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龍と獅子と猫の物語  作者: Neight
第1章 ウェスタリア王国
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第5話 誘拐③

《side:リカ》


「な…何で…貴女が…」



喉が乾き上手く声が出ない。


手足が振るえ、立っているのが精一杯…。


私は澪羽の様に心を読む事は出来ないのだけど、邪悪だったり、禍々しいのには敏感なの。


目の前の顎位まででそろえられたウェーブのかかった金髪、赤目の少女は天使の様に微笑んだ。


実際智天使だし、今は羽が2枚だけれど、ひーくんが言うには12枚出せるらしい。


多分、誰が見ても天使だというその見た目だけを見れば神々しいのかもしれない。


だけれど、纏っている雰囲気は…狂気だった。



「何で?って言われてもさぁ~新しい(・・・)“天界の長”が貴方達の家族とそれに関わってる奴ら皆殺しにして来いだって~?」



甘ったるい声を出して少女の年齢ではありえない妖艶な微笑みを見せる。


その瞳は狂気に染まり、瞳孔が縦になり…血の様な真紅色に染まった。



「…長…」



ひーくんは唇をぎりっと噛み…血が滲んでいる。



「あ、でもボク今日は相手しないよ? こっちの奴が相手するから~」



彼女は自分の後ろを指差した。


そこには先程の複数の気配の正体…2枚の翼の下級天使達がいたの。


天使や魔族は翼を持っているほど力が強い。


ざっと見ただけで数百人いると思われる天使達は思い思いの武器を持っている。


けれど、全員目が赤く染まり生気が無く何も移してなかった。


きっとツァドキエルが術で操ってるのだろうけど…彼らの魂はボロボロにされていて、正気に戻しても助からない事が分かったの…。


今までの天使達(・・・・・・・)と同じく。


ツァドキエル相手にヘタレモード(勝手に命名)を解き冷血俺様モードに入ったひーくんは、直ぐ様念話を焔に送った。



『焔…』


『…何じゃ…?』


『ツァドキエルが襲撃してきた。狙いは恐らく…劉夜達だ』


『……! 何じゃと…!?』


『ええ、本当みたい。そろそろ感づかれてもおかしくないとは思っていたけれど…拙いわね』


『本当は、劉夜達には普通の生活がしてほしかったのだがな…封印を解いて、使い方を教えておいてくれ。


 だが、まだ事情は詳しくは言うな。 後でオレ達が集まった時に話す』


『分かったぞ…気をつけてな』


『…えぇ』



念話が終わり、敵を見据える。


会話した事によって多少気が解れたのか震える事は無くなった。


すぅ…と息を吸い、自分の気を体に纏わせる。



「…へぇ…人間の分際で頑張るじゃん。


 あ、貴方達かこいつ等が全滅しない限り、敗れない結界張っといたから気兼ねなく戦って~? じゃあねぇ~」



雰囲気が変わった私を見て目を細めて私を見ると、そう言って手を振りながら帰った。


それと同時に下級天使達が堰を切ったかの様に武器を構え襲い掛かってくる。


すぐ様、亜空間から槍を取り出し横になぎ払う。


全て急所を狙っていて、斬りつけられた彼らは次々に倒れていった。


─10人


ひーくんも短刀を大量に取り出して攻撃を避けながら投擲する。


上から振りかぶってくる剣を槍の石突きを横から当てて粉砕させる。


直に左手で槍の中程を持ち、右手で鳩尾にストレートを叩き込む。


骨の砕ける音がして、天使は口から血を吐き絶命した。


─11人


右手を添え柄を長く持ち直し、後ろに回ってきた天使達を体を捻る勢いをそのまま利用して斬りつける。


─23人


背後から首を斬りつけようとしてきた天使に矢を投擲する。


背後にいた天使達も巻き込まれ貫かれた。


─26人


亜空間から別の武器を取り出し構える。


ひーくんも負けず劣らずの様で順調に数を減らしているんだけど…



「キリが無い…」


「…だね…【針鼠】」



魔法は使い難い為神力を使い大量の細い針状の槍を投擲する。


結界は私の家と隣の家の間のみだからあんまり暴れると自分の家が壊れる…というか今ので半壊…。


…不親切…


心の中で愚痴ったのは仕方ないと思う。


そう思っていると突然目の前に黒いものが見えた。



「…!?」


「あ…あれは…もしかして…」



それは…【ゲート】だった。


しかも…あの世界へ通じる…。


だけどそれは誰かを召喚するのでもなく…白く輝きながら浮いていた。



「どういう事だ…?」


「わからない…でも一時的に繋がっている様ね…」


「罠かもしれないが…如何する?」


「…行きましょう」



お互いに頷くと、ピアスを使って劉夜に限らず付けている人に念話を送る。



『リュウ君~、リオン君~、みーちゃん~、聞こえる~?』


『大丈夫かいっ!?怪我は?ご飯は?特に澪羽っ…お前に何かあったらボクは…』



天使達の攻撃を弾き、反撃をする。


ひーくんは、あの子達の前ではヘタレモードだからね。


さっきまでとは口調も声のトーンも変わったわ?



『お父さん、お母さん、とりあえず今の所は大丈夫だよ』


『良かった~…って“今の所は”って、如何いう事だい…?』



理由は焔から聞いて知っているけれど、知らないフリをしたの。


今は突っ込まれて返事をする余裕はないから。


話の殆どは適当に流したわ?(笑)



『また面倒な事に巻き込まれたな…』


『すまない…』


『ま、済んじゃった事はしょうがないし、気にしちゃ駄目よ? ヴァルくんは別に悪くないんだし』



ヴァルっていう子が謝ってきた。


うん…?何処かで聞いた事がある様な…?


ま、いっか。



『あ、そういえば、そっちに助っ人送っといたから仲良くする様にね』


『私達がそっちに行くまでにいろいろ教えてもらいなさいね。


 今、家に侵入者が着たから追い出してるの。暫く忙しいから念話送れないかもしれないわ?』


『1日で行けるかもしれないが、もしかしたら1週間かかるかもしれないから、何かあったとしてもボク達が駆けつける事は期待しない方が良いよ。


 …それまで劉夜と璃音は死ぬ気で澪羽を守るんだよ!?良いなっ!?』



“空間の狭間”移動時に何が起きるかわからない。


今までどおり1日かもしれないし、通る時にハプニングや道にそれないように魔力張ってないといけないから腕が訛ってると時間がかかるの。


着いた先も何処に出るのか分からないから余裕を持って1週間にした。


多分大丈夫だと思うけれど。


さっき【針鼠】を使った為か、私を警戒してひーくんの方に敵が流れた。



『あ、ひーくんそっちに行ったよ』


『はいはい』



間違えて念話で言ってしまった為、向こうにいる子達に呆れられた…気がする。


あえてスルーよ、リカ!


ひーくんは口角を上げると手を横に払った。



ビシィィィッ!!!



電撃が迸り残っていた天使や息絶えた天使全てに直撃し、跡形も無く消し去った。



ミシィィ…



「「…あ」」



慌てて外に転がり出る。


さっきの電撃で家の支えを斬っちゃったらしい。



ドカァァァン!!!



私達が出た瞬間に家は完全に崩れた。


それと同時に結界も消えたの。



「家…建て直さないとね…」


「あ、ああ、調子に乗ってやり過ぎたかも…ははっ…」



…幻覚を張り、家が建ってる様に見える様にする。


これで多分誰も気がつかない筈よ。



「行こ? 消えちゃうかもしれないし」


「そうだな…」



―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―



……こうして私達は無事にこっちへ来れたとさ?」


『…思考が漏れてるっす…』


「だから誰に語ってるんだ…?」


「…気のせいよ」



あの後無事に通れたため1日で来れたの。


多分ウェスタリアにはこの調子だと最低でも日の出前ぐらいには着くでしょうね~。



『父さん、母さんっ、聞こえる!?』



少しワイワイ騒いでると、璃音から念話が届いた。



『どうしたの?』


『澪羽が攫われたっ…!!』


『何だって…!?』



唯の誘拐なら良いのだけれど、残念ながらそれはありえない(・・・・・)


劉夜も璃音も気配を探るのには長けているし、何よりあの二人を掻い潜れる人なんてウェスタリアには(・・)そんな事出来る人はいない筈。


という事は…!


胸騒ぎが収まらない…!


…最悪な事態が起ころうとしていた…。

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