第3話 町へ②
《side:ヴァル》
私視点の文字数が圧倒的に少ないらしいので今回も登場させてもらった。
…という事を言えと言われた気がした。
別行動すると聞いた時は良いタイミングだと思った。
普段はリュウヤとリオンがミウに誰も寄せ付けないかのように隙無く守っているので、仲良く話しているようで…警戒されている気がする。
…ポチもついて来たが、私の護衛なので仕方が無いだろう。
ミウは宝石店兼装飾品店が気になった様なので寄る事にした。
店内の装飾品は一つ一つが繊細だった。
予測だが、ここまで細かな模様をかけるのはドワーフぐらいだろう。
ふと水色の宝石が付いたネックレスを見つけた。
あちらの世界ではわからないが、この世界では目の色は重要な意味合いを持つ。
自分と同じ色の宝石が付いている装飾品を渡すという事は相手に心を許すという意味であり…その…好意を持っているという事だ。
渡す事によって近寄って来る者を遠ざける事が出来る為、安全性は向上する。
私はそれを持ってミウの所に向かったのだが…
「ミウ、ネックレスはどうだ?」
「ミウちゃん、腕輪はどうですか?」
何故ポチまで装飾品を持って来ている!?
『ポチ…どういう事だ…』
『どういう事ってミウちゃんに腕輪を渡そうと』
『私が渡しておくから…渡したいなら宝石無しだ』
『…いくらヴァルハート様からの御命令だとしてもこればかりは譲れません』
『………』
『………』
暫く睨み合う。
…このピアス、魔力消費無しで意識を向けている人以外には念話は聞こえないとは…後でリオンには感謝しなければ…
おかげでミウには聞こえていない。
「ミウっ! こっちの方が好きだよな!?」
「いや、僕が選んだ物の方が似合いますって!!」
「りりりっ、両方とも良いと思いますっ!…多分」
慌てた様子で答えたミウを見て、先ほどまで睨み合っていたのにもかかわらず、互いに苦笑し店主に金を払った。
ポチの事は気に入らないが、付けてもらえる様なので良しとしよう。
意識をリュウヤとリオンに向け、念話をすると、彼らも集合場所のオープンカフェのある飲食店に向かってるらしい。
私達もそこへ向かった。
着くと3人(?)はまだだったようでいなかった。
席を取り、ウェーターを呼んで飲み物を注文する。
紅茶を頼んだのだが、ミウはミルクも頼んだ。
何をするんだろうと見ていると紅茶の中に注いだ。
驚いていると「いる?」と言われたので注いでみる。
飲んでみると潤うようなまろやかな味がした。
これは…ミルク手配しておくか、もちろん私金で。
私が4杯目にさしかかった時、2人は同時といって良いタイミングで戻ってきた。
いや、それは良い…そこは別に良いのだが…何故そんなに荷物が?
両手に抱えた荷物は山の様に積まれていて、顔が見えず最初誰だか分からなかった。
「いや~いっぱい買っちゃった」
「まだまだ買い足りなかったけれど、これ以上買うと運べなくなりそうで」
「まだ買うつもりだったんですか…?」
ティーポットから紅茶をカップに注ぎ、彼らの前に配置する。
2人はドサッと荷物を置いて席に座り、紅茶を飲んで和みだした。
「紅茶はむこうと変わらないねぇ」
「うん、世界観が中世ヨーロッパだからじゃないの? 料理は何ともいえないけれど」
妙に納得している3人。
そもそも“チュウセイヨーロッパ”って何だ…?
そんな事を言ったりして和んだり楽しくしていると時間というものはあっという間に過ぎるようで辺りは暗くなり始めた。
「あれ? そういえば何処か行くんじゃなかったのか?」
「ああ、長話になるだろうから、今夜は彼らの家に泊まらせてもらう予定だ」
「え…そんな事しちゃって良いの?」
「いや、問題無い。 先ほど魔法で作った偽者の私達を先に帰らせた」
そう言うと“カゲブンシン”とか“シキガミ”とか言われた…だからなんだそれは?
…まあ、ともかくその家に向かう。
商店街を抜け、住宅街に入り、何回か角を曲がり…
「ここだ」
指を指した先には普通の一軒家。
「え…此処なんですか…?」
私以外の全員が疑惑の眼差しを向けている。
「ああ、入ってみれば分かるさ」
玄関の前まで来ると扉が開き女性が出てくる。
「あら、来たのね。 さあ、どうぞ」
「あぁ」
「「「お邪魔しま~す」」」
「は? え? お…お邪魔します」
友人の家に入るかの様に気楽に入っていったのを見て、リュウヤ達は私と同じように、ポチは若干オドオドしながら着いて来た。
「ふふふっ、そんなに強張らないで?」
彼女はくすくす笑うと「案内しますので着いてきてね」と言い、先に進む。
ついて行くと、廊下の行き止まりに着いた。
「え、でも此処は行き止まりなんじゃ……へっ?」
彼女はぶつぶつと呪文を唱えると壁だった場所が無くなり地下へ続く階段が現れた。
更にライトの呪文を唱え、手元に明かりを灯す。
「足元暗いから注意して着いてきてね?」
彼女は微笑むと闇色の中に足を運んだ。