第6話 過去①
《side:澪羽》
「…う、ん…?」
「あ、おはようございます」
如何やらあのまま此処で寝ちゃったみたい。
ポチが気づいて会釈してきた。
おはよーって返すと、私まで笑顔になる様な爽やかな笑みを返してきた。
「あれ、皆は…?」
「皆さんはもうそろそろ…あ、来ましたね」
ポチがそういうと…
「お、起きたのか」
「お早う」
ドアが開いてポチと同じ様に清々しい笑みを浮かべた皆が戻ってきた。
ん? 何だろう…この違和感…?
「引っ張るなぁ…ズボンが破れたら如何するんだよぉ…」
何処からか声がすると思ったら、リュウ兄の手に持っているロープに括り付けてあるボロ雑巾になっている海藻がいた。
「ヘンタイは許せるけど海藻は許せな…」
「黙れ」ゴンッ(頭蓋骨骨折)
「土に還りたいかな?いや還れ、ほら手伝ってやるから」ドスッ(腹部強打)
「僕の実験体になってくれるの? わぁ、うれしいな~」ジュッ(顔面火傷)
「ぎゃぁぁぁぁぁあああ!? 目がぁ…目がぁ…!!!」
リュウ兄の肘鉄とお父さんの膝蹴りとルー兄の謎の薬品がかかった。
…なるほど、ストレス発散したから皆の顔がすっきりと…。
確かに天使は死なないらしいから格好の相手だね。
焔ちゃんの事が心配で聞いてみると、大丈夫だった様で、水簾が作った亜空間で休ませているとか。
よかった…あんな光景を見たから…。
「で…何で澪羽を誘拐したのかな?」
お父さんがしゃがみ込んで雑巾と顔を合わせると極上の笑顔で脅は…聞いた。
「………黙秘権を使わせてもらうねぇ…?」
「…“あの場所”に逝きたいかい?」
「新しい天界の長に命令をもらいましたというのもありますが、俺個人としましては、貴方様のご子息様の実力が知りたかったのでありますっっ!!!だって顔そっくりだしっ!?」
“あの場所”って単語を聞いた瞬間、顔を引きつらせながらペラペラと気持ちがいいぐらい喋りだした。
…どれだけ嫌いなんだろう…??
気持ち悪い口調まで変になったし(笑)
って、そっくりさんがいるんだーへー。
「じゃあ別に姉さんをあそこまでする必要は無いんじゃないんッスか?」
「【スティング】が何処まで効くか知りたくて…でも俺、自虐するの嫌だし」
「そんな私用で? …聖さん、やっぱりこいつ“あの場所”に閉じ込めても良いッスか…?」
「んなぁあああ!? そんな事は流石にしないですよね聖s」
「そうしようか」
「ええぇぇっ!?」
涙目になりながら必死に抵抗してるし(笑)
“あの場所”がかなり気になる…!
「“あの場所”って何処?」
「…ボクの亜空間」
お父さんの亜空間の中かぁ…物凄く納得できる…。
「じゃあ、開…」
「止めてくださいお願…」
はばたいーたーら もどらなーいといって~♪
…え?
「は? 何故ブルー●ード?」
「…ツァドちゃんに貰ったからだよっ、悪いかっ!!」
…と思ったら海藻のケータイでした(笑)
海藻は連れて行かれそうだったのでほっとしてる。
リュウ兄がポケットから引っ張り出して、皆に聞こえる様にしてから、海藻の耳に当てた。
「…もしもし?」
『やっほー。 ツァドキエルだよぉ~』
噂のツァドちゃんからでした(笑)
「ツァドちゃん!? 助けてよ、捕まっちゃったんだよねぇ…俺」
『はぁ? やだし~ 流石にボクが不利だもん』
「な…薄情…」
『他のやつなら何とかなるけど、バカ夫婦がいるから嫌なのぉ。 ギャグ補正とかありえないしぃ』
ギャグ補正…?
ソレってそんなに怖いの?
『どんだけスローな攻撃でも補正が少しでも入ると当たるとかありえないもん! 痛いから嫌ぁ~』
うわぁ…チート…だよね、それ?
『じゃあ、ボク、呼ばれたからアデュー』
「え、ちょっとま…」
ブチッ…ツーツーツーーーー
「「「「「「「「「……」」」」」」」」」
…冷やかしの為だけなのね。
お父さんが海藻の肩の上にポンッと手を置いて生暖かい眼差しを贈った後…
「……って、ええええぇぇぇ!?」
バックに亜空間を出現させ、中に投げ入れました。
結局入れちゃうんだね…亜空間に。
「じゃあ、一旦地下に戻ろう」
そしてヴァル、今起きたこと無かったことにするんだね?
…ま、いっか。海藻だし。
と言う訳で(?)私達は屋敷をでた。
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「…という事があったの。 焔ちゃん」
「なるほどの~。 確かに聖の亜空間は恐ろしいのじゃよ…」
地下に無事戻り、今は私の部屋に全員集合。
その前に私は帰って直ぐにお風呂に入った。
ん? 何で、夜に入らなかったのかって?
私、朝風呂派だからだよ。
まさか海藻が来るとは思ってなかったけど、もし入ってたら覗かれてた危険性があったんだよね?
…朝風呂派でよかった~。
お父さんとお母さんは地下に来る時、認識阻害張ったまま入ったの。
何で?って訊いたら、説明がめんどくさいからみたい。
そもそも、皆の記憶からお母さんに関する記憶の一部が消えてたのは、自分で掛けたみたいで…海藻とヴァルとポチは自己判断でそれぞれ黙ってた方が良いかなって事で演技(?)をしていたみたい。
お互いにお母さんを知っていたのには驚いたらしいけどね。
まぁ、お父さんが張るのはきっと元職業がアレだから癖(?)なのかな。
…ともかく、全員集まった頃に、焔ちゃんが目を覚まして出てきた。
大丈夫?って訊いたら、驚いた顔をしていたよ。
如何やら、数百年後だと思っていた様で、暫くぽかーんとしていた。
ポチが、あれから数時間しか経ってないというと、顔をくしゃっと歪めて…水簾に抱きついた。
水簾も相当心配していた様で2人で泣きながら抱き締め合っていたよ。
…身長差が凄い事は言っちゃ駄目なんだよ?
焔ちゃんが落ち着いてきたのを見計らって、焔ちゃんに、さっきあった事やお父さん達にも説明しなきゃいけなかったから、復習も兼ねて今まで起きた事をまとめて説明する。
とりあえず話し終った時お父さんがお城の方を気にしている様だから訊いてみると…
「そういえば、何か城の方から1つ、人間じゃない気配があるんだけど」
…え。
「父さん、何処から…?」
お父さんは、ちょっと待ってというと、意識をお城に飛ばした。
「ん~…高い所で、窓が北側にあって、机の上に多種類の資料があるから…」
「恐らく執務室…だな。そいつはどんな…?」
「深緑の長衣を着ていて同色の髪で老け顔」
「…宰相か」
「宰相って何年前からいるのかな?」
「20年前だ。…だとすると当たりの確立が高いな」
…えーっと、ソレって宰相が黒幕って事?
そういえば様子がおかしくなったって言ってたし…つまり、国王様操られていたとか?
「宰相ね…なるほど。 ちょっと探り入れてみるね」
ルー兄が怪しく笑った。
ってどうやって…?