人さんの心臓付近を後ろから貫いていたのだから…。