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龍と獅子と猫の物語  作者: Neight
第1章 ウェスタリア王国
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第1話 勇者④

《side:劉夜》


俺達はあの後、暫く話すと遅いからという事で解散し各部屋に入って就寝した。


ついでに璃音はヴァルに例のピアスを渡していた。


璃音はちゃっかり呪われるという事も忘れずに付け足していたし…。


若干顔を引きつらせていたが、コレなら盗聴される事も気にせず使えるという事で迷った挙句つけた様だった。


それにしては、顔がニヤニヤしていたけどな。



「今日も良い朝だ~」



手を肩に当てて首をコキコキ鳴らす。


うん、今日も良い天気になりそうだな!


こっちの世界の空はあっちと大して変わらなかった。


俺はいつも朝の5時に起きる。


目覚まし無しで…べ、別に俺は年寄りじゃないぞ!?


…とりあえず日課の筋トレメニューをこなす。


一通りこなした後、リビングみたいな中央の部屋に移動する。


2人とも起きていた様でソファーに座って喋っていた。



「あ~兄さんおはよう~」


「リュウ兄おはよ~!」


「おう、はよー」



俺の首にかけていたタオルを見て、璃音がまた筋トレしてたんだ…と苦笑し、ああ、そういえばと机の上の物を持ち上げ、差し出した。



「これ、兄さんの鞄。僕達が召喚された時に一緒に飛ばされたみたいだよ?」



受け取って中身を確認するも、何も壊れてはいなかった。


教科書は学校に置いていっても良いので鞄の中はケータイ、サイフとかゲーム機とか料理本とかスパイスとかおたまとかフライパンとか…自分で入れといてアレだが、授業には全く関係無い物まで入っている。


璃音の鞄には…ケータイ、サイフといった普通入ってるものから、ノートパソコン、何かの資料、そして、小さい試験管に入った謎の薬多数等が入っているらしい。


澪羽は、ケータイ、サイフ、スケッチブックに筆記用具、色鉛筆、部活で使っているフルートなどが入っているらしかった。


…澪羽はともかく、璃音のは変だろ…。


俺が璃音に生暖かい眼差しを送った頃、ヴァルがやってきた。



「起きてるみたいだな、これから謁見の間に行くが…良いか?」


「え…いくらなんでも早くない?」


「父上は言い出したら聞かないんだ…気が変わると何日後になるかわからないぞ?」



正直お腹が空いて気が進まなかったけれど、何日後かに伸ばすのも…


という事で謁見の間に向かう事になった。


正装するのかなと思ったけれど、如何やらブレザーで良いらしい。


また超長い廊下を歩いたり、階段を上り下りして…重厚な鉄製だと思われる煌びやかな扉の前に着いた。


それは、どう見ても3メートル以上もあり…無駄に金がつぎ込んでそうだった。



「父上、異世界から召喚された3名を連れて参りました」


「通せ」



扉の向こうからくぐもった声が聞こえてきた…。


扉の前にいた近衛兵らしき4人は重そうに扉を押す。


その先には王座に座る王様とその隣に佇む王妃、王女、多分ヴァルの兄の王子と…300~400人に及ぶ兵士がいた。


王様は…でっぷりと太っていてその瞳は濁っているし…ヴァルには悪いが、一番嫌いな類の眼だった。


ヴァルが跪いたのを見て慌てて真似する。



「余はローレンス・ジェイル・ウェスタリア、この国の国王だ。


 …そなたらが異世界人なのか?」


「はい」


「黒髪は東方の少数民族が持っているが、黒目とは忌々しい…」



こちらをつまらなさそうに上から目線で言った。


俺達黒目じゃないんだけどな…。


…あ、コンタクトしっぱなしだったっけ?


「そもそもお前が召喚させた本人だろうがっ!!」と言いたかった…というかキレそうだったが、寸前で抑えた。


ここで突っ込むと敵の実力も分からないし、何しろ300~400人対4人になってしまう。


武器を持ってきてないのでこちらの戦力は更に低いし、澪羽を守りながらは流石にきつい。


俺は一通りの武術を教わってるから武器無しでもそこそこいけるが、璃音はそうはいかない。


基本的に璃音は科学と暗殺術を使うスタイルだから、体術は母さんに齧る程度しか習っていないしな。



「すみません、私達の国は基本的には黒目黒髪なので…」



おおう…璃音も顔が引きっている。


うわぁー、相当我慢してるな…。



「ふん…まあ良い。名を名乗られよ」



そんな見下す様な視線+太った体…ウザ過ぎると思いながら…それぞれ自己紹介をする。


無理矢理営業スマイルで通した。


手く笑顔になっていたか全く分からないけどな!!


ちらりとヴァルを見たら…顔が引きつってた。


多分気のせいだ、きっと!



「そなたらには"勇者"として、魔国を滅ぼしてもらいたい…その為にこれから訓練させる」


「父上、測定器が割れてしまっているので属性わかりませんわ…」


「魔法は後回しにして、それまで武術を教えれば良かろう。


 ヴァルハート、武術と属性が分かり次第魔法を教えよ」


「はっ」



ヴァルが俺達を教えるなんて好都合だな。


ヴァルはこちら式の敬礼(?)をした後一礼をした。



「では…下がれ」



命令口調でウザかったけれど、不自然な程の笑みを浮かべてお辞儀しといた。


俺達もヴァルの後に続いて踵を返す。



「それにしても、君達に術を教える事になるとは…好都合だ」


「だね~。接触しても怪しまれないから」



そうだよな。


…俺が見る限り、あの王様あんまり頭良さそうじゃなかったし。


…いや、俺の周りにいる璃音と澪羽(こいつら)と比べちゃ駄目、か。



きゅるるる~



ん?あ…澪羽が真っ赤になって俯いてる…お腹鳴ったのか?


ヴァルは笑いを堪えているが、澪羽を見ていたら我慢の限界がきたらしく、ぶっ、と噴き出した。


一頻り爆笑した後、



「朝食でも食べに食堂いこう。私もまだ何も食べてないしな」



…この提案には誰も反対しなかった。

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