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龍と獅子と猫の物語  作者: Neight
第1章 ウェスタリア王国
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第5話 誘拐④

《side:劉夜》


「澪羽…っ!」



土砂降りの雨の中、夜になり静まり返った町を駆ける。


俺や璃音が気配に敏感だったからといって決して油断している訳じゃなかった。


部屋が隣だったから油断してしまった…。



「っ…くそっ!」



こっちは剣と魔法のファンタジー世界。


何が起きてもおかしくないのに油断していた自分が恨めしい…!



「絶対助けるから…!」



俺達は月明かりすら無い視界の悪い闇の中に足を踏み入れた。



―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―



最寄り駅の改札抜ければ~♪


頭にタオル乗っけて浴槽に浸かりながら鼻唄を歌う。


ファン●ンいいよな~。


古いとか言うなよ? この曲好きなんだから。


…父さんの元職業には突っ込んじゃ駄目だ。


というか、お風呂に入ると何かしら歌いたくなるのは俺だけ?


いや、そんなことない筈。


…上せてきた為、タオルを取り、良く絞ってからお風呂を上がる。


濡れたタオルを脱衣所の隅付近にある多分洗濯籠らしき入れ物に向けて投げる。



「ていっ!」



タオルは丸めてあった為、解けることなく綺麗に孤を描いてスポッと入った。



「…よし!」



それを見てガッツポーズをした後バスタオルで体を拭く。


タンスを開けると服があったが…何と言うか…その…どう考えても寝る時に着る様なラフな格好じゃなかったから、想像魔法で黒いジャージを作った。


中々上手く自分の思った通りの物ができた。


上機嫌で部屋に戻りふかふかで気持ちよさそうなベッドにダイブしようと勢いをつけ……



ダンダンダン!



走ろうと思ったら、扉を叩く音で遮られた。



「…何方ですか?」



少々不機嫌そうに言う。


扉を開けるとポチが立っていた。



「連絡があるなら念話で…ってどうしたんだ!?」



ポチの顔を見ると真っ青通り越して真っ白だった。


あ、いや…逆か。



「ミ…ミウちゃんが…!」


「澪羽が? 如何したんだ?」


「何者かに連れ去られた可能性がありますっ…!!」


「…っ!?」


『璃音、ヴァル、至急澪羽の部屋に集まってくれ!!』


『…ああ、今行く…!』


『了解』



直に念話を入れると、ポチの静止を聞かずに澪羽の部屋の扉を開けた。


焦りを押さえ、部屋をゆっくりと見回す。


そこには、澪羽はいなかった。



「これは…どういう事?」


「…っ!」



璃音とヴァルも着た様だ。


ヴァルも違和感に気がついたらしく、念話を入れようとした所で俺からのが届いたらしい。


俺と璃音は全く気がつかなかったのに、何故気がついたのかを聞いてみるとネックレスと腕輪に探索魔法かけておいたらしい。


道理で見た事無いアクセ付けてるなと思った。



「…とにかく、反応する方向へ向かおう」



璃音が無表情で言った。


かなりご立腹らしい…そういう俺もかなりムカついてるんだけどな…!


…異世界来てから怒りっぽくなってる気がする。


ストレスか…頭禿げるかもしれないな…。


今度特性煮干牛乳ドリンク作るか?…不味いけど。



「…待つのじゃ」



向おうとしたら、いつの間にか目の前にいた焔が止めた。



「劉夜と璃音が気がつかない相手という事は、人間じゃない(・・・・・・)という事じゃ。 行くのなら常識は通らないという事を覚えておくと良い…」



いつも無邪気な笑顔をしている焔とは別人の様に放たれる真剣な眼差しを見て、全員がゴクリと息を呑む。



「…気を抜いていると…死ぬ事になるからな」


「わかった」


「…気をつける事にするよ」


「ああ…!」


「はい…!」



待ってろよ…澪羽…!


窓越しに空を見ると空は今にも雨が降り出しそうだった…。



―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―



《side:澪羽》


「…うっ…」


如何やら誘拐されたらしい。


ゆっくりと目を何回か瞬き、暫くすると視界が鮮明になるのを待つ。


大分戻ってきた所で辺りを見回した。


複雑な模様の入ったタンス、ベッド、テーブルに2脚のロココ何とか様式のソファー。


私はソファーで寝かされているみたい。


だって、寝転がっている所が床よりも高いし、ソファーと同じで深緑色だから。


少しクラクラする頭を抑えながらゆっくりと起き上がる。



「あれ、起きたんだ?」



後ろから声がかかり、驚いて振り返る。


窓際にもたれかかって腕を組み、眼鏡越しにこちらを眺めている…ジェイルさんがいた。


直ぐに思考を読もうとするけれど…全く見えない。


…ここ最近分かった事なんだけれど、自分より強い人の思考は読めないみたい。


という事は、この人は私より実力が上と言う事になる。


…といっても私、魔力ぐらいしかチート要素ないのだけど。



「いや~やっとそのピアスの構造が分かったよ。 ずーっとこっちに居たからねぇ、“カガク”には疎くなっちゃって…」


「…なんで貴方が科学を知ってるんですか? それにこっちって…!?」



彼は一瞬唖然として、直ぐに呆れた様な顔になった。



「あの方、言ってないの…? はぁ…かなり重要な事なのに」


「あの方って誰なんですか…?」


「…まあ、その内分かるよ。…あ、安心して?今は別に君に何かをしようとは思わないから」



そう言うと、ニコニコしながら「喉渇いてない?」とティーセットを持ってきた。



「あっ、はい」



あ、この紅茶美味しい…アールグレイみたいな味…じゃなくて!


誘拐されてるのに何で和んでるんだろう…?


…この人誘拐犯なのに何がしたいのか分からない。



「目的は何なのですか?」


「目的? …うーん、詳しい事は言えないけど…ある人の命令受けたからかな。


 俺個人としては彼等の実力が知りたいって事だけどねぇ」



そう言うと彼はくすくす笑った。


誰かに命令された? …私達に恨みを持っている人って言ったら約1人ぐらいしか思いつかない。


でもその人頭回らなさそうだし、何より1人で特攻してきそうなタイプだからありえないと思う。


というか、感だけどこの人…



「どうしたのかな?」



私が彼に哀れみの視線を送っていると、気がついたらしく笑顔で振り返った。



「…貴方、近いうちに殺されかける気がします」


「ん? 君のお兄さん達にかい? 僕は“天使”だよ? まだ覚醒もしてないのに負ける訳ないよ」



「俺の心配をしてくれるんだ?」と彼はクスクス笑った。


覚醒…?いや、それよりも気のせいだったら良いんだけど…。


でも、彼の顔に思いっきり“死の相”らしきものがあるし、死亡フラグ立ててる様な…?


確信はないんだけれどお兄ちゃん達なんかよりもっと怖い存在が…?


うん、気のせい風のせい虫のせいだね、きっと!


…って、そういえば今、ジェイルさん“天使”って言ったよね…? 異世界だからありなのかな?


でも、羽生えてないよね? 天使ならテンプレのはずなのに…。


もしかしてリアル天使は羽ないのかもしれないな。


今度焔に聞いてみようっと。


ジェイルさんに敵意は無いと感じた私は2杯目の紅茶を貰い、のほほーんと和んでいた…。

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