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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。

連休のとなり

作者: Uki
掲載日:2026/03/31

 ゴールデンウィークは、少しだけ世界が緩む。学校がないだけで、時間の流れが違うみたいに感じる。その中で、君と会う約束をしただけで、今日はもう特別だった。


「待った?」


 駅前で、君が手を上げる。私服の君は少しだけ新鮮で、いつもより近く感じる。


「今来たとこ」


「嘘っぽい」


 笑いながら、当たり前みたいに隣に並ぶ。距離が、最初から近い。


「どこ行く?」


「決めてない」


「は?」


「歩きながら決める」


 適当すぎる。でも、その適当さに安心してしまう自分がいる。


 商店街に入ると、人の多さに少しだけ押される。自然と距離が縮まる。肩が触れる。離れようとすると、今度は君が寄ってくる。


「迷うなよ」


「迷ってない」


「顔」


 そう言って、僕の手首を軽く掴む。そのまま、人混みをすり抜ける。


 手は、離れない。


「……もういいでしょ」


「まだ多い」


 理由をつけて、握ったまま。外に出ても、少しだけそのままだった。


「……君さ」


「ん?」


「手」


「あ」


 やっと気づいたみたいに、少しだけ緩める。でも、完全には離さない。


「別にいいだろ」


「よくない」


「なんで」


 なんでって、こっちが聞きたい。


 人通りが落ち着いたところで、やっと手が離れる。少しだけ、物足りない。


「腹減った」


「さっきからそればっか」


「なんか食う?」


「さっき来たばっかだよ」


「じゃあ軽く」


 軽くってなんだろうと思いながら、屋台みたいな店に寄る。君は迷わず買って、当たり前みたいに半分渡してくる。


「はい」


「……自分で買えるけど」


「知ってる」


 そう言いながら、僕が受け取るのを待っている。


 断れない。


 一口食べる。少し熱い。


「どう?」


「普通」


「そればっか」


 笑う。その顔を見ると、どうでもよくなる。


 近くの公園に入る。ベンチに座ると、さっきまでのざわざわが嘘みたいに静かになる。


「なんかいいな」


「なにが」


「こういうの」


 君は空を見上げる。


「何も決めずにさ、だらだらするやつ」


 その横顔が、少しだけやわらかい。


「……友達だからでしょ」


 そう言うと、君は少しだけ黙る。


「それだけ?」


 聞き返される。


 困る。


「それ以外、あるの」


「……どうだろ」


 はっきりしない答え。でも、否定もしない。


 風が吹く。少しだけ寒い。


「寒くね?」


「ちょっと」


 言った瞬間、君が少し近づく。肩が触れる。そのまま離れない。


「これでいいだろ」


「よくない」


「寒いって言ったじゃん」


 言い返せない。


 距離が近い。近すぎる。でも、逃げる理由も見つからない。


「なあ」


「なに」


「最近さ」


「うん」


「お前、俺といるとき静かじゃね?」


 心臓が跳ねる。


「普通だよ」


「違う」


 即答。


「なんか考えてるだろ」


 見られてる。


「考えてない」


「嘘」


 少しだけ顔を覗き込まれる。


 近い。


 目が合う。


 逸らせない。


「……なに」


「別に」


 そう言いながら、少しだけ視線を外す。


 君も、少しだけ落ち着かない顔。


 沈黙が落ちる。でも、嫌じゃない。


 そのまま、少しだけ時間が流れる。


「なあ」


「なに」


「明日もさ」


「うん」


「会う?」


 また、当たり前みたいに言う。


 予定なんて聞かない。


「……いいよ」


「じゃあ決まり」


 嬉しそうに笑う。


 その顔が、ずるい。


「あとさ」


「なに」


「GW終わっても、たまにこういうのやろ」


 少しだけ驚く。


「学校あるけど」


「放課後でいい」


 即答。


「……なんで」


 聞いてしまう。


 君は少しだけ考えてから言う。


「落ち着くから」


 またそれ。


 でも今度は、少しだけ違う気がする。


 バス停が見えてくる。


 この時間が終わる。


 少しだけ、惜しい。


 すると、君が僕の袖を軽く掴む。


「なに」


「なんとなく」


 離さない。


 さっきの手みたいに。


 言い訳みたいに。


 でも、ちゃんと掴んでる。


「……離して」


「バス来るまで」


 またそれ。


 でも、もう強く言えない。


 バスが来る。君が手を離す。


「じゃ、また明日」


「うん」


 ドアが閉まる。


 窓越しに、君が手を振る。


 僕も、少しだけ振り返す。


 席に座って、思う。


 特別なことは、何もしてない。


 ただ、一緒にいただけ。


 でも。


 それだけで、こんなに満たされる。


 ゴールデンウィークは、まだ続く。


 君との時間も、まだ続く。


 この距離が、少しずつ変わっていくことに、気づいているのはきっと僕だけじゃない。


 でも。


 まだ言わなくていい。


 今はまだ、このままでいい。


 君のとなりで、少し近すぎる距離のまま。

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