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龍と獅子と猫の物語  作者: Neight
第1章 ウェスタリア王国
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第5話 誘拐①

《side:聖》


「ぜぇ…ぜぇ…」


「…ひーくん大丈夫?」



ボク達はあれから適当に進む事約4時間、かなり開けた草原のような場所に抜けることが出来た。


さっき、ゼェゼェ言ってたけれど別に肉体的には全然疲れていなくて…半分ノリなんだけど、むしろ精神が疲れた…。


今ボクの目の前には見上げるほどの山が沢山出来ていた。


傾きかけた太陽を思いっ切り隠してボクとリカが立ってる辺りは陰になっている。



「…何故こうなった…」



この…目の前にある山々は…



「何でこんなにもいっぱい来るんだろうね?」



巨大魔物集団だった…。


この開けた空間に出ると直に周囲を囲まれた。


巨人族(ギガンテス)やら巨大虎やらマンモスみたいなのやら…何かよく分からない生物までざっと50匹ほどいた。


とりあえず全部殲滅したけどね!



「やたらめったらな品揃え、まさに安●家具(ファニ●ャードーム)ね~」


「…ツッコミたくなったけれど言いたい事は同感だよ…」



…そう、まずこれだけの種類が集まること事態おかしい。


どう見ても雪国に生息するのもいれば、砂漠にいるのもいる。



「誰かが故意に召喚したのかね…」


「そうよねぇ…」



運ぶのは面倒だろうし召喚したとしか思えない。


同じ世界なら比較的簡単に召喚魔法を使えるしね。


ただ…なんだろうか…何というか巨大生物★大集合!みたいなのは…



『ううっ…』


「あら?」



如何やら殲滅しきれてなかったみたいだね。


魔物は人に悪影響を及ぼす。


だから人々はギルドを立ち上げ、冒険者とか傭兵などが魔物を減らすために日々奮闘してるのだけど。


声のする方へ向かって…唖然とした。



「「龍?」」



あの中に龍も紛れ込んでいたらしい。


龍は基本的に頭が良くて人を襲わない。


人を襲ってくる様なのはいることはいるのだけど、魔物化したものだ。


強い龍だと人型になる事が出来たり、人語が話せる。


目の前にいた龍は深海の様に深い蒼色でどちらかと言うと東洋の蛇をモデルにしたタイプ。


アレだね…レックウザとか、どこぞの龍玉の神龍タイプって事。


そして、普通の龍よりも遥かに大きかった。



「あ…間違えて殴っちゃったかも…」


「あはは…」



思いっきり知っている人…いや、神だった。


頭に巨大なたんこぶをつけながら彼は涙目でこちらを見下ろしている。


…彼は目をきゅっと閉じた。


体全身が光り、1箇所に集中して…人型になった。


後ろで緩く束ねてある長めの蒼い髪、切れ長の金色の眼。


男とも女とも取れる中性的なその美貌に波の様な模様の入っている上品な群青色の着物を羽織っている。


彼の名前は…水簾(すいれん)



「ううっ…何で…?


 空を飛んでいたら聖さんが投げた刀が翼に刺さり、バランス崩れて墜落しそうになった所にリカさんからは頭上へドロップキックと顔面パンチをくらったんッスよ!?」



巨大なたんこぶを手で押さえながらボク達を睨んできた。


見た目だけなら完璧麗人で通るのに、口調とたんこぶのせいで何処か締まらない。


非常に残念な人だよね…彼。



「悪かった…」


「ごめんね…?」


「…はぁ…食らった身にもなって下さい。


 刃物に当たると地球の100倍になる重力魔法纏わせてダーツみたいに気軽に投げてきたり、音速で体術繰り出しているのにも関わらずそれが全力じゃないとかどれだけ規格外なんッスか…貴方達はアレっすか、長様ッスか…?」



彼は溜息を吐きながら苦笑した。



「そういえば、何で聖さん達はこんな所に?御子族様の所に行くのでは?」


「それがねー、来たは良いんだけど此処が何処か分からなくってね~…目的地は君の姉から聞いているだろう?」



苦笑しながら言うとそれを聞いた水簾は唖然とした。



「えぇ!?方向間逆ッスよ!? 此処、イーストレシアの領土の最南端の辺境ッス!」


「ふぅ~んそうなんd…ってぇぇえええ!?」


「そういえば私方向音痴でした」てへっ☆


「…4時間歩いた努力は何処へ~!?」


「4時間も歩いたんッスか…ご愁傷様ッス…」



水簾は哀れみの眼差しを送ってきた…。



「いや、まだ4時間で良かったよ…」


「そうねぇ~…」


「あ、良ければ俺に乗ります?まぁ、目的地同じなんですし、合流できたのでついでに」


「本当かい? それなら乗せてってもらおうかな~」


「水簾に乗せてもらうなんて何年ぶりかしら?」



何か良い年してワクワクしてきた。


…いや、しょうがないよね? ボク、精神年齢20だし。


水簾は再度竜に戻り、目の前の死骸と化した魔物に向かって蒼い炎を吐き、消滅させる。


まぁ、肉の匂いで魔物が群がったら困るしねー。


炎が対象物のみを跡形も無く燃やし尽くしたのを満足そうに見た後、首でボクらに乗る様に促す。


乗ったのを確認すると、魔法で背中の辺りに半球状の結界を張ってくれた。



「気が利くね~」


『いやいや、当然ッスよ』



彼は『じゃあ、飛びますよ~』と言った後翼を広げ優雅に飛び立った。


結界を張ってあるお陰で風の勢いをかなり防いでいる為心地良い程度の強さの風がボクやリカの髪をサラサラと揺らす。



「やっぱり空は良いなぁ」


「ふふっ、本当ね」



魔法で視力を強化して辺りを見回す。


水簾の言った通り、北の方向にイーストレシアの王都があった。



『…僕が向かうのは、姉さんに言われたっていうのもありますが…ウェスタリアに一部の奴等が集まってるらしいんスよ…』



不意に水簾の声が真剣なものになった。



「…例の?」


「そうです」



…空気が重くなり誰一人話し出そうとしない。


多分ボクの眉間には皺が寄っているだろうな…。


リカも深く考え込んでいる。


かなり長い間沈黙が続き、自分で言って重くしたのにも関わらず、絶えられなくなったのか水簾は慌てて話をそらそうとした。



『あ! そういえば…聖さん達、自力で空飛べるんッスから視力強化して飛べば良かったんじゃないんッスか?』



「「あ……」」



…何やってるんだボク…


別の意味で眉間に皺が寄ったは言うまでも無い…

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