信じて
私は、少女の日記をイツキに見せ、数字について話した。
「ねぇ、これ・・・・・・5521手って、私が思うに、ココニイテって、意味じゃないのかな?」
「・・・・・・だとして?何?」
「だとしたら・・・・・・5521手、1人818・・・・・・1人は、一人って意味でいいと思うんだけど・・・・・・八、は、ち・・・・・・は、い、は・・・・・・?一人は、いは?一人は、いや・・・・・・?ここにいて、一人は、いや!?」
「385は?」
「さはこ・・・・・・さわこ?さだこ?名前っぽいけど、あの子は美弥子だし・・・・・・あれ?ミヤコ?3、み、8、や、5、こ・・・・・・385は、ミヤコだよ!」
「この家にいた、なんかの霊が、そのミヤコって少女を押し止めた、と?」
「・・・・・・なんか、違うような気がする・・・・・・この日記を持っていこう。もしかしたら何か手がかりになるかもしれない。」
「・・・・・・すっかり日はくれちまったけどな。」
「え?そうなの?確かに寒いけど・・・・・・にしては明るいって・・・・・・人魂!?私、初めてみた・・・・・・人魂なんて、いるんだ・・・・・・。」
私は、呆気に取られながらゆらゆら揺れる青白い炎を見た。
キャンドルの炎と違って薄気味悪かった。
イツキは、「ちょっと寝たら体力回復したわ・・・・・・じゃ、行くぞ。いつまでもここにいるわけにはいかない。」と言って立ち上がった。
少女は、おろおろしてからコクリと頷き、立ち上がった。
赤い着物に、黄色い帯・・・・・・帯からたれている一つの鈴。
これが、祝い事をするために準備していた少女の服装なのだと考えると、胸がチクリと痛んだ。
さささっと少女が歩くと、襖までの道が出来た。
「よし、雑魚は無視して、突っ切るぞ!」
そう言われ、私は一気に走りぬけ、どこかの部屋に転がり込むように入った。
そこには、和人形の首が転がっていた。
札を見つけることが出来た私は、あわてて札を引っ掴み、和人形から離れようとしたが、天井から何かが覆いかぶさってきたので、身動きが取れなくなってしまった。
「イヤァァァアアア!?」
ようやくその霊に札をくっつける事ができると、私は、和人形の悪霊と戦っているイツキの元へ駆け付けた。
が、私が駆け付けてはいけなかったらしい。
和人形は、ニタリと笑い、私に取りついた。
視界がグニャリと歪み、別の記憶が流れ込んできた。
少女の部屋だった。
少女が、赤い着物を着て、日記を書いていた。
そこへ、酔っ払ったお父さんらしき男の声が聞こえ、続いて派手な女の声が続いた。
『けぇったぞぉ・・・・・・。』
『あら、なんか良い匂いがするじゃないさ。なんかの祝い事かい?まあいいさね、お腹が減った。早く食わせとくれよ。』
『おかえりなさい・・・・・・お父さん、お母さん。』
少女が玄関に出てきて、ちょんと正座をすると、深々と頭を下げた。
『あら、あんた、何で赤い着物なんか着てるんだい?がきんちょには、そこら辺のボロがお似合いだよ。その着物脱ぎな。そんなにいいもんがあったなら、あんたのあの菫色の着物より高く売れるよ。』
『どこに置いたかと思ったらあの着物・・・・・・お母さんが売ってらしたのですか・・・・・・?』
少女の肩がワナワナと震えていた。
酷い女だ。
自分だけ綺麗に着飾って人の物を売り飛ばすなど。
『なんだい、その目は。こっちはね、この飲んだくれ亭主の分まで稼がなきゃいけないんだよ。お前の安っぽい着物の一着や二着、売ったってかまいやしないだろ?』
『・・・・・・私だって働いております・・・・・・あの着物は、実の母に作っていただいたものでしたのに・・・・・・。』
『なんか言ったかい!?そんなところつっ立ってないで早くこっちに食事を持ってきな。』
『はい、お母さん・・・・・・。』
『お母さんなんて呼ぶんじゃないよ!あたしゃ、お前の母さんになった覚えなんてないんだ!こいつが亭主になったら、あたしを自由にさせてくれるってんでこいつの妻になってやっただけなんだから!』
その瞬間、ドクンと少女の憎悪が霊を通じて流れ込んできた。
(あなたに、何がわかるというのですか・・・・・・毎日遊び惚けてるあなたに・・・・・・仕事をしている?もうずいぶん昔にやめたではありませんか!私が12歳になる前の頃には既に!それなのに、何です。人の着物を売り飛ばして自分だけ着飾り、お父さんの酒代を払っているふりをするなど言語道断!お父さんの酒代の変わりにお父さんが飲む酒場で下働きをしているのは私です!昼は別の場所で働き、あなたの食べる食費まで稼いでくるのは私です!あなたは時折男を家に連れ込んでは、汚らわしいお金を手にする程度でしょう!その証拠にほら、あなたは私を追い出そうとはしない。本当に稼いできているなら、3人分稼がずに、もう一人でも稼げる私を追い出して、負担を少なくするはずです!お父さん、いい加減目を覚ましてください。このままでは、この家はこの女に乗っ取られます!お母さん、どうか私と父をこの悪夢から救ってください・・・・・・私の、本当のお母さん・・・・・・もうお母さんしか頼る人がいないのです・・・・・・お金は底をつく一歩手前です・・・・・・お父さんは、私の誕生日を忘れ、12歳の誕
生日にすら、おめでとうの一言すらかけてはくださらなかった。ああ・・・・・・私は、どうしたらいいのですか!?)
その瞬間、横で低い声がした。
「ならば、お前の体をくろうてやろう・・・・・・。」
『キャアアアアアアアアッ!!』
少女は、発狂し、自分の部屋に戻ってお札を握り締めたが、穴が開いてしまったお札など、ただの紙切れにひとしく、『いい加減にしないかい!隣から人が来ちまうだろう!早く食事の準備をしなっ!』と言って部屋を訪れた父と義理の母を錯乱したまま台所から包丁を持ってくると刺し殺し、そばに転がってきた和人形・・・・・・私が壊してしまった和人形の髪の毛が少女の首に絡み付いてきた。
少女は逃れようとジタバタともがき、包丁を落して、血がついた手で壁をベタベタと触った。
それでも首を締めあげられ、ついには日記を血の海へ落としたっきり少女は動かなくなった。
「お前の肉体はここで朽ち果てる・・・・・・だが、お前の魂は、救いを求めたまま、ここにとどまり続ける・・・・・・せいぜい苦しむがいい・・・・・・。」
「リコッ!」
ブチンとした痛みが体を走りぬけ、ようやく気付いたときには、私は、イツキの首をしめようとしている所だった。
どうやら、私の付き物をイツキが切り離してくれたらしい。
「ご、ごめん・・・・・・イツキ・・・・・・。」
「いや、しかし・・・・・・「お前の体をくろうてやろう」とかなんたらかんたら言ってたが・・・・・・大丈夫か?」
「・・・・・・ごめん・・・・・・私、今までここまで強い霊に憑かれたことなかったから、ああゆう乗っ取り系の・・・・・・それも、かなり強力なのだと、もろに影響受けるみたい・・・・・・あの子の過去の記憶をまた見た。あの子の部屋に行かなきゃ・・・・・・行かなくちゃいけないような気がする。」
「あの子って?」
「ミヤコちゃん!彼女、まだ12歳だったのに、あんな・・・・・・。」
取り乱し始めた私の肩をつかみ、「まず、落ち着け。」とイツキが言ってくれたおかげで少しだけ落ち着いた。
それから、見たことを話した。
札を四枚和人形に貼りつけると、私はもう一度「美弥子ちゃんの部屋にいなかくちゃいけないような気がするの。行かせて。」と言い直した。
イツキは、少々面食らいながらも「いいけど・・・・・・。」と言ってくれた。
少女の部屋を訪れるまでに、他の霊に会うことは無かった。
だが、案の定少女の部屋は、先ほどとは変わり果てた姿をしていた。
「これっ・・・・・・。」
「なんだよ、これ・・・・・・?」
壁には赤黒い手形がこびりつき、床には死体が三つ・・・・・・転がっていた。
包丁も転がっている。
和人形だけは無かった。
そうか、二人を刺し殺したから、自分に傷はないのに袖に血が・・・・・・。
そして、少女は、少女の死体の前に立っていた。
クルリとこちらを顧みると、絶望的な目をまっすぐに私に向けた。
その瞬間、彼女の感情が流れ込んできた。
(見てしまったのですね・・・・・・醜き、私の過去を・・・・・・この後、すぐに人が駆け付けました・・・・・・)
感情と同時に記憶がまた流れはじめた。
美弥子の叫び声を聞いた近所の人間は、駆け付けてきたが、そこで見たものは、刺し殺された二人と、変死体の美弥子の姿だった。
そばに横たわるのは和人形一つで、美弥子の首に残っているような縄らしきものはどこにもなかった。
だが、美弥子が絞め殺されたというのは、首のあざから見ても明白だった。
和人形は、美弥子の遺体から離れた部屋に置かれ、異様な何かを感じ取った人が、頼んであの場所に人形が封印されていたらしい。
それからすぐに美弥子がすっと手を伸ばした。
(この家は、この怨霊と、怨霊すら支配下に置こうとする強欲な義母親のせいで、木片すら取り壊され、失っても、この姿を止めてしまいました。その母は、向こうの部屋にいます。私が近づくとすごい力で押し退けるのです・・・・・・当たり前ですね・・・・・・あの方を殺したのは紛れもなく私なのですから・・・・・・今でも私を追い出したくて仕方ないようですが・・・・・・私は、怨霊によってここにとどまる定めを受けてしまいました。今や、あの強欲で怨霊を仕切っている核となっているのはあの女です。どうか倒して、怨霊も、彼女も解放して差し上げてください・・・・・・いいえ、お願い致します。そうしなければ、私も報われません・・・・・・どうか、私達を助けてください・・・・・・)
私は、頷いて見せた。
少女は安心したように微かに笑って見せた。
なんと強い少女なのだろう。
あんな待遇を受けてなお、清い心を持っていられるとは・・・・・・。
まだ12歳の子供だというのに、彼女より年上の私のほうが幼いような気がした。
「いこう。イツキ。ここの核は美弥子ちゃんの義理のお母さん。場所は、この部屋の奥。美弥子ちゃん・・・・・・ありがとう、お疲れさま・・・・・・もうすぐ、休ませてあげるからね・・・・・・。」
チリンと鈴が鳴ったような気がして、私が振り向こうとすると、美弥子ちゃんの日記二冊目を落としてしまった。
「あっ・・・・・・日記が・・・・・・。」
拾い上げようと手を伸ばすと、日記には、「あのお母さんが来てからというもの、全てを我が物顔で使い回して困っています。よくこの部屋の奥、保管個に自分のめぼしいものを持っていっては、ため込んでいる姿を見ます。いざとなればあの方はこの家と土地も売買するつもりなのでしょう。誓約書を持っていた気がします。取り返すべくあの方がいぬ間に保管個に行ってみましたが、今までつけられていなかった手錠がつけられていました。きっとあの方の事です。わかりやすい場所に鍵など隠してはいないのでしょう。例えば、自分の懐や、自分の部屋などには・・・・・・置かないでしょう。」と書いてあった。
「リコ?どうした。」
「鍵・・・・・・保管個に行くには鍵が必要みたい。」
「そうか、それよりリコ、お前さっきっから月明かりで頑張って日記読んでるけど、こっちにだってライトはあるんだぞ?」
「え。あ、うん・・・・・・そ、だね・・・・・・。」
今思えばそうだ。
イツキにライトで照らしてもらったっていいじゃないか。
でも、イツキからライトを奪うと、イツキがライトをこちらに向けている間に別の霊がよってくるかもしれない。
イツキからライトを借りても同じ事のような気がする。
次からは私もライト持ってこよう・・・・・・本当は次がないのが一番なんだけど・・・・・・。
私は日記を抱えなおすと、「行こう・・・・・・イツキ。鍵探さなきゃ・・・・・・。」
少女の部屋を出たとたん、火の玉がコロコロと転がってどこかの部屋に消えていった。
・・・・・・あの部屋?
私は罠かもしれないと身構えながらその部屋に近づき、襖をあけた。
その部屋には火の玉がコロコロと集まっていた。
何かの儀式でもしているかのように一体感のある動きを見せている。
その真ん中に、保管個の鍵とは関係なさそうな小さな鍵が落ちていた。
私がその鍵に手を伸ばすと、火の玉は、いきなり大きくなり、私の手の行方を阻んだ。
イツキは、「ちょこまかうざったいな。」と言って木刀を一振りすると、今まで一体感のあった動きは崩れ、あっという間に火の玉達はいなくなってしまった。
「あんな強引に払わなくても・・・・・・。」
そういいながら私は小さな鍵を拾うと、火の玉が逃げていった方向へ歩いた。
みんな同じ方向に逃げたって事は、なんかしらあるような気がする。
でも、ここは・・・・・・キッチン?
キッチンには、和人形が二体こちらを見下ろすように桐だんすの上に乗っかっていた。
私は二度も乗っ取られたのですっかり和人形が苦手になったようだ。
進むのに、かなり気が引ける。
「う・・・・・・イツキ、先行って・・・・・・お願い。」
「あん?別にいいけど・・・・・・和人形?あのタイプか・・・・・・木刀に髪の毛とか絡めてくると厄介なんだよな・・・・・・。」
そういいながらイツキは和人形と苦戦していた。
私がイツキを見守っていると、もう一体の和人形がこちらを向いた。
「ひぁっ!?」
人形は、カタカタカタと動き、ついには桐だんすから落ちて転がって来た。
「いや・・・・・・来ないで・・・・・・いや・・・・・・。」
私は後ずさると、壁にぶつかってしまった。
逃げ場がない。
すると、後ろから髪の毛を引っ張られた。
「いやぁぁああああああああっ!!」
無我夢中で後ろに手を伸ばし、お札を叩きつけた。
ダメージを食らったらしき霊は私を離してくれたけど、ヨロヨロと壁から離れた私は、和人形の髪の毛に足首を捕まれた。
「いやぁぁああああああああっ!!もう、いやぁあああっ!」
この時私は、恐怖のあまり、半ギレしていたように思う。
混乱している中、ビシッと札を叩きつけると、和人形から何か黒いもやのような何かが出てきた。
私は、再び後ずさった。
だが、あまり壁に近づくとまた壁に引き釣りこまれそうになるかもしれない。
どうしたらいいのだろう?
高速パニックに陥る中で、私は何を思ったか、札を掴んで霊に突進していった。
一気に五枚くらい札を叩きつけると、霊を倒すことができた。
私は、すっかり乱れた呼吸の中で、これぞ、窮鼠猫を噛む・・・・・・?などと思っていた。
イツキも戦いに勝利し、今度は桐だんすに木刀を向けてから下ろした。
「イツキ・・・・・?」
「・・・・・・リコ、札を一枚貸してくれ。」
言われた通りイツキに渡すと、イツキは、感心したように「考えたなぁ・・・・・・あの和人形二体を倒せる実力の持ち主なら、こんな弱い霊あっという間に倒すよな・・・・・・で、倒したら、こっちの力が強すぎて桐だんすごと壊れて粉砕する仕組みになってるとは・・・・・・。」と呟きながら札をはりつけ、桐だんすを開けた。
そこには小さな鍵つきの箱が入っていた。
この中に保管個の鍵が入っているのだろうか?
小さな小箱にかかっている鍵を開けると、中にはかなり錆びれた感じの鍵が出てきた。
「これ、なのかな?」
「しらね。とりあえず行ってみなきゃだろ。」
イツキはぶっきらぼうに答えるとスタスタと前を歩き始めた。
どうやら、ここら辺は少女の導きとかではないので私が先頭を歩いている必要はないらしい。
「何だぁ?雑魚霊の寄せ集めみたいになってるぞ?この廊下だけ。」
保管個と思われる部屋の前だけ霊がたくさんいた。
それこそ部分的な、手やら目やら、巨大な口まである。
目がギョロリとこちらを向くと、たくさんの手がこちらに向かってきた。
口まで。
私達が走って逃げると、みんな追い掛けてくる。
「だぁあぁああっ!うっぜぇええ!」
そうイツキは叫ぶとあちこちにある目玉を木刀で刺しはじめた。
すると、痛かったのか口が暴れだし、やたらめたらに食い潰そうと襲い掛かってきた。
「いやぁあああっ!キショいぃいいっ!」
私は、ガチガチ歯を鳴らしている気持ち悪い霊に向かって札を叩きつけた。
すると、手だけが途方に迷い、私達を捕まえるべく探していた。
私は手錠の近くにいたので手錠と鍵を照らし合わせてみた。
「・・・違う・・・。」
その瞬間、すべての手がこちらを向いた。
「なんだ?」
イツキが話すと、イツキの方へ手が近寄っていく。
「次は耳かよ!?」
イツキが耳を切っている間に、私は確信した。
「この鍵、ここの鍵じゃない!」
「はぁっ!?」
「手錠はこの鍵より綺麗で新しいし、鍵が鍵穴より太くて、鍵穴に入らない。別の場所の鍵だよ!そこにこれの鍵があるのかもしれない!」
「ちょ、逃げるぞ!」
イツキは私の手首を掴んで走り抜けると、その後をたくさんの手が追ってきた。
だけど、やはりあの部屋の前からは離れずに境界線でもあるかのようにうごうごしていた。
「じゃあ、どこの鍵だって言うんだよ?」
「わからない・・・・・・でも、家の中だよ?鍵なんてそんなにたくさんついてるかな。」
「鍵がついてる部屋を徹底的に探せ、と?」
「・・・・・・確かに部屋はあったり無かったりを繰り返してる。でも、この家だってそんなに広くないはず。迷路並に広いなら問題外だけど・・・・・・探せるよ。この家なら、二回もないわけだし。」
「わかった。やってやるよ。核が倒せなきゃ意味ねぇからな。」
「それに、私・・・・・・美弥子ちゃんを成仏させてあげたいし・・・・・・。」
「なんか言ったか?」
「ううん、そんなことより早く捜そう。早くしないと私達の体力が限界だよ。」
「・・・・・・だな。」
家の中を三週ほどすると、ようやくそれらしき手錠がかかっている扉を見つけた。
「何、この細い扉?」
「いいから開けろよ。」
「え、あ、うん・・・・・・。」
開けると、中からは掃除用具と今までのを寄せ集めたような強い霊が出てきた。
「は?え、掃除用具入れ!?」
イツキは、真っ先に霊に切り掛かり、「リコ!捜しといてくれ!」と叫んだ。
私は、霊に三枚お札を飛ばしてから頷いた。
だけど、捜しても捜しても鍵は出てこない。
ついには掃除用具をすべて廊下に出しても、掃除用具入れには何もなく、掃除用具をすべてひっくり返して見ても何もなかった。
床下か?と思い、取れそうな床をとって下を覗いてみたが床下にも見当たらない。
「いったいどこに・・・・・・。」
ようやく勝負がついたらしいイツキも掃除用具入れに入ってきたが、見つからない。
「・・・・・・囮か?」
「わからない・・・・・・でも、なら、何故ここの鍵はあんなに厳重に保管されてて、ここにはあんなに強い霊がいたの?」
「だぁあぁああっ!しらねーよ!」
イライラしてきたらしいイツキは、木刀を持ったまま両手を振り上げた。
そのせいで、天井を壊してしまった。
「キャァァアア!イツキ!何するの!」
木刀で壊したせいで本来なら存在しない木片が振ってくる。
その時だ。
白い紙に包まれた何かが落ちてきた。
「・・・ゴト?」
私がそれを拾い上げて中身を見てみると、中には鍵が入っていた。
私はイツキと顔を見合せると、「・・・・・・ビンゴ!」と笑った。
「よっしゃ、そうと決まれば行くぞ!」
「まさか屋根裏に隠してあるなんて・・・・・・。」
「耳は倒した。あるのはそこらをうろついてる手だけだろ?問題じゃねぇな。」どこが、私達が部屋に近づいた瞬間に手は私達の方向へとやってきた。
今度は何が・・・・・・「って、鼻ぁ!?」私が叫ぶと、イツキがため息をつきながら、「視覚、聴覚ときたら次は嗅覚かよ・・・・・・。」と言った。
私はお札を投げながら走りぬけ、鍵を開けると、部屋へ飛び込んだ。
そこには、綺麗な着物を着て、グシャグシャの顔と、血に塗れた体をさらしている女がいた。
「・・・・・・いよ・・・・・・。」
「え?」
女の人は、簪すら血に汚し、乱れている髪を更に振り乱して近づいてきた。
「渡さないよっ!ここにあるもの全部、あたしのもんだっ!余所の奴らにやるもんか!」
口の中は空洞ではないのかと思うほどに真っ黒で、目も見えているのかよくわからない。
少なくとも片方はぐちゃぐちゃになっている。
少女が飛び掛かって刺したからだろう。
腹部も胸も刺され、臓器が見えている。
なんたる強欲。




