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龍と獅子と猫の物語  作者: Neight
第1章 ウェスタリア王国
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第5話 誘拐⑨

《side:劉夜》


焔はミカエルと戦いだした。


焔は巨大な鏡を出して攻撃を跳ね返していた。


あれって、“ラーの鏡”じゃん。


というか、バタバタ倒れてる下級天使っている意味あるのか?(汗)


完全に無駄死にだと思うのは俺だけか…? いや、そうではないだろう(反語



「さーてぇ、ボク達も始めよっか!」


「「「「…!?」」」」



連れてきた本人は全く気にせず此方を見てきた。


瞳孔が縦に割れ、赤い瞳が狂気に染まる。


放たれた気は狂気が濃厚。


普通の人だったら発狂しかねないほどだが、ここにいる人は誰一人一般人じゃない。


まぁ、顔が青くなったり、震えてはいるんだけど。


俺もそうなのだが…気合でねじ伏せた。



「…何なのさぁ?普通なら倒れてもおかしくないんだけど…最近人間強くなったのかなぁ?」



何かぶつぶつ言っているけれど気にしない。


俺は先手必勝とばかりに、足に気を集め音速で駆ける。



「っらぁ!!!」



デュランダルが風に包まれる。


直接触れなくても、風が纏わり付いていて、切り裂く事が出来る。


加速して近づいた勢いをそのままに体を捻り、切り掛かる。


あっちの世界じゃ魔法なんて無かったから、端から見たら、ただの痛い回転切りだったんだけど。


だが、サラリとかわされる。



「【ブリザード】!!」



ヴァルも俺が後退した瞬間、氷の塊を俺に向けて飛ばしてくる。


俺は剣を振り、纏わせた風で細かく分け、速度を加速させる。


当たると思ったのだが…



「こっちだよぉ~」


「なっ!?」


「…!?」



鋼の様に強固な翼に攻撃をかわされたと思ったらいつの間にか俺の後方の遥か上空にに浮かんでいた。


彼女は背中の羽から1枚羽を抜くと横に振る。


羽が俄かに光り、小ぶりな剣になった。



「ん~二人とも初めてにしては中々のだけどさぁ~、…甘いよ?


 じゃ、ボクからも行かせて貰うよぉー」



羽を折りたたみ、俺に向かって斬りつけてくる。



「ぐ…うっ!」



剣で受け止める。


上からのと言うのもあるが、小柄な体の何処にそんな力だあるのか、かなり重い一撃を食らい堪えきれずに後ろに下がった。



「…【土遁 岩柱槍(がんちゅうそう)】」



璃音が素早く印を組み、ツァドキエルの足元ピンポイントに大量に槍状の物が出てきて、串刺しにしようと襲い掛かる。


技名を言ったのは、俺に何が起こるか知らせる為だろう。


お陰で回避できた。


ツァドキエルも同じく回避したのだが、まさか刀が飛んで来るとは思わなかったのか一瞬避けるのに遅れた。



「わぉ、危ない危ない…」



髪の毛が数本巻き上がる…それだけ。


ツァドキエルは己の髪の毛を手で弄ると満足そうに口を歪めた。


その時



「はっ!!!」



ポチがツァドキエルの死角から素早くクロス状に斬り上げた。


それを防ごうと羽を伸ばしたが…。



「あ゛ぁっ!?」



ポチはそれを避け、羽の付け根を切りつける。



ドサリ…



俺の攻撃が防がれた時はあれだけ強固だったのにもかかわらず、1対の羽は簡単に地に落ちた。



「ポチ…弱点とか知ってたのか?」


「ええ、何度か天使と戦いを交えましたから。


 天使は翼の枚数が増える程強くなりますので、倒すには早めに切り取らないと後で倒せなくなります。


 …倒すといっても十数年後には復活しますが」



なるほど、羽を切り落とせば良いのか。



「ふふっ…あははハはハハははハはハハハッ…?」



突然、ツァドキエルは俯きながら笑い出した。


その声は、壊れた機械から発せられる様な、狂った笑い声で…。



「…いや、ある意味斬らなかった方が良かったかもしれない」


「だねぇ…相当キレてる…いや、壊れたよ、彼女…」



ヴァルと璃音がツァドキエルを見ながら引きつった表情をした。


ツァドキエルはばっと顔を上げる。


此方を向いた顔には、三日月形に開いた口と前髪の合間から覗く赤い瞳が禍々しく輝いていて───背中に10枚の羽が生えた。



拙い拙い拙い拙い拙い拙い拙い拙い…!!!!



それを見た瞬間俺の中で警報が鳴る。



「お前等全員しんじゃえ…」



ゆらゆらと此方に近づいてきながら手を上に掲げようとして…



「突撃! 隣の【百烈拳(ひゃくれつけん)】ッス!!」



バババババババババッッ!!!!!!



「がぁっ!?」



それ、晩御飯じゃなかったか…?


…それはさておき、ツァドキエルが横からの奇襲に吹っ飛ばされた。


先ほど彼女が立っていた場所には別の人物が立っていて。



「皆さん大丈夫ッスか!?」



くるりと振り返ってこちらに向かって走ってきた。


長めの蒼い髪を後ろ束ね、焔と同じ金眼。


男なのか女なのかハッキリと分からない美形な顔。


群青色の着物を羽織っているという和装。


服装とやや低めの声からして多分男…なのか?



「…何処にも怪我はなさそうッスね。 …よかった~」



見た目年齢父さんと同じ(20代前半)な彼(で合ってると思う)は、ほっとしたのかふぅっ…と吐息を漏らした。


…うん、分からん。


誰か状況説明ぷりーづ!



「彼は水簾って言ってね、焔の弟だよ」



…っは? 逆じゃないのか? 如何考えても10以上年は離れてそうなんだけど…。



「焔ちゃんは力使いすぎちゃったらしいから省エネモードなんだって~」



ああ、なるほどな~。


…ってこの声何処かで聞いた事がある様な…?


4人が同時に声のした方に振り向くと、そこには…


夜色の和服を着た(見た目年齢が)若い男性と、左胸付近にチューリップのアップリケの付いた薄ピンク色のエプロンを着た(見た目年齢が)澪羽ぐらいの女性がいた。



「父さんと母さん…!?」



…はい、如何見ても俺と璃音の両親です。


ただ…ひとつ突っ込んでも良いか?


手に持ってるものは如何見ても…



「母さん、手に持ってるのって…」


「え? これ、私の最強武器よ?」



…“おたま”と“フライパン”じゃないかっ!!


“おたま”なら“なべ”とセット…、“フライパン”なら“フライ返し”とセットとか使えるようにしような!?


…え、突っ込みどころそこじゃないと…?


ゲフンゲフン、気のせいだ、きっと。


というかさっきからヴァルとポチが口をぽかーんと開きっぱなしで硬直してるのだが…。



「あっ…あ…ああ…!」


「あ…あぇあぉ…!」



2人は母さんを指を指しながら狼狽している。


多分今までで一番驚いた顔をしているな。


というか、何でそんなにも驚くのか不思議でしょうがない。


母さんの格好に驚いてるのか…?


んな訳ないよな~(笑)



「リィアっ…!! 消えた筈じゃなかったのか…」


「ひ…姫様…!?」



“リィア”? “姫”?


何処かで聞いた事がある様な…? 


…ああ、確か20年前の勇者の名前がリィアなんとかっていう皇女…



「「ってええええぇ!?」」



俺達2人は人生で一番大声で叫んだと思う。


あ、やべ、今深夜じゃん。


ってそんな事は良いんだ…誰かマジで説明ぷりーず…。

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