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月明かりに照らされた真実

「凄かったね〜!」


興奮冷めやらぬ平原チーフが、パンフレットを抱えたまま笑顔で振り返る。


「この後、楽屋に行くんだけど……行くでしょう?」


私は首を横に振った。


「無理です……。泣きすぎて、顔がぐちゃぐちゃで……」


「えっ!? 全然大丈夫だよ! まだ好きなんでしょう? ちゃんと会ってきなよ」


心配そうに肩を叩いてくれる平原チーフに、私は無理に笑顔を作って答えた。


「じゃあ……ちょっとメイク直してきますね」


嘘をついて席を立つ。


アンケートを書いている人、スタンド花を写真に撮る人、グッズ列に並ぶ人。

その雑踏を抜けて外へ出ると、春の夜風が頬を撫でた。


少し歩いた先に、白梅が並ぶ小さな公園があった。

私はそのベンチに腰掛け、空を見上げる。


「あ……今日、満月なんだ」


暗い夜空にぽっかり浮かぶ丸い月は、やけに綺麗だった。


ライブの光景が自然と胸に蘇る。

大ホールいっぱいに広がる歓声。

色とりどりのライトを浴びて歌う森野さんの姿。


「……本当に、手の届かない人になっちゃったな」


ぽつりと呟いたそのとき。


「お前……本当に言うこと聞かないよな」


耳に飛び込んできた声に、心臓が跳ね上がる。


はっと振り向くと、月明かりに照らされた森野さんが、そこに立っていた。


「ど……どうして?」


驚いて立ち上がった私に、森野さんは苦笑しながら近付いてくる。


「お前が素直に“楽屋来い”なんて言われて、来るわけねぇだろ」


ひどい言われようだと思って口を開きかけた瞬間、

森野さんに、ぐっと抱き締められた。


一瞬、何が起きたのか理解できなかった。


「……柊。今から話すこと、黙って聞いてくれ」


耳元に落ちてくる声は、いつになく真剣で。

私はただ、小さく頷くしかできなかった。


胸に押し当てられている森野さんの鼓動が、

ドクドクと早く鳴っているのが伝わってきて、

私の心臓まで一緒に跳ねてしまう。


やがて森野さんは、私が座っていたベンチに腰掛け、

夜空を見上げながらぽつりと語り出す。


「……俺は清香を失ってから、かなり荒んだ生活をしてた。

 女も……たくさん泣かせてきた」


その言葉が、胸に鋭く突き刺さる。


知りたくなかった。

分かっていたはずでも、実際に本人の口から聞くと苦しかった。


隣で話す森野さんは、ライトの下でなくても綺麗で、

誰もが惹かれるような声をしている。


──だから、そういう過去があってもおかしくない。


そう理解しながらも、胸の奥がズキンと痛んだ

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