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龍と獅子と猫の物語  作者: Neight
第1章 ウェスタリア王国
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第2.5話 とある兵士②

別視点第2弾!

前回の続きです。

《side:???》


急いだ事もあり、一番前を取る事が出来ました。


僕は身長が低いから前を取らないと見えないし…はぁ、嫌ですね、低いのは。


舞台を見ると丁度近衛隊長と黒髪の少年が武器を選んでいる所でした。


近衛隊長は少年の身長ほどの大剣を手にしています。


元々身長が2メートルを超えているから扱えるサイズでしょうね。


大きいからって、イコール強いって訳でもないのですが。


それを素振りして落ちてきた葉を真っ二つに切りました。


僕のいる観客席から歓声が上がります。


確かに宙を舞っている葉を切るには剣を早く動かさなければいけないし、早く動かしたら動かしたで風圧などで捕らえにくいものですね。


彼は一応前衛系のスキル平均はA、後衛系はC-。


どちらかがAあれば小型ドラゴン程度なら倒せる程度です。


少年は魔法を使った事がないので近衛隊長も使わないというハンデが出された様ですね。


因みに僕は…



「すいません、隣座っても良いかな?」


「あっ、はい!どうぞ…って、え?」



思考に耽っていて人が近づいてきていたのに全く気がつきませんでした。


ばっと顔を上げて声がした方を向くと、そこには微笑の茶髪少年と黒髪少女がいました。


思わず放心状態になった僕を他所に、2人は隣に座り、少女が紅い鳥に何かを呟きます。


紅い鳥はこくりと頷き、体をほんのり光らせました。


瞬時に僕を含めた3人+1羽の周りにのみ結界が張られます。



「認識阻害の結界魔法を張ったから、他の人達には僕達は普通に舞台を見ている様に見える筈だよ」


「は…はぁ」



…いや、ちょっと待て下さい。


鳥が結界を張るなんて聞いた事ないんですが!?


というか、この結界…僕でも破れそうに無いですよ…?


冷や汗が止まらない僕は、現実逃避しそうになりましたが、寸前で戻ってきましたよ。


あぶないあぶない…



「あ、まずは自己紹介しないと失礼だよね?


 僕は桜城 璃音。 学生と科学者やってるかな。


 今舞台にいるのは僕の双子の兄で劉夜。 学生兼料理人だよ」


「澪羽です。 学生で、趣味は楽器とかかな?」



リュウヤとリオンとミウちゃんか…よし、覚えました。


学生って事は身分が高いのかもしれないですね。


…というかミウちゃんは納得できますが、何処の学生兼科学者と学生兼料理人が気配を消せるのですか!?


色々突っ込みたくなりましたが…キリが無さそうなので自重します。


それより、こっちも自己紹介しなくては…。



「僕はアルt」


「ポチ」


「アルt」


「ポチ」


「アr」


「ポチ」


「……」



酷くないですか!?


というかポチって何です!?


名前を言おうと思ったら途中でミウちゃんに遮られましたよ。


ミウちゃんの隣でリオンが腹を抱えて爆笑しているし…多分僕からかわれてるんでしょう…。



「はぁ…それで良いですよ…。 趣味は剣術と魔法の修行と…まぁ、色々です」



もう良いや…ポチでもポテチでも…。


え? ポテチが如何いうものか知ってるのかって?


…知りませんが。


…きっと、電波でも拾ったのでしょう。



「あの~」


「何ですか?」



破壊力満点な上目遣いでミウちゃんが聞いてきました。



「その…兜はずして、触っても良い? …耳」



一瞬何を言っているのか分りませんでした。


いつばれたのか…確かに僕は人間ではありません。


この国は人間以外は差別される為隠さなくてはいけないんですが。


異世界から来た彼らでも…見せるのには抵抗があります。



「結界張ってあるから大丈夫」



そう言ってニコニコしているリオンの目は「拒否させないよ…?」と言っていました。


無言の圧力…諦めないと命の危機を感じます。


僕は、はぁ…とため息を吐きながら(サーリット)を取りました。


ぴょんぴょん跳ねる銀色の髪と同色の三角耳が露になります。


常時被っているから耳が痛いです…。



「わぁ…! 本物の犬耳…っ!」



ミウちゃんは目をキラキラ輝かせながら僕の耳を弄りだしました。


獣人の特徴でもある耳と尻尾は…弱点(?)でもある為…



「あ…触りすぎないで…下、さ…ぁ、力が抜け…」


「…それって何処の龍玉主人公だい?」



くぅぅっ…こしょぐったい…あ、でもこれ役得ですかね…?


などと考えていたら、これから試合開始らしいです。


体から力が抜けてたんですが、試合が気になったので無理矢理そっちに集中する事にしました。


あ、リュウヤは細身の剣を選んだ様ですね。


そっちの方が妥当ですかね。


試合開始の合図とともに近衛隊長が駆け出します。


リュウヤは気にせず、巨体に似合わずかなり素早い近衛隊長を構えずに待っています。


近衛隊長が切り上げたのをひらりと躱し、剣を蹴り上げました。


…躱して蹴り上げるのに1秒もかからないのってどれだけ早いのですか!?


しかも、一瞬で蹴り上げたにしては剣は高く飛んでいきます。



コキッ バキッ



内心真っ青になりながら剣を見上げていると、そんな音がしました。


背後を取る時の行動なんて見えませんでしたし、音を聞いて初めて近衛隊長が肩外しと骨折を負った事に気がつきました。


今の行動を見る事が出来る可能性のある人は…5人を切っているでしょうね。


因みに、今この試合を見ている人は3000人弱。


凄すぎですって…彼は本当に人間ですか?


私はあの方以外に初めて見ましたよ、此処まで強い人を…。


此処から先は、近衛隊長がヘトヘトになるまで躱し続けて、秘技★片手白刃取り(…何ですか?そのネーミング…)をして、細身の片手剣で大剣を粉砕させて試合終了しました。


白刃取りをあんな大剣相手に成功させるなんて出鱈目にも程がありますって…


人間や生き物にはツボがあり…剣にもそういうのはあるので、そこを突けば実質上粉砕は可能です。


しかし、それは1ミリも狂いがなく正確に突かなくてはいけません。


つまり、理論では可能だけど実質不可能な技の類に分類されているのに、リュウヤはいとも簡単にしてしまった、という事です。


どう考えても素人の成せる技じゃありませんよ。


…といっても玄人でも無理ですって。


リュウヤはヴァルハート様に地下の許可を取りました。


紅い鳥がばっと起き上がり優雅に羽ばたいて行き、一緒に地下へと消えます。


って、いつまで触ってるのですか…? ミウちゃん…


お願いだから止めて下さいと頼んだら渋々だけど止めてくれました。


横に置いてあった(サーリット)をしっかり被りなおします。


そろそろ解散しそうなので…先に戻らないと何か言われそうです。


僕は帰ろうと立ち上がりました。



「あ、ポチ。 明日辺りに僕達の部屋に来てもらえないかな?」


「明日も触らせて?」


「…わかりました」



これは…もしかしたら王子と接触できるかもしれないです。


いや、耳触られるのは…あ、でも…


…ゴホン、とにかく明日は無理にでも予定を空けておきましょう。


2人にお辞儀をした後、僕は踵を返しました。

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